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「不正腐敗を厳しく対処」掲げた尹氏、重大腐敗犯した李元大統領の赦免要請を公式化

登録:2022-03-16 10:00 修正:2022-03-16 11:09
文大統領と尹次期大統領の会合 
尹、「相手を包容するための統合」ではなく 
自分側の保守陣営の利害を代弁
次期大統領に当選した尹錫悦氏が今月15日午後、山火事の被害地域である江原道東海市の墨湖港灯台村を訪問し、地元住民たちと挨拶を交わしている=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 次期大統領に当選した尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏は、文在寅大統領との最初の会合で李明博(イ・ミョンバク)元大統領の赦免を要請するという立場を公式化した。尹氏が個人不正を犯した元大統領の赦免を要求することで、自分が属する保守陣営の利害を代弁し、文大統領に赦免権の濫用を強いているという批判の声もあがっている。

 尹氏側のキム・ウンヘ報道担当は15日午前、ソウル汝矣島(ヨイド)の国民の力の党本部でブリーフィングを行い、「尹次期大統領は、李元大統領の赦免を要請するという考えを以前から堅持してきた」とし、文大統領との会合で李元大統領の赦免を建議する方針を明らかにした。尹氏の周辺の人物らも、この日一斉に李元大統領の赦免について言及した。国民の力のキム・ギヒョン院内代表は同日、ラジオ番組に出演し、「李元大統領の赦免に対し、結者解之(自分の起こした問題は自分で解決する)という次元で、文大統領がこの問題に決着をつけるべきだということを何度も述べた」と主張した。尹氏の側近であるクォン・ソンドン議員も同日「現政権が朴槿恵前大統領は赦免し、さらに高齢で量刑も低い李元大統領を赦免しなかったのはまた別の政治報復だ」とし、「これは分裂を助長するもの」と主張した。李元大統領は、自動車部品メーカーの「ダース」から252億ウォン(約24億円)を横領し、サムスンからダースの米国訴訟費用89億ウォン(約8億5千万円)を受け取った容疑で裁判にかけられ、懲役17年、罰金130億ウォン(約12億4千万円)が確定した。

 尹氏側が一斉に「李元大統領の赦免」を要求したのは、任期開始前に李元大統領の事案を片付けるべきだという判断によるものとみられる。尹氏が保守陣営の元大統領を直接赦免するには政治的負担が大きい上、自分が捜査指揮して拘束起訴した李元大統領を自ら赦免するという構図は不適切だという批判を考慮したものだ。そのうえ、尹氏の最側近とされるチャン・ジェウォン、クォン・ソンドン議員らはみな李明博派といわれている。彼らの赦免要請が尹氏に伝わり、影響を及ぼした可能性も排除できない。

 尹氏側は、かつて1997年に金大中(キム・デジュン)次期大統領(当時)が金泳三(キム・ヨンサム)大統領に「全斗煥(チョン・ドゥファン)、盧泰愚(ノ・テウ)赦免」を要請し、金大統領がこれを「国民統合」の次元で受け入れた前例に注目しているという。今回も尹氏が赦免を建議し、現大統領がこれを受け入れる姿を期待しているわけだ。しかし、全斗煥、盧泰愚の赦免は、独裁政権の被害者である金大中氏が和解と統合という次元で要請したものだが、李元大統領の赦免要求は、自分たちの属する陣営の大統領赦免を要求するという点で不適切だという批判が出ている。与党関係者は、「国民統合のためだというなら、相手の陣営の赦免を求めるべきではないのか。これが国民統合なのか」と批判した。

 大統領府は「赦免は大統領の権限」だとして、発言を控えている。ただ、今回の大統領選で極に達した陣営対立を確認しただけに、文大統領が決断を下す可能性があるという見方もある。尹氏との初会合で出た議題を無視するのは難しいという話だ。大統領府と近いある与党関係者は、本紙の取材に対し「李明博元大統領の赦免問題は、尹氏が要求すれば文大統領はかなり困惑するだろう」と述べた。文大統領の側近であるキム・ギョンス前慶尚南道知事との「同時赦免」の可能性も提起された。クォン・ソンドン議員も同日、「文大統領の最側近であるキム前慶尚南道知事を助けるため、同時赦免を狙って(李元大統領を)残しておいたという政治的意味が隠れている」と主張した。ただし、大統領府関係者はクォン議員の発言について「非常に望ましくない。次期大統領周辺でああだこうだと言うのは望ましくないだけではなく、次期大統領にも礼を欠いている」と述べた。

 参与連帯はこの日論評を出し、「大統領の権限を濫用して賄賂を授受し、懲役17年刑を言い渡された李明博に対する赦免は妥当でない。当時ソウル中央地検長として捜査を指揮した尹錫悦氏が、李明博の赦免を要求するのは道理に合わない」と反発した。文大統領に対しても、「李明博赦免は国民統合ではなく、法と原則の適用に例外をつくることであり、また別の社会的対立を招く決定になる」と述べた。民主社会のための弁護士会のキム・ナムグン改革立法特別委員長は「赦免制度は三権分立の原則や司法制度の信頼を揺るがす余地があり、濫用してはならない」とし「李元大統領の腐敗事件は赦免権適用対象ではないということは明白だ」と指摘した。

キム・ミナ、イ・ワン、キム・ユンジュ、イ・ウヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1034997.html韓国語原文入力:2022-03-1607:04
訳C.M

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