統一部が日帝強占期(日本による植民地時代)の強制動員被害者問題と関連し、日本企業の損害賠償責任を認めた最高裁(大法院)判決を激しく非難した人物を長官諮問機関の「統一未来企画委員会」の委員長に委嘱し、波紋を呼ぶものとみられる。
統一部は先月28日、誠信女子大学のキム・ヨンホ教授(政治外交学)を統一部長官諮問機関の「統一未来企画委員会」委員長に委嘱したと発表した。統一未来企画委員会は統一部が1月27日の大統領業務報告の際、「新統一未来構想」(仮想)に向け新たに立ち上げる方針を示した官民協業機関だ。
ところが、委員長に委嘱されたキム・ヨンホ教授は、2019年7月17日に行われた『反日種族主義 日韓危機の根源』のブックトークイベントで、強制動員被害者問題と関連し、日本企業の損害賠償責任を認めた2018年10月の最高裁の最終確定判決を全面的に否定し蔑む発言をして物議を醸した人物だ。
『反日種族主義』は元ソウル大学教授のイ・ヨンフン李承晩学堂校長などが書いた本で、日帝強占期の「日本軍慰安婦」被害者問題の強制性を否定し、歴史学界と韓国社会に大きな波紋を広げた。
キム・ヨンホ教授は『反日種族主義』を「輝く知性の研究熱が目を引く本」だとし、「深い感動を覚えられるだろう」と賞賛した。キム教授は当時、トークイベントなどで「日帝時期の強制徴用と関連して韓国最高裁が下した判決文を見ると、反日種族主義的思考にとらわれていることが分かる」とし、「世界10位圏の経済大国を築き上げた大韓民国の裁判官が書いたとは思えない判決文だ。最高裁が3権分立の意味をまともに理解していない」と主張した。さらに『反日種族主義』を「金日成(キム・イルソン)の全体主義と主体思想の思想的基盤である種族的民族主義」と見なし、「種族的民族主義という北朝鮮の転覆的論理が大韓民国に絶えず入り込んでいる」と主張した。日帝下の強制動員被害者問題と関連した日本企業の賠償責任を問う最高裁判決を「反大韓民国で北朝鮮寄り」の判決と罵倒したのだ。
統一部当局者は「明日は三一節(独立運動記念日)なのに、このような人物が統一未来政策の開発と国内外の共感を広げる中心的役割を果たす統一未来企画委員会の委員長にふさわしいと思うか」という記者団の質問に「専門性と経験をもとに人選した」と答えた。さらに「(キム教授は)国際政治と南北関係分野の学識と経験を備えている」と重ねて強調した。キム教授は李明博(イ・ミョンバク)政権時代、大統領府統一秘書官を務めた。
統一部は、統一未来企画委員会が3月中旬、クォン・ヨンセ統一部長官の出席する第1回会議を開く予定だと発表した。統一未来企画委員会はキム・ヨンホ委員長を含め、政治・軍事(キム・チョンシク分課長)▽経済(キム・ビョンヨン分課長)▽社会文化(ヒョン・イネ分課長)▽人道・人権(イ・ジョンフン分課長)▽国際協力(キム・ジェチョン分課長)の5分科34人の委員で構成されている。盧泰愚(ノ・テウ)元大統領の息子、ノ・ジェホン東アジア文化センター院長が社会文化分科委員に委嘱された。