尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が、与党「国民の力」の代表選挙に出馬したアン・チョルス議員について、「国政運営の妨害者であり敵」、「度を越した無礼さの極致」と述べて激高していたことが5日に分かった。3月8日の党大会を約1カ月後に控え、唯一の尹錫悦派の候補であるキム・ギヒョン候補がアン候補に押され、激しく追撃されていることを受け、自ら「キム・ギヒョン救出」に乗り出したのだ。
尹大統領は最近、参謀たちに「実体もない『尹核関』(尹大統領の核心関係者)という表現で政治的利益を得ようとする者は、これからは国政運営の妨害者であり敵であると認識されるだろう」と語った。5日に聯合ニュースが報じた。尹大統領は「大統領周辺に対する健全な批判はいくらでも受け止めるが、『尹核関』は大統領を直に攻撃し、辱めようとする表現ではないか」とも述べた。アン議員は3日に「彼ら(尹核関)は、大統領の安危は眼中になく、自分たちの次の公認(候補として選ばれること)が重要なのだ」と述べている。
尹大統領は、アン議員が1日の党員懇談会で「尹-アン連帯」に言及したことについても、「国政の最高責任者であり国軍の統帥権者である大統領を党大会に引き入れて『尹‐アン連帯』などと述べたことは極めて非常識な態度だ。度を越した無礼の極致だ」と述べたという。
大統領室の高位参謀たちはこの日、尹大統領の「激怒」に加勢した。イ・ジンボク政務首席は国会で記者団に対し、「(尹‐アン連帯は)統帥権者である大統領のリーダーシップを大きく揺さぶる話だ。大統領を選挙に引き込もうとのアン議員の意図だ」と述べた。同氏はアン議員の「尹核関」発言に対しても、「尹大統領は奸臣であるかどうかも区別できずに国政を運営しているということか」と述べた。
尹大統領の反応は、最近の世論調査でアン議員が尹錫悦派の単一候補であるキム・ギヒョン議員を上回ったことと直結しているとみられる。尹大統領は、自ら直々に考えを示すことではじめて情勢が変えられると判断したようだ。尹大統領は先月26日に党の非常対策委員と会った際に、早くも3・8党大会に出席する考えを明らかにしたことで、「尹派候補」の援護射撃に乗り出したと指摘されている。
直接攻撃を受けたアン議員は「大統領選挙の際に尹大統領と候補一本化を行って政権交代を成し遂げ、現政権5年間の国政課題110件を引き継ぎ委員会の委員長として設計した」とし「大統領室が党大会に関与すること自体が望ましくない。政策で勝負しよう」と語った。
仁川大学のイ・ジュンハン教授(政治外交学)は本紙の電話取材に対し「尹大統領は過去の党総裁よりも帝王的に(党内の)意思決定を牛耳っている。2023年になっても議会、政党、マスコミを(大統領の)下に置く帝王的大統領の姿が伺えるというのは悲しいことだ」と語った。国民の力の慶尚道圏選出のある初当選議員は、「『こんなことなら(尹大統領が自ら党代表を)指名すればいいのに、なぜ党大会で選挙をするのか』ということもささやかれている」と述べた。