「米国は兄弟とも核を共有しない」
最近、韓国と米国の外交安保関係者が集まった非公開の場で、懸案である韓米核共有の話が出た際、米国側の関係者が冗談半分にこう述べたという。同会に出席した関係者は、「米国と欧州は歴史と文化が密接で、特に植民母国だった英国とは特別な関係にある。しかし、欧米の核共有は象徴的な水準にとどまっている。『兄弟同然のアングロサクソン国家や欧州とも核共有をしないのに、なぜ韓国と核共有をしなければならないのか』というのが米国側関係者の本音だったと思う」と語った。
北朝鮮の核脅威が高まり、与党「国民の力」の一部議員らは北大西洋条約機構(NATO)式の核共有が韓米の拡大抑止の信頼性を強化する代案だと主張する。韓国もNATOのように米国と核兵器を共有しようということだ。欧州版の拡大抑止がNATO式の核共有だ。NATO式の核共有は米国と欧州の同盟国が拡大抑止戦略を体系的かつ制度的に協力する「核同盟」と呼ばれる。
このような主張を展開する側は、共有を共同所有の略語として捉えている。彼らはNATO式の核共有(nuclear sharing)をまるで米国とNATOが核兵器を共同で所有し使用するものと誤解している。
NATO式の核共有は、米国が戦術核兵器を欧州の同盟国の領土に配備し、欧州の同盟国が「核企画グループ」を通じて核計画に参加するとともに、核兵器を目標地点に落とす手段として欧州の同盟国が保有する空軍機を使用することをいう。
しかし、NATO同盟国には米国の戦術核に対する所有権、決定権、拒否権がない。米国はNATO同盟国と核の所有権を共有していない。欧州に配備された核兵器は、米軍の統制下で欧州の同盟国の空軍基地にある弾薬貯蔵庫に保管されている。核兵器の運営とメンテナンスは米国が担当する。欧州の同盟国は施設の提供と警備のみを担当する。
米国は核兵器使用の最終決定権を同盟国と共有した事例がない。米大統領は核兵器の使用に対する独占的・排他的かつ最終的な権限を持っている。有事の際、米大統領だけが持っている暗号を米軍が入力し、米空軍の弾薬支援大隊がNATOの空軍機に戦術核兵器を装着する。NATO空軍機は目標地点に核を投下する役割を担う。
NATOの空軍機が核兵器を運搬・投下するため、欧州の同盟国が米国と意見が合わない場合、核使用に対する拒否権があるという主張もある。しかし、欧州の同盟国の空軍機が核兵器の運搬を拒否しても、米国にはそれに代わる様々な運搬手段があるため、NATOが米国の一方的な核使用を阻止する拒否権を実際に行使するのは難しい。
NATO式の核共有は、米国とNATOが核兵器所有や使用権を共有するのではなく、核兵器使用による政治的負担と作戦の危険を共有することだ。NATO式の核共有の実体は所有と権限の共有ではなく、責任と危険の共有だ。
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は「朝鮮日報」との年頭インタビューで、北朝鮮の核・ミサイルに対応するため、「韓米は米国の核戦力を『共同企画-共同演習』の概念に基づいて運用する案について話し合っている」と述べた。尹大統領は「韓米が共有された情報をもとに、核戦力の運用に関する計画はもちろん、演習と訓練、作戦を共にするという概念に発展させていけば、それが事実上の核共有に劣らない実効的な案になるだろう」と述べた。尹大統領が「核共有」という言葉の代わりに核戦力の運用に関する共同計画、演習、訓練に言及したのは、米国が韓国の核共有の要請に応じる可能性がないためだ。
尹大統領の発言以後、NATO式の核共有のように「韓国式の核共有」というバラ色の解釈が出ているが、NATO式の核共有の現実を考えると、韓米間の核共有に劣らない実効性の確保を期待するのは難しいかもしれない。
▽引用した資料
『NATO式核共有の象徴と現実』(パク・サンヒョン、韓国国防研究院)
『NATO式核共有体制の代案の模索』(チョ・ビヨン、韓国国防研究院)