ドナルド・トランプは再選に失敗したが、彼を米大統領に当選させた土台はあまり変わっていない。ブラジルとインドでは極右政権がそのまま維持されている。これらは世界で最も人口の多い5カ国にあげられる国々だ。欧州連合(EU)ではポーランドとハンガリーで右翼政党が多数を占めており、ほかの国でも極右は政界でかなりの地位を固めた状態だ。
25年間にわたり極右を研究してきた政治学者のカス・ミュデは『嫌悪と差別はいかにして政治になるのか: 10のキーワードで読む21世紀極右の現場(原題:The Far Right Today)』で、こうした現象を極右政治の「第4の波」と規定している。彼は「第3の波は1980年代から2000年代までの時期で(…)右翼ポピュリズム政党が中央政治舞台に姿を現し始めた」とし、21世紀に入って「極右政党が欧州だけでなく全世界的に主流政治勢力になり、次第に普遍化している」と語る。「マスコミと政治を中心に反ユダヤ主義や歴史修正主義、人種差別主義など極度の嫌悪感情が公に広がるにつれ、極右志向の政党が出現し始めた」のだ。韓国も例外ではないはずだ。太極旗部隊と『反日種族主義』、社会的マイノリティに対する嫌悪と差別などを見ればわかる。
同書は極右政治現象に対する大衆的な概論書だ。21世紀の極右の歴史と理念、組織と人物、活動をまとめたうえで、このような現象がなぜ発生したのか、原因や背景に対する考察をもとに、どのように対応すべきかを記している。後半では極右で性差別がどれほど強力に作動するかが示され、「第4の波」の12の命題の紹介で締めくくられている。
この中で注目されるのは原因の分析だ。極右政治の勃興は、既存の政治勢力に対する抗議の意味なのか、実際に極右勢力を支持することから始まったのか、経済的不安が極右支持の原因なのか、文化的反発によるものなのか、また世界的現象なのか、それとも地域的現象なのか、卓越した指導者が現れたためなのか、組職の堅固さが影響を及ぼしたのかなど、極右政治をめぐる争点をくまなく検討し、特にマスコミが極右の跋扈にどれほど大きく貢献したのかを示している。
極右にはどう対処すべきか。著者は極右に対する対応の究極的目標として、自由民主主義の強化を強調する。極右と戦うために彼らの自由を制限すれば、やがて自由民主主義体制を崩すことを目指す極右の目標に一歩近づくというパラドックスを忘れてはならないと、著者は力説している。