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[コラム]尹大統領夫人のキム・ゴンヒ氏は治外法権なのか

登録:2023-01-28 06:55 修正:2023-01-28 08:09
尹錫悦大統領の夫人のキム・ゴンヒ女史が2022年5月28日、ペットと共にソウル龍山大統領室執務室を訪れ、尹大統領と並んで座っている=「ゴンヒ愛」のフェイスブックより//ハンギョレ新聞社

 詩人のキム・ウンギョは龍山(ヨンサン)を果敢にも「私の故郷、植民地1番地」と呼んだ。彼の詩「東京タワー」の中で龍山は、「日帝占領の頃、日の丸がなびき/地下足袋に脚絆付けた砲兵隊員が行軍していた街/ (...)ガムを噛む白人と黒人が歩き回り/トランペットの音に合わせて星条旗を掲げる」(詩「東京タワー」)場所だ。実際、龍山は1905年以来、いまだに外国軍駐屯地の運命から完全に抜け出せずにいる。日本軍朝鮮司令部が君臨していた場所を、光復(独立)後に米軍がそのまま受け継いだ。

 米軍駐留の歴史まで含めて「植民地1番地」としたのは論争を呼ぶかもしれない。国を奪った占領軍と安全保障上の共通の脅威に対抗した同盟軍を同一線上に置けるのかという疑問を抱かせる。ただし、脚絆を付けた日本軍の銃刀のためなのか、それとも同盟に捧げた自発的な代償なのかにかかわらず、龍山基地の遮断壁の前で私たちの主権が持続的に停止してきたという事実だけは変わらない。龍山の100年余りの歴史を主権の面から喝破した詩的洞察が鋭い。

 「主権の停止」は二層構造を成している。軍事主権に当たる作戦指揮統制権の移管が深層であるなら、在韓米軍の特殊地位を認めた韓米駐屯軍地位協定(SOFA)は表層だ。両者のうち、韓米の主権の非対称性を日常的に表すのはSOFAだ。西欧列強が分割して占拠した上海租界のように露骨ではないが、SOFAも在韓米軍の犯罪に関する限り一種の治外法権を認める。

 盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権以降、龍山基地の大半は平沢(ピョンテク)に移転した。 現政権発足後、大統領執務室と官邸が龍山に移ってきた。いわゆる「龍山時代」だ。龍山はいよいよ「植民地1番地」から抜け出せるのだろうか。

 私の考えは否定的だ。また別の側面で法的主権が停止する特権のラインが龍山に引かれているためだ。大統領室の移転から約8カ月で、龍山は意思疎通不在、排除、特権の象徴に成り下がっている。大統領室は、大統領夫妻の知人の子息たちと尹核関(尹錫悦大統領の核心関係者の略語)の部下たちが軋めく猟官たちの居場所に転落した。漢南洞(ハンナムドン)の官邸は、尹心(尹大統領の意向)に従う新しい与党代表を選ぶ新旧の尹核関たちとの晩餐会の場として機能している。尹心に沿わない非尹、反尹、野党代表の名は招待者名簿にない。

 最も不吉なのは、龍山が治外法権の聖域になっているという点だ。国政運営の安定性を保障するため、大統領には在任中に刑事上の不訴追特権が与えられるが、家族は違う。憲法第11条は「社会的特殊階級の制度は認められない」(第2項)、「勲章などの栄典はこれを受けた者のみに効力がある」(第3項)と規定している。現在の大統領夫人にとって、これらの条項はどのような意味があるのか。尹大統領の夫人のキム・ゴンヒ女史が、ドイツモーターズの株価操作取引で重要共犯らと連絡をとり、直接参加した情況が裁判を通じて数回にわたり明らかになった。他の誰でもない公判の検察官が明らかにした内容だ。しかし、検察捜査は始まる気配すらない。法務部のハン・ドンフン長官は野党代表に対して違法な捜査指揮に当たるとみられる発言を次々と行う一方、キム女史に対しては「長い間徹底的に捜査が行われてきた。法と原則に従って処理されるだろう」という答弁を繰り返している。共犯が起訴されてから1年以上が過ぎ、2月10日には一審判決が出る。そこまで手をこまねいておいて、一体どこが徹底した捜査なのか。詭弁を並べ立てているだけだ。

 占領軍と同盟軍の駐屯史を主権が及ぶか否かを基準に連続的に捉えられるなら、龍山時代以前と以後を一つのカテゴリーに括ることもできるだろう。治外法権、特権というカテゴリーだ。基地移転が進むにつれ、龍山も韓国の主権が及ぶ範囲内に入りつつある。しかし、外国軍隊であれ、内部の権力者であれ、依然として特定の者に韓国の刑事司法権が正常に及ばない限り、それを完全な主権回復とは呼べない。民主共和国で国家主権はすなわち国民主権であるからだ。外国軍基地の前で国家主権が停止されることと、権力者一家の犯罪疑惑に対して国民主権を行使できないのは、主権の制約という点では同じだ。国民主権が及ばない聖域を認めるのは、韓国社会を特権地帯と内部植民地に分割する行為になる。

 21世紀の民主共和国において、特権地帯は外部に対しても内部に対しても認められない。キム女史の疑惑をほかの共犯たちと同じく捜査し、法廷に立たせることができた時、我々はようやく国民主権国家に住んでいると自負できるだろう。

//ハンギョレ新聞社
ソン・ウォンジェ|論説委員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1077072.html韓国語原文入力:2023-01-27 13:40
訳H.J

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