韓国の最高裁判所が、朴正煕(パク・チョンヒ)維新政権時代に「緊急措置9号」(憲法を反対・誹謗したり改正・廃止を扇動する行為の禁止)で捜査・裁判を受けた国民とその家族への賠償を国に命じる判決を下した。違憲が明白な緊急措置を根拠になされた一連の公務員の職務行為は、拷問・暴行・過失などが立証されていなくてもそれ自体が基本権を侵害した違法行為に当たるということだ。朴槿恵(パク・クネ)政権時代、ヤン・スンテ最高裁長官の最高裁が緊急措置について「高度の政治行為」だとして賠償責任はないとする歴史に逆行した判決を下したが、最高裁は7年あまりを経てこれを正した。
最高裁全員合議体(裁判長:キム・ミョンス最高裁長官、主審:キム・ジェヒョン最高裁判事)は30日、1975年に発動された緊急措置9号違反の疑いで起訴され、有罪判決を受けて服役した被害者とその家族ら71人が国を相手取って起こした損害賠償請求訴訟で、「国の賠償責任が認められる」として原告勝訴の判決を下した。
この日、最高裁は「違憲・無効であることが明白な緊急措置9号の発令による強制捜査と公訴提起、有罪判決を通じて国民の基本権の侵害が現実化した。緊急措置9号の発令から適用・執行に至る一連の国家作用は、『全体的』に見て公務員が職務を執行した際に注意義務を疎かにしており違法だ。これにより、国民個人が被った損害に対しては国家賠償責任が認められる」と述べた。警察、検事、裁判官など多数の公務員が関与した場合は、個別的かつ具体的な違法行為を問う必要はなく、全体的に国民の基本権保障義務を疎かにしただけでも十分に国家賠償責任が認められるとの趣旨だ。
この日の判決は、2015年3月の「維新憲法による緊急措置権は高度の政治性を帯びた国家行為であり、大統領は国民全体に対して政治的責任を負うに過ぎず、国民一人ひとりに対して民事上の法的義務を負うものではない」とした最高裁の判断(主審:クォン・スニル最高裁判事)を覆したものだ。その後、この判決はヤン・スンテ前最高裁長官時代の「朴槿恵大統領の国政運営を支える事例」として大統領府に提示されていたことが明らかになったことで、「裁判取り引き」との強い批判を浴びた。