中国は常に実利の民族だった。周の「王道政治」も清の「洋務運動」も、表面上は大義名分を語っていたが、実際には国家の生存と体制維持という実利を優先にしていた。鄧小平の「黒猫白猫論」も同様に単純な比喩ではなかった。「黒い猫でも白い猫でもネズミを捕れば良いネズミだ」というこの哲学は、中国が改革開放を通じて世界の舞台に進出する原動力となり、現在でも中国の政策立案者の脳裏に刻まれたDNAとして機能している。
このような実用主義は、現代中国の気候危機への対応方式にも如実に現れている。気候危機への対応という名目を受け入れつつ、政策の焦点は徹底的に実利に合わせている。2024年の国際エネルギー機関(IEA)の報告書によると、中国はわずか1年で、277ギガワットの太陽光発電の容量を追加して1100万台の電気自動車(EV)を販売し、世界市場を掌握した。これと同時に、新たに100ギガワット規模の石炭発電所の建設も推進した。矛盾しているようにみえるが、中国のこのような動きは、脱炭素が目的ではなく、新エネルギー産業の覇権確保が目標であることを明確に示している。結果は驚くべきものだ。中国は、世界の太陽光市場の80%、EVのバッテリー市場の70%以上を占め、クリーンエネルギー産業を中国の国内総生産(GDP)の10%に迫る経済の動力として位置づけた。
中国の本音は人工知能(AI)時代の主導権だ。AIのデータセンターと半導体生産は莫大な電力を要求する。エネルギーの主導権がまもなく第4次産業革命の勝負所となることを看破した中国は、気候危機への対応という名目のもと、未来の産業インフラを積み上げ、エネルギーの主導権を掌握しつつある。
欧州は別の道を歩んでいる。ドイツは2023年に脱原発を完了したが、再生可能エネルギーの不安定さによって電力供給が不安定になると、最近では欧州全体が原子力を積極的に活用する方向に旋回している。フランスは新規原発の建設計画を発表し、ベルギーも原発閉鎖の予定を延期した。脱炭素の道筋を先導しながらも、実用的かつ柔軟にアプローチしている。一方、米国のトランプ政権は、石油とガスの掘削を奨励する「ドリル、ベイビー、ドリル」(掘って、掘って、掘りまくれ)を叫び、化石燃料の生産拡大を推進している。
一方で韓国はもどかしい様相だ。2050年のカーボンニュートラルを法制化したが、一貫した政策は行われていない。脱原発と原発回帰をめぐる論争は10年にわたり繰り返されており、太陽光産業は不正捜査に足を取られ、成長の動力を失った。その結果はみじめなものだ。製造業中心の韓国においてエネルギーは国力の基盤だが、企業は脱炭素電源を求めて国外に工場を移し、重要人材は中国と米国に流出している。鉄鋼・化学・半導体で支えられている韓国がエネルギーシフトで後れをとれば、国力は揺らぐことになる。もはや漂流している時間はない。製造業の比重が大きい韓国経済にとって、急激なカーボンニュートラルの試みは国益に対する大きな負担になりうる。かといって、深刻な気候危機を目の当たりにして環境価値を放棄するわけにはいかない。実用的かつバランスの取れたアプローチが必要だ。
気候危機への対応においては、理念の純粋さを守るより、一つずつ現実的な成果を出していき、問題を解決していくことが重要だ。次期政権は、原発と再生可能エネルギーを組み合わせた統合エネルギーミックス政策を確立し、世界の原発市場において、韓国の技術優位を積極的に活用しなければならない。世界最高水準であるバッテリー技術も、国家が保護して育成すべきであり、送配電網の拡充や小型モジュール原子炉(SMR)、核融合などの次世代エネルギー技術への投資も伴わなければならない。何より、エネルギー政策がこれ以上政争の道具になってはならない。
世界の舞台における各国の気候対応は、名目と実利の戦場になっている。名目も実利も逃したまま漂流している大韓民国。いまこそ、現実と理想を調和させる韓国型の気候戦略を見出さなければならない。
キム・ベクミン|釜山経済大学環境大気科学科教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )