本文に移動

[ニュース分析]日本に「お土産」渡し課題背負わされた尹大統領

登録:2023-03-20 06:36 修正:2023-03-27 07:28
1泊2日の訪日、激しい逆風にさらされるわけは
1泊2日の日程で日本を訪問した尹錫悦大統領と岸田文本首相が16日午後、東京の首相官邸で開かれた韓日首脳会談全体会合に先立ち、記念撮影をしながら握手を交わしている/聯合ニュース

 尹錫悦(ユン・ソクヨル) 大統領と岸田文雄首相の16日の東京首脳会談以後、関係改善の追い風どころか、独島(トクト)や「慰安婦」合意などの長年の懸案が浮上し、韓国社会の反発世論が激化してむしろ逆風が吹き荒れている。日本に現物のお土産を目一杯渡したのに、返ってきたのは手形と請求書だけの「一方的な外交」という批判の声が高まっている。

 大統領室のイ・ドウン報道官は19日の記者会見で、「今回の首脳会談は韓日関係を未来志向的に転換する重要な出発点になったと韓国、日本、国際社会でも評価されている」と述べた。大統領室は尹大統領の帰国翌日の18日にも「訪日結果の説明資料」を出し、両国関係の未来志向点を確認▽経済安保と未来先端産業など戦略的協力地平の拡大▽輸出規制措置の撤回▽シャトル外交の再開などを強調した。同日、パク・チン外交部長官とキム・テヒョ国家安保室第1次長はテレビに出演し、尹大統領の訪日の「成果」を浮き彫りにしようと努めた。

 しかし、今回の首脳会談を契機に韓日両国政府が発表した内容とマスコミ報道を比較してみると、外交交渉の結果とはいえないほど著しく天秤が傾く。

尹錫悦大統領と夫人のキム・ゴンヒ女史が16日午後、すき焼きで有名な東京銀座の「吉澤」で岸田首相夫妻と夕食を共にしている/ 聯合ニュース

 まず、尹大統領は今回の会談の最大懸案である強制動員問題と関連して「第三者弁済案」と「求償権の行使を想定していない」という発表で、被害者の対日賠償要求が適法だと認めた2018年の韓国最高裁(大法院)の判決を形骸化した。

 これに対する岸田首相の反応は、会談後、謝罪と賠償を直接言及しない共同記者会見の発言として示された。岸田首相は「旧朝鮮半島出身労働者問題」という表現で強制動員の強制性を真っ向から否定した。しかも「歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいることを確認する」という岸田首相の発言は、明確な謝罪とはいえない。「歴代内閣の立場」には、「痛切な反省と心からのおわび」を表明した1998年の「金大中-小渕共同宣言(日韓パートナーシップ宣言)」だけでなく、「私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」という「安倍談話」(2015年8月14日)も含まれるからだ。日本側にとっては「謝罪なし」、韓国側にとっては「間接的な謝罪」ととれる措置だ。

 日本政府は2019年7月以後貫いてきた半導体の主要材料3品目(フッ化水素、フッ化ポリイミド、レジスト)の対韓国輸出規制を解除し、韓国政府は世界貿易機関(WTO)への提訴を撤回した。しかし、日本は輸出管理において優遇措置を取る「グループA(旧ホワイト国)」は直ちに復元せず、後日協議すると発表した。しかも、「(輸出規制3大品目の)国内供給が安定的に行われている。材料・部品・装備100大品目の対日輸入依存度は大幅に減少した」という産業通商資源部の発表からすると、輸出規制で販路が閉ざされた日本企業と国産化に成功した韓国企業のうち、どちらが真の受益者なのかも明確ではない。

韓日首脳会談の主な内容//ハンギョレ新聞社

 尹大統領は今回の会談で「韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の完全な正常化」を宣言し、国防部と外交部は後続手続きを進めている。日本側が要求し続けてきた事案だ。

 これと共に、韓日財界を代表する韓国の全経連(全国経済人連合会)と日本の経団連(日本経済団体連合会)は、それぞれ1億円を拠出し計2億円規模の「韓日・日韓未来パートナーシップ基金」を創設すると16日に発表した。謝罪と賠償のない「第三者弁済案」に対する韓国市民社会の反発を抑えるため、「未来」を名分に掲げた急ごしらえの基金だが、具体的な事業計画と基金に参加する日本企業も決まっていない典型的な見切り発車だ。

 日本メディアが報じた会談の内容は、両国関係の新たな火種を予告している。会談直後、共同通信やNHKなどの日本メディアは、岸田首相が尹大統領との会談で「韓日慰安婦合意の着実な履行」を要請し、「竹島(独島の日本名)をめぐる問題に関する日本の立場」を伝えたと報じた。このような一連の報道は16日の会談直後、日本政府高官が匿名を条件に、岸田首相が尹大統領に、「竹島」・慰安婦合意・レーダー照射問題・(福島の)水産物の輸出入規制問題について「我々の立場から取り上げた」とメディアに説明したことによるものだ。事実上、日本政府の公式発表を根拠にした報道だ。

 これに対する韓国政府の反応は曖昧だ。日本メディアの報道が相次ぐと、パク・チン外交部長官は18日、「韓国放送(KBS)」の報道番組に出演し、独島と慰安婦の2つの問題は「議題として議論されたことはない」と述べた。キム・テヒョ国家安保室第1次長は同日、「YTN」に出演し、「会談で交わされた首脳の対話はすべて公開することはできない」と言葉を濁した。結局「議論されていない」という韓国政府の説明は、「岸田首相が独島などと関連して日本政府の立場を明らかにしたが、尹大統領はそれと関連した韓国政府の公式見解を再確認する形で対応しなかった」という意味とみられる。韓日関係に長く関与した元高官は「岸田首相が尹大統領との会談で『竹島は日本の領土』と言ったという日本メディアの報道にきちんと反論できない尹錫悦政権の対応に、惨憺たる気持ちだ」と語った。

イ・ジェフン先任記者、キム・ミナ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1084232.html韓国語原文入力:2023-03-2002:13
訳H.J

関連記事