韓国は、温室効果ガス削減目標を引き上げなければ、10年後には二酸化炭素だけでなく、温室効果ガス全体の1人当たりの排出量も10大経済大国で最も多い国になるとみられます。
社団法人気候変動行動研究所は9日、韓国の1人当たりの二酸化炭素排出量は2030年になれば去年の国内総生産(GDP)上位10カ国の中で最大になる、との分析結果を発表しました。この分析は、それらの国が最近までに打ち出している2030年までの温室効果ガス削減目標をすべて履行するという仮定の下に行われました。
二酸化炭素がそうなら、温室効果ガス全体で計算してみたらどうなるか知りたくなります。国連気候変動枠組み条約とそれに続く合意の言う公式の温室効果ガスは、二酸化炭素、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)、パーフルオロカーボン類(PFCs)、六フッ化硫黄(SF6)、三フッ化窒素(NF3)の7種類です。前の6つは京都議定書で最初から規定されていたもので、三フッ化窒素は2012年にカタールのドーハで開催された第18回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP18)の決定によって追加されたものです。
オランダ環境評価庁(PBL)が2019年の排出量データで分析したものを見ると、世界中に排出された温室効果ガスに二酸化炭素が占める割合は72.5%です。世界資源研究所(WRI)が2016年の排出量で分析した結果は74.4%です。二酸化炭素が占める割合は圧倒的です。しかし、残りの30%近くの温室効果ガスの影響を無視することはできません。
気候変動行動研究所が推定した10大主要国の2030年の1人当たりの二酸化炭素排出量は、多い方から順に韓国が9.17トン、米国が8.59トン、カナダが8.12トン、中国が7.21トン、日本が5.88トン、イタリアが4.45トン、ドイツが4.43トンです。韓国が温室効果ガスの1人当たりの排出量でも1位を維持するかどうかを確認するには、2~4位の米国、カナダ、中国くらいまでを見れば十分だと思います。日本以降の国々は二酸化炭素の排出量が韓国の半分ほどに過ぎないため、残りの温室効果ガスの影響を考慮しても韓国を追い越す可能性はないからです。
韓国から見ていきましょう。韓国は去年に国連に提出した「国が決定する貢献(NDC:温室効果ガス削減目標)」で、2030年までに温室効果ガスの排出量を、2017年の排出量である7億910万トンを100として24.4%削減すると発表しました。2030年の温室効果ガス排出量が5億3608万トンを超えないようにするという約束です。この2030年の排出量を国連経済社会局(DESA)の2030年の韓国の人口予測値5115万2000人で割ると、1人当たりの温室効果ガス排出量は10.48トンと計算できます。
米国はジョー・バイデン大統領が先月の気候サミットで、2005年の排出量を100として2030年までに温室効果ガスを50~52%削減すると発表しました。WRIが集計した2005年の米国の温室効果ガス排出量は68億182万トンです。米国の目標削減率の中間の値である51%を適用すれば、2030年に米国が排出する温室効果ガスは33億3289万1800トンです。これを2030年の米国の人口予測値3億4964万2000人で割ると、1人当たりでは9.53トンです。韓国より1トン近く少ないです。
カナダのジャスティン・トルドー首相も先日の気候サミットで、2030年の削減目標を従来の2005年の30%から40~45%に高めると発表しました。米国と同じくWRIの資料を見ますと、カナダの2005年の温室効果ガス排出量は7億508万トン、2030年の予想人口は4083万4000人です。米国と同じ方式で計算すると、1人当たりの温室効果ガス排出量は9.33トンです。韓国より1トン以上少ない量です。
気候変動の研究者たちは、温室効果ガス統計が必要な際には、国連気候変動枠組み条約事務局の資料ではなく、WRIや、欧州連合の全地球の温室効果ガスのデータベースを管理するPBLの資料を主に使用します。気候変動枠組み条約事務局が各国の報告した資料をそのまま掲載しているのに対し、後者の2つの機関は国際エネルギー機関(IEA)が自ら調査した資料などをもとに補正を行うため、より信頼性が高いと認められるからです。
しかし、国連気候変動枠組み条約事務局の温室効果ガス統計を上と同じ方式で適用しても、結果は変わりません。2030年の1人当たりの温室効果ガス排出量は米国が10.36トン、カナダが10.28トンで、韓国より少ないと推定されるからです。
中国は温室効果ガス削減について、前回の気候サミットで「2030年までに温室効果ガス排出量はピークに到達」、「2060年の炭素中立(カーボンニュートラル)実現」という従来の計画を再確認しました。2030年の削減目標を具体的に提示していないため、米国やカナダと同じ方式で計算することは不可能です。そこで、気候変動行動研究所で主要10カ国の1人当たりの二酸化炭素排出量の分析資料を作成したパク・フン研究委員に助けを求めました。パク研究委員が二酸化炭素と同じ方式で推定した2030年の中国の1人当たりの温室効果ガス排出量も、やはり韓国より1トン以上少ない9.93トンでした。
主要国がこれまでに打ち出している温室効果ガス削減目標が履行されると仮定すると、2030年には韓国が二酸化炭素だけでなく温室効果ガスの1人当たりの排出量でも米国や中国を抜き、10大主要国中1位となる可能性が高くなるのです。
総排出量は通常、その国の人口に大きく左右されると理解されています。しかし1人当たりの排出量は経済構造だけでなく、国民の生活水準やエネルギー消費行動をも反映するものであると受け止められています。韓国が米国すら抜いて主要国中1位となれば、韓国のイメージに否定的な影響が出るのは避けられないでしょう。
政府が年内に国連に提出することを決めている国が決定する貢献(NDC)において、このような部分まで考慮した目標の引き上げが絶対に行われるべき理由はここにあります。
ちなみに、世界のすべての国を対象とした1人当たりの温室効果ガス排出量ランキングでは、産油国が上位を占めています。WRIの最新資料である2018年の1人当たり温室効果ガス排出量データを見ますと、カタール、バーレーン、アラブ首長国連邦、クウェートが上位に名を連ねています。専門家は、これらの国では主に石油と天然ガスで発電しており、それによって冷房や海水淡水化などを行うため、多くのエネルギーを使うからだと説明しています。2018年の1人当たりの温室効果ガス排出量の世界ランキングは、米国が10位、韓国が18位です。