韓国が曲射砲などに使われる155ミリ砲弾を貸与の形で米国に提供することで、韓米が合意したという。米国は、ロシアと戦争中のウクライナへの支援により、自国内の砲弾在庫分が足りなくなったことを受け、昨年から韓国に砲弾の支援を要請してきた。韓国が販売(輸出)ではなく「貸与」の形で砲弾を米国に提供するのは、ウクライナに殺傷力のある兵器を迂回支援するという論議を意識した措置とみられる。
12日、防衛産業界などの説明などを総合すると、韓米は最近、韓国の155ミリ砲弾を米国に貸与する契約に合意したという。韓国が貸与する砲弾は、国内メーカーの生産量や韓国軍が保有している従来の砲弾の中から決められる。米国が1970年代の朝鮮半島での全面戦争に備えた戦争予備物資(WRSA-K)として国内に持ち込んだが、管理費用が負担となり、2008年に韓国に売った155ミリ砲弾などが候補に挙げられている。貸与の規模は33万~50万発と推定される。貸与期間は決まっておらず、米国の砲弾在庫状況によって決まる見通しだ。
砲弾の提供が貸与の形になったのは、ウクライナと米国の兵器支援要請を拒否しないながらも、「殺傷能力のある武器の支援はしない」という韓国政府の原則を維持するための折衷案とみられる。昨年11月、韓国が米国に「最終使用者(エンドユーザー)が米国であること」を条件に155ミリ砲弾10万発を輸出した時、結局韓国の砲弾がウクライナに送られるとみられていた。韓国が輸出の際、「エンドユーザーは米国」という条件を付けても、ひとまず米国が購入して米国の所有になった砲弾を具体的にどのように使用するかについて、韓国が統制または確認をすることは不可能であるからだ。今回のように韓国が貸与の形で砲弾を米国に提供すれば、砲弾の所有権は依然として韓国にあるため、もし韓国の砲弾が貸与条件と違ってウクライナで使用された場合、米国に貸した砲弾の回収を要求する根拠となる。
しかし、この場合でも米国が韓国から借りた砲弾でひとまず不足している自国内の砲弾在庫を確保し、余った砲弾をウクライナに送る「押し出しの形の支援」が行われる可能性はある。ウクライナへの迂回支援をめぐる議論の火種は残っているわけだ。
韓国国家安保室関係者らに対する盗聴・通信傍受の情況が含まれている米中央情報局(CIA)の機密文書には、韓米首脳会談を控え、キム・ソンハン前国家安保室長とイ・ムンヒ前外交秘書官が韓国製の155ミリ砲弾33万発を、ポーランドを通じてウクライナに迂回支援する案などを論議した内容が含まれている。盗聴疑惑が浮上したことで、26日(現地時間)の韓米首脳会談でウクライナに武器を迂回支援する案について協議が行われるかに関心が集まっている。
米国の盗聴・傍受疑惑が持ち上がった後も韓国国防部は「ウクライナに殺傷能力のある武器を支援せず、米国への砲弾輸出の際、米国をエンドユーザーとするという条件にも変わりがない」という立場を維持した。
同日、国防部当局者らは米国に貸与する形で砲弾を提供するかどうかについて、「確認できない」と述べた。パク・チン外交部長官も同日、国会で記者団の関連質問に対し「私がいま答えられる内容はない」とし、「政府はウクライナに対して殺傷能力のある武器は支援しない立場を示してきた」と述べた。韓国は昨年、ウクライナに防毒マスクやテント、毛布、戦闘食糧、医薬品など非破壊軍需物資を支援し、今年は電力網の復旧、医療装備とインフラ構築の再建に焦点を置いた1億3千万ドル規模の人道支援方針を明らかにした。