中国のケイ海明駐韓大使の攻撃的な発言を機に韓中関係が急速に冷え込んだ中、他国に駐在する中国大使らの似たような発言が注目されている。中国外交官たちは特に、台湾と関連した問題が発生する際、相手国を激しく刺激する発言を行ってきた。
4月中旬に開かれた「中比関係のためのフォーラム」で、中国の黄渓連駐フィリピン大使は「台湾で仕事をする15万人のフィリピン労働者を考えれば、台湾独立を明確に反対した方が良いだろう」と述べた。黄大使の発言は台湾問題に対するフィリピン政府の態度を批判する中で出たもの。この日黄大使は、フィリピンが2月に米国に軍事基地4カ所の使用権をさらに与えたことに触れ、「その発表が中国人の間で広範囲で深刻な懸念を呼び起こした」とし、「台湾問題は全面的に中国の内政」だと主張した。
台湾に居住するフィリピン労働者を人質に取るような黄大使の発言は、フィリピンで強い反発を呼び起こした。フィリピンのフェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領は、台湾在住のフィリピン労働者について対策を講じるよう指示し、台湾外交部も「中国大使が台湾在住のフィリピン労働者たちの安全を口実にフィリピン政府を脅し、地域の平和と安定を損ねる不適切な発言をした」と批判した。
呉江浩駐日大使も4月末、東京の日本記者クラブが開いた記者会見で、「日本の一部から、台湾有事の際には日本が関与すべきだという声もあがっている」という趣旨の質問に対し、「中国の純内政問題を日本の安全保障と結び付けること」だとし、「日本は中国を分裂させる戦車に縛られていると、日本の民衆が火の中に引きずり込まれることになる」と答え、物議を醸した。台湾問題と関連した日本政府の態度に対して、中国外交官が「火の中」という言葉まで使って激しく批判したのだ。
日本は台湾有事の際、中国と領有権紛争を繰り広げている尖閣諸島(中国名・釣魚島)などが攻撃を受ける恐れがあると懸念し、米国と共同対応策を協議している。安倍晋三元首相は2021年、「台湾有事は日本有事」と述べた。
これに対し、日本の林芳正外相は先月10日、衆議院で「駐日(中国)大使の発言として非常に不適切だ。外交ルートを通じて中国に厳重に抗議した」と述べた。
8日、共に民主党のイ・ジェミョン代表と会った席で、ケイ海明大使が約15分間にわたり発言したのも、台湾問題が発端になったものとみられる。同日、ケイ大使の発言の中で「米国が勝利し中国が敗北するということに賭けているようだが、それは誤った判断」だとした部分が大きな反発を買ったが、ケイ大使が真っ先に持ち出したテーマは台湾問題だった。
ケイ大使は「中国が韓国の核心関心事項を尊重すると同時に、韓国にも中国の核心関心事項を尊重してほしい」とし、「台湾問題は中国の核心利益中の核心であり、韓中関係の基礎でもある」と述べた。また、「中韓国交正常化の際、韓国がこれに対して中国に厳粛に約束した。韓国側が約束をきちんと守り、台湾問題などで中国の重大な懸念を確実に尊重することを望んでいる」と語った。
ケイ大使の発言は、直接取り上げたわけではないが、4月末の訪米を控えて行われた尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領とロイター通信とのインタビューでの発言に向けられたものとみられる。当時、尹大統領は「力による台湾海峡の現状変更に反対する」とし、「台湾問題はグローバルな問題」だと発言して中国側の激しい反発を買った。尹大統領は台湾問題などに言及する際、外交レトリックのように使われる「一つの中国原則を尊重する」という表現を使わずに台湾問題について語り、より大きな反発を買った。
これに対し、中国外務省は尹大統領に対して「(台湾問題について)口を挟むのは容認できない」と激しく批判しており、韓中外交部がそれぞれ相手国の大使を呼び出して抗議するなど、両国関係が急激に冷え込んだ。