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10年たっても50万円が返せない韓国の若者たち…多重債務の悪循環(1)

登録:2022-09-14 03:22 修正:2022-09-14 08:11
[抵当に入れられた未来、若者の借金](1)2022青年負債報告書 
記者が自ら貸金業者に就職 
延滞取り立て業務を担当 
督促の電話、債務者の半数が20~30代
キム・デジュン//ハンギョレ新聞社

<コロナパンデミック以降、「若者層の負債」が急増している。「借金して投資」をはじめとする「モラルハザード」から、資産も職業も不安定な「世代の悲劇」まで、若者の負債を見つめる視線は様々だ。しかし揺るぎない事実もある。負債が臨界に達した20~30代の割合は11.3%で、全世帯平均(6.3%)の2倍近いという統計、そして今日の不安は明日をも危うくするという経験則だ。

 見方が分かれる問題を解決するためには、まず事案をきちんと調べる必要がある。若者の負債問題も同様だ。未来を抵当に入れられて生きていく若者の暮らしを知るために、本紙記者は第3金融圏の貸金業者で3週間働いた。また、それぞれ異なる理由で負債を抱えて生きていく16人の若者に深層インタビューを行った。若者の負債が人生に及ぼす影響を確認するために、20~30代で背負った借金で長きにわたり苦しんできた中高年の話を聞いた。>

 「わざと電話に出なかったわけじゃありません。携帯の料金が払えなくて止められてしまって…。給料日になったら停止を解除してもらってすぐ連絡します」

 小さな声で繰り返し「申し訳ない」と語る34歳のAさんは、貸金業者の長年の顧客だ。今この瞬間、Aさんを苦しめている借金はわずか100万ウォン(約10万4000円)。それも8年前の2014年に借りた金だ。当時、Aさんは26歳だった。8年の間に支払った利子は225万ウォン(約23万3000円)で、すでに元金の2倍を超えている。しかし、8年間で返済した元金は3万ウォン(約3110円)に過ぎない。

 誠実な債務者だったAさんの延滞が頻繁になったのは、2018年の上半期以降だ。彼の職場の記録に時々空白が生じはじめた時と重なる。雇用が不安定だったうえに新型コロナウイルス禍までもが重なったことで、求職難にはまっていたとみられる。「同居している友達の番号を教えます。電話がつながらなかったらそちらにかけてください」。苦労して手に入れたはずの職場で取り立ての電話を受けた彼は、あたふたと頼んできた。1万6000ウォン(約1660円)あまりのひと月の利子を期限までに支払えなかったAさんは、携帯電話の着信停止を飛び越えて職場にかかってきた取り立ての電話に対して、そう言って頭を下げた。

 第3金融圏に属する貸金業者は、財産や信用のない時、または負債が多すぎて他のところでは金を借りるのが難しい時に、最後に訪ねる制度圏の金融機関だ。その次はいわゆる街金(中小消費者金融)か、違法な闇金融しか残されていない。そのため、借金のはじまりが貸金業者である人は珍しい。Aさんの他の債務を確認することはできなかったが、小額の利子さえ返せなかったのは、他の業者から借りた金のせいだと考えられる。貸金業者を訪ねた大半の債務者がそうだった。

 7月、記者は3週間にわたってソウルのある貸金業者で相談員として働いた。仕事は返済期日(利子および元金の納入日)直前や返済期日当日、延滞が始まった日に債務者に電話をかけ(毎日300人ほど)、利子や元金を返すよう伝える取り立て業務だった。その半数の150人あまりが20~30代の若者だった。名簿は毎日異なるが、若者の割合は変わらなかった。電話に出るケースは10%あまりで、若者はその比率がさらに下がった。こうして受話器越しに20~30代の借金を抱える100人あまりの若者に出会った。それぞれ借りた金額と期間、延滞回数は異なるが、力なく萎縮した声だけは同じだった。

500万ウォンで債務不履行者になる若者たち

 もう一つの共通点は、Aさんのように小額の借金に長い間苦しめられていることだった。当初は信用や担保が心もとないため、多くの金を借りることもできなかった。辛うじて融資承認が下りても、最大20%にものぼる貸金業者の利子の支払いに苦しみ、元金の返済など考えも及ばなかった。満期が近づいているという案内の電話をかけた際に、元金を返すと答えた若者顧客はただの1人もいなかった。「満期を延長して、払うのは今月も利子だけでいいですよね」と誰もが尋ねてきた。借金を背負った状態を維持するのが最善のようだった。満期の延長は容易だった。職場と自宅の住所に変更がないか確認し、オンライン契約書を受け取るだけで良い。電話を取らない場合は自動延長される。こうして簡単に債務者という身分も満期なしに延長された。

 資産もなく職業も不安定な若者にとっては、数百万ウォンの負債もなかなか外せない足かせとなった。50万ウォン(約5万1900円)以上の負債を3カ月以上延滞するなど、適時に返済ができなければ「金融債務不履行者」として登録されるが、20代の金融債務不履行者の41.8%は500万ウォン(約51万9000円)以下の負債のせいで各種金融取り引きで不利益を被っている。30代はその割合が29.4%だが、500万ウォン以下の負債で金融債務不履行者になる割合は若者層が全世代(平均25.5%)で最も高い(共に民主党のチン・ソンミ議員室、韓国信用情報院)。それだけ小さな負債のわずかな利子すら返済できない若者債務者が多いということだ。(2につづく)

キム・ジウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1058337.html韓国語原文入力:2022-09-13 05:00
訳D.K

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