尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が海外メディアとのインタビューで、ロシアと戦争中のウクライナに軍事支援を行う可能性を示唆した。これまで韓国政府はウクライナに殺傷力のない軍需物資の支援と人道支援は行うが、殺傷力のある兵器の供与はしないという立場を何度も表明してきたことから、尹大統領の今回の発言をめぐり議論が予想される。
尹大統領は19日に報道されたロイター通信とのインタビューで、1950年の朝鮮戦争当時、韓国が国際社会の支援を受けたことに触れ、「民間人への大規模攻撃や虐殺、重大な戦争法違反など、国際社会が容認できない事態が発生した場合、人道・資金援助だけに固執するのは難しいかもしれない」と述べた。同インタビューは26日に米ワシントンで国賓訪問の形で開かれる韓米首脳会談に先立って行われた。
尹大統領の発言は韓国政府の従来の立場とは異なるものといえる。政府はこれまでウクライナに殺傷力のある兵器の供与はないとの立場を示してきた。米国など西側諸国は、韓国政府に様々なルートを通じてウクライナに兵器を供与するよう圧力をかけてきた。ロイター通信も「韓国がウクライナへの兵器供与に前向きな姿勢を示唆したのはこれが初めて」だと報じた。尹大統領はインタビューで「国際法と国内法により違法に侵略された国の防衛・再建への支援に制約はないだろう」としながらも「ただし、戦争当事国との関係、戦況などを考慮して最も適切な措置を講じる」と述べた。
尹大統領は来週の韓米首脳会談で、北朝鮮の武力示威に対応するための「具体的な成果」を模索すると述べた。また、監視、偵察、情報分析などのための「超高性能で強力な兵器」を開発する意志を示し、「韓国と北朝鮮の間で核戦争が起きれば、単に双方の問題ではなく北東アジア全体が灰じんに帰す恐れがあり、阻止しなければならない」とした。
尹大統領は日本などが含まれた拡大抑止のための多国間安保体制、いわゆる「アジア版NATO(北大西洋条約機構)構想」に関する質問に対し、「情報共有、共同対応計画、共同実行計画などのための措置に焦点を当てている」と答えた。さらに「日本が参加するかどうかに大きな問題はないと思うが、韓米間に多くの進展があったため、まずこのシステムを作るのがより効率的だろう」と付け加えた。
尹大統領は南北関係について、「国内の政治的利害から有権者に誇示する目的で金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記とサプライズ的な首脳会談を行うことには反対だ」としながらも、「平和的な対話の用意はある」と語った。また、中国・台湾の両岸対立と国際社会の緊張については「武力で台湾海峡の現状を変更することには絶対反対する」という立場を示した。