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国政目標も共感能力もない尹大統領、与党が責任を取るべき

登録:2022-11-14 03:01 修正:2022-12-27 12:23
[ハンギョレS]ソン・ハニョンの政治舞台裏 
人事・政治・危機管理の失敗…ずさんな大統領のリーダーシップ 
「大統領室移転」と「地方選挙勝利」は肯定的評価しうるが 
尹錫悦大統領を立てた保守論客と政治家の責任
尹錫悦大統領が11月10日午前、ソウル龍山の大統領室庁舎に出勤し、記者団と略式会見を行っている=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の5月10日の就任演説は次のように始まります。

 「私はこの国を自由民主主義と市場経済体制を基盤とした国民が真の主人である国へと再建し、国際社会において責任と役割を果たす国にしなければならないという時代的使命を持って今日この場に立ちました」

 そしてこのように終わります。

 「私は自由、人権、公正、連帯の価値を基盤として、国民が真の主人である国、国際社会で責任を果たし、尊敬される国を、偉大な国民のみなさまと共に必ず作ってゆきます」

 尹錫悦大統領が大韓民国の第20代大統領に就任してから6カ月が経ちました。いかがでしょうか。尹錫悦大統領が約束した「国民が真の主人である国」、「国際社会において責任を果たし尊敬される国」になる兆しは見えますか。

 私の見るところ「国民が真の主人である国」ではなく「司法試験出身のエリートたちが主人である国」だったようです。尹錫悦大統領、ハン・ドンフン法務部長官、イ・サンミン行政安全部長官、そして大統領室と行政府の要職に布陣した法曹出身の公務員たちこそまさにそれです。「国際社会において責任を果たし尊敬される国」ではなく「国際社会から嘲笑される国」になってしまったようです。尹錫悦大統領の軽口と10・29梨泰院(イテウォン)惨事のせいでです。

 尹錫悦大統領の6カ月間に何があったでしょうか。

 スタートは良かった。2つが肯定的に評価できます。

 第1に、大統領執務室の移転です。

 尹錫悦大統領は大統領室を青瓦台(旧大統領府)から龍山(ヨンサン)へと移しました。尹錫悦大統領特有の決断とこだわりでなければ貫徹は難しかったでしょう。国民世論は反対が多く、今でも批判があります。しかし、私はよくやったと思います。

 大統領府は帝王的大統領を象徴する場所でした。大統領室の移転は大韓民国において権威主義時代が終わったことを意味しえます。次の大統領が誰になろうとも大統領府には戻れないでしょう。

 第2に、6・1地方選挙の勝利です。

 国民の力は首長選挙で、17広域自治体のうち12自治体で勝利しました。ソウル市長、釜山(プサン)市長を守り、仁川(インチョン)市長、江原道知事、大田(テジョン)市長、世宗(セジョン)市長、忠清北道知事、忠清南道知事、蔚山(ウルサン)市長の地位を獲得しました。226の基礎自治体のうち146自治体の首長選挙で勝ちました。国会議員補欠選挙では、7議席のうち5議席を獲得しました。

 国民の力の選挙での勝利は尹錫悦大統領の政治的勝利です。選挙での勝利は政治がうまくいった証拠です。ですがそこまででした。尹錫悦大統領の6カ月間は過ちの方が多かったのです。

 第1に、人事の失敗です。

 尹錫悦大統領は、自分に近い検察や法曹の出身者を大統領室や行政府に大挙起用しました。それだけでは足りなかったのか、李明博(イ・ミョンバク)大統領の参謀たち、そしてキム・ゴンヒ女史の知り合いたちを抜てきしました。文在寅(ムン・ジェイン)大統領も人事は苦手でしたが、尹錫悦大統領はさらに苦手なようです。人事の失敗は国政の失敗に直結せざるを得ません。

 第2に、政治の失敗です。

 大統領は政治家です。政治家は嫌いな人とも話し合い、妥協できなければなりません。尹錫悦大統領には嫌いな人物と会って話し合うつもりはないようです。イ・ジュンソク代表を追い出しました。イ・ジェミョン代表とも会っていません。「陣営や政派を越えた超党派的協力」(5月16日の国会での施政方針演説)は嘘でした。

 第3に、危機管理の失敗です。

 尹錫悦政権は梨泰院惨事を予防できませんでした。にもかかわらず行政府のトップである大統領は怒り、警察と消防の公務員の責任を追及しています。レゴランド事態、興国生命事態を見ると、金融危機や経済危機を防ぐ実力もないようです。朝鮮半島危機の管理能力はあるでしょうか。近ごろの状況を見ると、このままでは戦争が起こるのではないかと不安になります。

 これらすべての国政の失敗の原因は、尹錫悦大統領のずさんなリーダーシップです。尹錫悦大統領のリーダーシップにはいくつかの特徴があります。

 言葉使いがぞんざいです。検事時代から染みついていた習慣です。普段からひやひやしていましたが、結局は海外歴訪中に卑語使用問題が起きました。

 過ちを認めることを知りません。卑語使用問題も最後まで謝りませんでした。10・29梨泰院惨事についても誠意があまり感じられない「申し訳ない気持ち」という表現でやり過ごしました。

 いつまでも引きずるタイプであり、狭量です。卑語問題の報道などを理由に国外歴訪で専用機に文化放送(MBC)の取材陣を乗せませんでした。

 政治家を嫌っています。特に国民の代表である国会議員と国会を軽視しているようです。キム・ウンへ広報首席の「笑わせるね」メモ事件を「総合的に理解していただければと思う」と擁護したことを見れば分かります。

