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「舌禍リスク」の尹大統領、マスコミの「批判報道」口実に囲み取材中止

登録:2022-11-22 05:15 修正:2022-11-22 07:53
尹錫悦大統領が18日、龍山大統領室で出勤時の記者団の囲み取材に応じている=ユン・ウンシク先任記者//ハンギョレ新聞社

 大統領室が21日、「尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の龍山時代」の象徴として掲げてきた出勤時の略式会見(ドアステッピング=囲み取材)の無期限中止を決めたことをめぐり、説得力に欠けるという批判の声があがっている。尹大統領が「ありのままの姿を見せて批判を甘んじて受ける新しい大統領文化を作り出す過程」(就任100日の記者会見)と強調した囲み取材の名分を自ら投げ捨てた措置と指摘されている。

 尹大統領と大統領室はこれまで囲み取材を龍山(ヨンサン)への大統領室移転の成果として前面に出してきた。大統領室は6月9日、青瓦台を離れて大統領室を龍山に移転したことで現れた肯定的な変化として「出勤する大統領を国民が毎日目にし、出勤途中に国民の疑問に随時答える最初の大統領」である点を挙げた。尹大統領自身も8月17日の就任100日の記者会見で、「答弁内容や態度から議論を呼ぶこともあるが、今後も囲み取材に応じるのか」という質問に対し、「結論から言えば応じる。自由民主主義というのは、大統領職の遂行過程で国民の目にさらされ、国民から鋭い批判、様々な指摘を受けるべきだと思う」とし、「囲み取材に応じているのが原因で支持率が下がっているとして、直ちに辞めるべきという人も多いが、これは龍山に大統領室を移した最も重要な理由だ」と答えた。

 しかし、尹大統領と大統領室は就任6カ月後、「文化放送(MBC)」の「同盟をフェイクニュースで仲たがいさせようとする悪意的な行動」や「乱動に近い(取材)行為」を挙げ、囲み取材の中止を宣言した。この過程で、尹大統領は9月にニューヨークで卑語を使った当事者としてその事実関係を確認することは拒否しながら、MBCの暴言関連報道を「悪意的」だと主張した。

 このため、「不都合な質問」と「神経質な答弁」が続き、尹大統領の「メッセージリスク」を懸念する声が高まった状況で、特定のメディアの報道を口実に囲み取材を全面中止したのではないかという疑念の声が出ている。大統領室関係者は本紙に「尹大統領の支持層を中心に、得るものより失うものの方が多い出勤時の囲み取材は中止すべきという圧力が強かった」とし、「内部的にもどうすれば尹大統領にプラスに働くように(囲み取材を)こなせるのか悩んできた」と語った。尹大統領に政務的助言をしているといわれるホン・ジュンピョ大邱(テグ)市長は、自身のフェイスブックに「遅すぎた感はあるが、大変望ましい決定だ」という書き込みを残した。

 前日、囲み取材の場所に間仕切り壁の設置工事を行ったことについて「囲み取材とは関係ない」と釈明した大統領室の態度も言い訳がましいと指摘されている。20日、大統領室関係者は間仕切り壁の設置目的に関して「外国代表団との面会の際、一部記者が一方的に彼らを撮影したことがあった。囲み取材とは関係ない」と述べた。しかし、その翌日に囲み取材の中止を宣言し、自ら信頼を落とした。大統領室は同日、「尹大統領は誰よりも囲み取材に対する意志が強かった。しかし、(一部の記者が)声を荒げるなど、望ましくない出来事で本来の趣旨を生かすことが難しくなったと判断した」と述べ、囲み取材中止の責任がマスコミ側にあるという態度を示した。

 尹大統領の「甘呑苦吐(甘ければ飲こみ、苦ければ吐き出す)」の言論観が明らかになったという指摘もある。MBCに強い不快感を示した尹大統領は13日、東南アジア歴訪中に大統領専用機で親交があった「CBS」と「チャンネルA」の記者だけを別途呼んで会話を交わした。

 西江大学新聞放送学科のウォン・ヨンジン教授は「出勤時の囲み取材の中止は他のメディアに対する見せしめになるだろう」とし、「このような状況を全てMBCのせいにし、すべてのマスコミが歪曲された報道をしていると主張したいようだ」と話した。

 一方、大統領室は同日、キム・ヨンテ大統領室対外協力秘書官が18日に起きた望ましくない出来事に対する責任を取るため、自ら辞意を明らかにしたと伝えた。

キム・ミナ、ペ・ジヒョン、イ・ジェフン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1068229.html韓国語原文入: 2022-11-22 01:16
訳H.J

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