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「まだ4年9カ月」尹大統領が生き残る道…大統領任期短縮する改憲(1)

登録:2022-08-08 07:29 修正:2022-08-18 20:57
[ハンギョレS]ソン・ハニョンの政治舞台裏 

大統領の任期短縮と改憲 

「大統領制にメスを入れる時」との意見 
「分権型+再選可能な4年任期大統領制」への改憲が望ましいとの意見多く 

任期を1年減らせば大統領選と地方選の同時実施が可能 
尹大統領は暮らしの問題に集中…支持率上昇に転じるだろう
尹錫悦大統領が先月29日午後、ソウル龍山の大統領室で開かれた駐韓大使信任状捧呈式 で、フィリップ・ゴールドバーグ駐韓米国大使の信任状を受け取るために入場している=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社
ソン・ハニョン先任記者の政治舞台裏//ハンギョレ新聞社

 先週、本コーナーの記事で改憲を取り上げました。思いのほか大きな反響がありました。今年3月9日に行われた大統領選挙で尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏に投票したという人たちからも、「大統領制にメスを入れる時が来た」という内容のショートメッセージや電子メールが多く寄せられました。尹錫悦大統領の国政支持率があまりにも低いために現れている現象かもしれません。

 ホームページで記事を読んだ人たちの反応は大きく二つに分けられました。第一に、憲法を改正するのではなく、尹錫悦大統領を引きずり下ろすべきという主張でした。第二に、それでも議院内閣制に移行してはならないという意見でした。一つずつ確かめてみましょう。

就任3カ月の大統領に退陣要求?

 第一に、尹錫悦大統領の退陣要求は非現実的で、感情的な主張です。憲法は「大統領が欠位となった時、または大統領当選者が死亡したか、判決その他の理由でその資格を喪失した時は、60日以内に後任を選挙で決める」と定めています。大統領の欠位は、辞任、憲法裁判所の弾劾決定による罷免、判決などによる被選挙権の喪失により発生します。

 尹錫悦大統領の辞任や弾劾が可能でしょうか。私は不可能だと思います。尹錫悦大統領は就任してわずか3カ月の大統領です。支持率が落ち込んだからといって、大統領を弾劾するわけにはいきません。もし国会で弾劾訴追を議決して職務を停止させたとしても、憲法裁判所で棄却されるでしょう。

 盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は2004年3月、選挙法違反など国法紊乱、側近の不正など不正腐敗、経済と国政破綻を理由に、国会によって弾劾訴追されました。ところが、2004年5月、憲法裁判所はそれを棄却しました。当時の決定文の結論部分は以下の通りです。

 「罷免決定を通じて憲法を守護し、損なわれた憲法秩序を再び回復することが要請されるほど、大統領の法違反行為が憲法守護の観点から重大な意味を持つとは言えない。また、大統領に与えた国民の信任を任期中に再び剥奪しなければならないほど、国民の信任を裏切った場合に該当するとも言えない」

 尹錫悦大統領の弾劾は現実的に不可能であるだけではなく、政治的にも望ましくありません。朴槿恵(パク・クネ)大統領の弾劾は、わずか5年前のことです。

 第二に、議員内閣制に対する反対は非常に妥当な問題提起です。反対する人たちは主に日本政治の失敗が議院内閣制に起因するという根拠を示しています。一理あると思います。

 しかし、議院内閣制は日本流の議院内閣制だけではありません。「中央日報」8月3日付には、英国、ドイツ、スイスの権力構造を紹介したチェ・インテク国際専門記者のコラムが掲載されており、面白い内容です。

「中央日報」8月3日付のコラム「勝者独占の韓国政治、革新が必要な時」//ハンギョレ新聞社

 いずれにせよ、韓国国民が議院内閣制を嫌うのは厳然たる現実です。その理由は何でしょうか。

 第一に、反政治主義のためだと思われます。主に国会と国会議員に対する拒否感です。

 第二に、経路依存性です。私たちは1948年から採択した大統領制に慣れています。自分の手で大統領を選ぶその刺激的な「味わい」を諦めるのは難しいかもしれません。

 ならば、どうすべきでしょうか。「分権型大統領制」という代案があります。大統領の権限と責任を「横に」、そして「下に」分散させることです。「横」は国会です。「下」は地方政府です。国会と地方政府は選出された権力です。大統領の権限と責任を分かち合う十分な資格があります。

 どうせ一度に大きな変化は難しいでしょう。国民にも適応する時間が必要です。権力構造には正解がありません。国ごとにそれぞれの権力構造があります。歴史が異なり、文化が異なるためです。私たちも私たちに適した権力構造を作り上げていく必要があります。試行錯誤があっても、そうしなければなりません。

 改憲するなら何を直すべきでしょうか。もう少し具体的に入ってみます。多くの国会、学界、市民団体の改憲に関する討論会や会議に参加した経験をもとに、必ず必要であり、また現実的に可能だと思うことだけ取り上げます。

 第一に、首相を国会で選ぶことです。現行の憲法は首相に国務委員の提請権と解任建議権を与えています。首相を国会で選出すれば、大統領と首相、大統領と国会が国政に関する権限と責任を分け合うことになります。選出制が行き過ぎなら、推薦制でも構いません。大統領と国会が合意した人物が首相を務めるようにするのです。

 第二に、監査院を国会に移管することです。監査院を大統領所属にした現行の憲法は明らかに間違っています。監査院はこれまで政権が振り回す「拳」の役割を担ってきました。最近、チェ・ジェヘ監査院長が国会法制司法委員会で、監査院を「大統領の国政運営を支援する機関」だと答え、波紋を呼びました。誤った認識です。憲法から正さなければなりません。

 第三に、大統領の任期を調整することです。5年の任期を1期だけ努めるようにした現行の大統領制には問題が多すぎます。4年ごとに行われる国会議員の総選挙、全国同時地方選挙と不規則に交錯し、民意の流れを歪曲しています。2017年の朴槿恵大統領の弾劾でさらにねじれてしまいました。2022年3月9日に大統領選挙が行われ、6月1日に地方選挙が行われました。これを正常だといえるでしょうか。

 米国のように再選可能な4年任期の大統領制度が適切だと思います。これは私たちにも馴染みのある制度です。李承晩(イ・スンマン)元大統領や朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領が約束を破ったため、おかしなことになっただけです。4年任期で、再選を認めれば、大統領に当選した人が4年間選挙運動に明け暮れる可能性があるという懸念もあります。確かに、そのような副作用があるかもしれません。しかし、5年任期の1期かぎりの大統領制度の弊害よりはましだと思います。

(2に続く)

ソン・ハニョン政治部先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1053736.html韓国語原文入力:2022-08-0721:05
訳H.J

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