 尹錫悦大統領の6か月に対するメディアの評価はどうでしょうか。以下は、最近の朝刊の尹錫悦大統領の6カ月を評価する記事または社説の見出しです。

 「国政の方向性はぼやけ、崩壊した安全…リーダーシップの複合危機」(京郷新聞)

 「公正-斬新掲げた6カ月…尹錫悦印の国政目標―成果見えず」(東亜日報)

 「突発的な悪材料に『ユンノミクス』ブランドはお先真っ暗…国民が体感できる政策に重点を置くべき」(ソウル新聞)

 「尹大統領は今からでも統合協治を」(世界日報)

 「尹錫悦政権6カ月…国政刷新が必要な時」(中央日報)

 「尹大統領の6カ月間『国民の信頼失った』」(ハンギョレ)

 「国政『否定評価』60%台…『曖昧な沈黙』に戻らぬ民意」(韓国日報)

 いかがでしょうか。尹錫悦大統領に対する各新聞の診断と処方がとてもよく表れています。

 尹錫悦大統領に背を向けた民意は世論調査の数字からも確認できます。大統領就任直後の5月13日に発表された韓国ギャラップによる世論調査では、大統領の職務遂行を「評価する」と答えた人の割合は52%でした。光州(クァンジュ)・全羅道を除くすべての地域で「評価する」が高かったのです。40代と50代は「評価しない」の割合が高かったのですが、他の年齢層では「評価する」が多かったのです。

 6か月後の11月11日に発表された調査では、「評価する」は30%でした。大邱(テグ)・慶尚北道のみが「評価する」50%、「評価しない」41%でしたが、他のすべての地域では「評価しない」の方が多かったのです。年齢層別では60代と70代以上だけが「評価する」が優勢でした。

 6カ月間の変化を地域別に見ますと、首都圏、忠清圏、釜山・蔚山・慶尚南道の民意が逆転しています。就任直後は「評価する」の方が高かったのですが、6カ月後には「評価しない」の方が多くなっています。

 年齢層別ではもう少し詳しく見てみます。18~29歳は就任直後に45%対41%で「評価する」の方が多かったのですが、6カ月で16%対71%と「評価しない」の方がはるかに高くなりました。30代も就任直後は54%対38%で「評価する」の方が高かったのですが、6カ月後には18%対76%で「評価しない」が圧倒的多数になりました(中央選挙世論調査審議委ウェブサイト参照)

 まとめますと、尹錫悦大統領の6カ月間で若年層の民意は肯定から否定へと完全に転じ、尹錫悦大統領の国政支持率の下落を主導しているのです。

 一体なぜなのでしょうか。尹錫悦大統領はなぜ就任わずか6カ月でこれほど人気のない大統領に成り下がってしまったのでしょうか。

 私は2つを指摘したいと思います。

 第1に、大統領として何をするのかという目標がありません。

 先日、京郷新聞のキム・ミナ論説室長が「尹錫悦、なぜ大統領になろうとしたのか」と題するコラムを書きました。

 「尹大統領の目標は『大統領になること』そのものであったことがあらわになりつつある。大統領になってからについては考えていなかったようだ。権限や権力には責任が伴うということにも考えが及んでいなかったようだ」

 本紙のシン・ヨンジョンのコラム「熟睡と甘い夢、そして夢のない大統領」もあります。

 「夢のない大統領も問題だ。大統領になること以外に夢がなかった人は、それを成し遂げた後にはもはや見る夢がない」

 2つのコラムは的を射ています。

 第2に、共感能力の欠如です。

 尹錫悦大統領は半地下浸水の現場で「なぜ前もってに避難しなかったのか」と尋ねました。梨泰院惨事の路地では「ここであんなにたくさん死んだって?」と尋ねました。

 エリート出身だからか、平凡な人々の苦しみや痛みがあまり感じられないようです。政治家としては致命的な欠陥です。

 それでも仕方ありません。尹錫悦大統領は国民によって選出された大韓民国の第20代大統領です。尹錫悦大統領は公正と常識によって大韓民国を立て直すだろうと考えた人々、文在寅大統領の民主党が政権を握り続けてはならないと考えた人々、イ・ジェミョン代表が大統領になってはならないと考えた人々が尹錫悦大統領を選んだのですから。

 有権者の選択は尊重しなければなりません。尹錫悦大統領の任期は残り4年6カ月です。弾劾しない限り、彼を大統領職から引きずり下ろす方法はありません。一体どうすればよいのでしょうか。この事態は誰が正すべきなのでしょうか。

 私は検察総長尹錫悦を大統領尹錫悦にしたいわゆる保守論客、そして国民の力の政治家たちが責任を取るべきだと思います。「民主党の政権再担当を何とか防がなければならない」として、政治的に全く検証されていない尹錫悦検事を大統領候補に立て、大統領にまでしてしまったわけですから。

 遅くなりましたが、今からでも償いの気持ちをもって積極的に取り組んでください。尹錫悦大統領を前から引っ張ったり後ろから押したりして、一日も早くきちんとした大韓民国の大統領にしてください。よろしくお願いします。

ソン・ハニョン|政治部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1066968.html韓国語原文入力:2022-11-3 09:11
訳D.K

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