三菱重工業に強制動員された被害者が、最高裁に対し、同社の韓国国内資産の現金化を迅速に決定するよう求めた。
強制動員被害者のヤン・クムドクさん(93)と日帝強制動員市民の会、韓日歴史正義平和行動は29日、ソウル瑞草区(ソチョグ)の最高裁判所前で記者会見を行い、三菱特別現金化命令再抗告事件(主審:イ・ドンウォン最高裁判事)での最高裁の迅速な判決を要請した。ヤンさんらは「三菱は法の定めた正当な強制執行手続きすら妨害しようとして、数年にわたり時間稼ぎをしている」とし、「十分な返済能力を持っていながら故意に裁判所の命令を無視する中、さらに熟考する理由が最高裁にあるのか納得しがたい」と述べた。
日帝強占期に三菱重工の名古屋航空機製作所に強制動員されたヤンさんら5人の被害者は、2012年10月、同社を相手取って損害賠償請求訴訟を起こした。最高裁は2018年11月、三菱重工に対して被害者に1人当たり1億~1億5千万ウォンの慰謝料を支給するよう命じる判決を下したが、同社が履行を拒否していることから、被害者たちは「三菱重工の国内資産を差し押さえて売却し、賠償金を受け取れるように」することを求めて、訴訟を改めて起こさなければならなかった。すでに最高裁は、三菱重工の国内資産の差し押さえは正当だと判断している。今残っているのは、実際に債権を回収するために商標権などの差し押さえ資産を売却(特別現金化)せよという判決だけだ。
尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は7月に、最高裁に対し「強制動員事件に関しては外交的努力中」との趣旨の意見書を提出している。これに対し被害者側は、政府に時間を与えるために最高裁が判決を遅らせているのではないかと反発している。そんな中、別の強制動員被害者事件を審理していたキム・ジェヒョン最高裁判事が退任したため、主審判事が空席になるという事態も起きている。28日に後任のオ・ソクチュン最高裁判事が任命され、事務分担も終わったため、最高裁の立場としてもこれ以上判決を遅らせる理由がなくなったという指摘の声も法曹界からはあがっている。
一方、韓日両政府が検討中だとされる「併存的債務引受案」に対して、被害者側は反対の意を明らかにした。併存的債務引受とは、既存の債務者(三菱重工)の債務はそのままにしておき、第三者(韓国政府)が新たに同一の債務を負担するというもの。ヤンさんらは「加害者である日本企業はすっぽり抜け、全く関係のない韓国と日本企業が代わりに寄付金を集めて被害者に支給しようというもの」だと反発した。