「このエネルギー戦争で誰が勝つだろうか。おそらく誰でもない」
主要石油輸出国機構であるOPECプラスが5日(現地時間)、来月から1日の原油生産量を200万バレル減産することで合意したことから、エネルギーをめぐる覇権競争が激化するものとみられる。ウクライナ戦争でこの冬の欧州のエネルギー問題に対する懸念が続く中、各国はそれぞれ生き残りをかけた戦略を打ち出している。
この日のOPECプラスの減産幅は、市場の予想(100万バレル)をはるかに上回る水準で決定された。新型コロナパンデミックが始まり世界経済が冷え込んだことで、1000万バレル減産に合意した2020年4月以降、最大幅の減産だ。5日の国際原油価格(ブレント原油12月先物)は、OPECプラスの大規模な減産のニュースで前日より1.71%上がった93.37ドルを記録した。
米国は直ちに反発した。ホワイトハウスはこの日、声明で「ジョー・バイデン大統領は、プーチンのウクライナ侵攻の否定的な影響が世界経済に影響を及ぼす中で出たOPECプラスの近視眼的な決定に失望した」と明らかにした。減産で国際原油価格が上がればインフレを抑えるのがさらに難しくなり、ひと月後に迫った中間選挙でバイデン大統領の足を引っ張る可能性がある。米国は「OPECプラスがロシアと歩調を合わせている」という言葉で強い不快感を表わし、原油価格安定のために来月、戦略備蓄油1000万バレルを追加で放出するという計画を明らかにした。ベン・ケーヒル戦略国際問題研究所(CSIS)先任研究員は「ブルームバーグ」に対し、「今回の減産は市場の状況ではなく地政学によって決定された」として「OPECプラスはロシア産原油に対する価格上限制といった輸入国の努力を押し出しているが、これは危険な動きだ」と話した。
今現在は米国がサウジとロシアに自尊心を傷つけられたものと見られるが、「ウォール・ストリート・ジャーナル」は「エネルギー戦争の勝者には誰もなれない」と分析した。OPECプラスの減産決定は、短期的には原油価格上昇と影響力拡大につながるだろうが、長期的には米国を含む西側諸国を刺激し、逆風を受ける恐れがあるということだ。同紙は「ホワイトハウスはクリーンエネルギー転換の意志を強調した」とし「産油国がいま原油(販売)収入を最大化しようとするならば、西欧は石油からさらに早く遠ざかる方法を探すだろう」と伝えた。
米国と欧州などの主要国はエネルギー騒動を防ぐために、「自国優先」戦略に頭をひねらせている。バイデン大統領は11月8日の中間選挙を控え、「原油輸出制限」カードをちらつかせている。輸出を制限し、自国内での原油と石油製品の価格安定を図る計画だ。ジェニファー・グランホーム米エネルギー相は、石油企業の輸出拡大が米国内でエネルギー価格を引き上げる要因として作用していると思うと述べた。「ロイター通信」は4日、「業界ではバイデン政権が輸出制限を強行する可能性があるとし、ますます憂いている」と伝えた。
ウクライナ戦争以後、史上最悪のエネルギー危機に見舞われている欧州も同様だ。英国は天然ガスの供給不足を解決するために、シェールガスの採掘方法である水圧破砕法(フラッキング)禁止措置を先月解除した。米国のシェール革命を導いたフラッキングは、温室効果ガスを排出し環境問題を起こすという批判を受けているが、英国政府はエネルギー需給が「優先課題」として強行方針を決めた。欧州のエネルギー大国であるノルウェーも、今年の降水不足で水力発電が以前より難しくなり、必要な場合は電力輸出を制限しうると述べている。