尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は11日、外交部と国防部から業務報告を受ける場で、日本政府が進めている防衛費の増額と敵基地攻撃能力の明示について「日本のことを誰がとやかく言えるだろうか」と擁護するような発言を行った。
就任後、一貫して韓米日による安保協力を強調してきた尹大統領が、3カ国協力をいっそう強めようとの意志を示したものとみられる。しかし、侵略や植民地支配などの歴史に対する反省のない日本の態度を黙認したまま、日本の軍事大国化の動きを簡単に合理化しすぎているとの批判の声があがっている。尹大統領はこの日、青瓦台の迎賓館で行われた外交部と国防部の業務報告の締めの発言で、「頭上に(北朝鮮の)ミサイルが飛び交い、核が飛んでくる可能性があるのに、それを防ぐのは容易ではない。(だから)防衛費を増額し、いわゆる反撃概念を国防計画に盛り込むことにしたのではないか」とし、上のように述べた。
日本政府は昨年末、国際秩序と安保状況の変化を理由として国家安保戦略を改定し、有事の際に北朝鮮や中国などの周辺国のミサイル基地を直に攻撃する「反撃能力」を明示した。新戦略には防衛費の大幅な増額、自衛隊の再編などの内容も含まれている。平和憲法そのものの改正ではないものの、戦後70年あまりにわたって維持されてきた専守防衛原則を形骸化させるものだとの批判が改定案の発表時から日本国内で起きている。また、朝鮮半島有事の際に米軍の艦艇が北朝鮮の攻撃を受けると仮定すると、米国が望めば日本の自衛隊が「集団的自衛権」にもとづいて北朝鮮に反撃しうるという論理にもつながることから、懸念する声が高まった。これに対して韓国外交部は「朝鮮半島の安保および韓国の国益に重大な影響を及ぼす事案は、事前に韓国との緊密な協議および韓国の同意が絶対に必要だ」との立場を明らかにしているが、両国間で協議がきちんと行われるかどうかについては疑問がついて回る。
尹大統領は就任後、韓日関係の改善を外交目標とし、将来の協力関係の構築やシャトル外交の回復などを打診している。尹大統領は就任後初となる8・15光復節の祝辞で「日本は今や、世界市民の自由を脅かす挑戦に立ち向かって共に力を合わせて進んでゆくべき隣人」だと規定しており、昨年9月の「ニューヨーク・タイムズ」のインタビューでは、韓日関係を解決するために慰安婦問題や強制徴用問題などを韓日安保協力、経済・貿易問題などの懸案と共に一つのテーブルの上に載せる「グランドバーゲン(一括妥結)方式」を提案している。
しかし、その後の関係改善のスピードは思ったほど上がっていない。昨年9月に米ニューヨークでの国連総会への出席を機に実現した2年9カ月ぶりの韓日首脳会談は、日本政府が「懇談」と規定したことで、「屈辱会談」だとの批判を浴びている。政府は日帝強占期の強制動員被害者問題の解決を急いでいる。
この日の尹大統領の発言について、北韓大学院大学のキム・ドンヨプ教授は本紙の電話取材に対し、「日本の首相が言えることであって、韓国の大統領が言えることではない」とし、「いくら韓日の歴史問題などの解決すべき様々な課題があるとしても、日本の再武装問題をこのように簡単に合理化するのは適切ではない」と述べた。