今月15日、第20代韓国大統領選挙の公式選挙運動が始まったが、共に民主党のイ・ジェミョン候補と国民の力のユン・ソクヨル候補の「二強構図」の中でも、どちらも安心できない状況が続いている。各種世論調査では両候補が誤差範囲内で熾烈な接戦を繰り広げ、選挙まであと22日の間、大統領選の構図を揺るがす主要な変数にも関心が集まっている。国民の党のアン・チョルス候補が打ち出した「ユン・ソクヨル‐アン・チョルス 候補一本化」問題が超大型イシューに浮上する中、各候補側では支持層の結集と投票率、選挙終盤の「ネガティブ攻勢」などにも総力戦を繰り広げている。
(1)大統領選を飲み込む「野党候補一本化」、実現するのか
第20代大統領選の最大の変数は、ユン・ソクヨル候補とアン・チョルス候補が終盤に一本化するかどうかだ。同日までに公開された世論調査で、両候補が一本化した場合、野党候補が与党のイ・ジェミョン候補に10ポイント前後の差をつけて勝つという結果が出た。ただ、候補間の談判形式でアン・チョルス候補の「譲歩」を求める国民の力とは異なり、国民の党は世論調査による一本化を要求し、交渉は膠着状態に陥った状態だ。アン候補は15日、自身の候補一本化の提案に関して「ユン候補ができるだけ早く決心を明らかにすべきだ」と圧力をかけ、ユン候補は立場を明らかにしていない。政界内外では、大統領選の終盤に入り、結局支持率の推移によって一本化するかどうかと時期が決まるものとみている。支持率の行方次第で、双方の政治的決断が出る可能性があるからだ。「議題と戦略グループ ザ・モア」のユン・テゴン分析室長は「ユン候補の支持率が下がっているだけに、一本化に対する関心はその分高まるだろう」と予測した。
両候補が場外で神経戦を繰り広げている間、民主党はアン候補との「統合政府」の提案を投げかけた状態で、アン候補の完走を「応援」する様子だ。民主党選対委の関係者は、「アン候補は国民の力に加勢するのではなく、独自の候補として選挙を実施すれば、共同政府の一員となることができるというメッセージを送っている」と述べた。ユン候補とアン候補の一本化を防ぎ、「野党陣営の分裂」で大統領選を行うのが最善という計算だ。仁荷大学のパク・サンビョン招聘教授は「民主党は『イ・ジェミョンの統合政府』を強調し、中道層を引き込む効果を引き出し得る」とし「アン候補との一本化の可能性をあえて閉ざす必要はない」と述べた。
(2)「隠れイ・ジェミョン支持」はいるのか
民主党と国民の力の中では、イ・ジェミョン候補の兄の妻に対する暴言や家族問題などの噂のために、イ候補を「堂々と」支持できない、いわゆる「隠れイ・ジェミョン支持」が存在するかどうかをめぐり、意見が分かれている。政界では、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の国政運営支持率がイ・ジェミョン候補の支持率を10ポイント近く上回る状況で、文大統領は支持するがイ候補は支持しない人を「隠れイ・ジェミョン支持」とみている。世論調査に現れないこのような隠れた票の結集が、最終結果を左右するという判断だ。民主党では、最終的に彼らが投票所に出ればイ候補に投票するしかないとみつつも、彼らが投票を放棄する可能性を遮断するために力を注いでいる。民主党選対委の関係者は「伝統的な民主党支持者のうち、一部の全羅道の支持層など約3~4%を隠れ進歩派層とみている」とし、「イ候補の当選可能性を示しながら、彼らを投票所に引き出すのがイ候補の課題」だと説明した。また別の選対委関係者は「全羅道と文在寅支持層のうち、イ候補には到底票を入れられないという感情があるのは事実」としながらも「これらの人々が最近、ユン候補の(現政権に対する)『報復捜査』を示唆する発言後、結集する様相を見せている」と分析した。一方、すでに支持層は結集しており「隠れイ・ジェミョン支持」は存在しないとの声もある。民主党選対委関係者は「隠れイ・ジェミョン支持というものはない。ただ浮動層が多い状況だ」と断言した。
国民の力は、ユン候補が各種世論調査で誤差範囲内でぎりぎり優位を占めていると判断しながらも、終盤の民主党支持層の結集を警戒する態勢だ。国民の力の関係者は本紙に対し「最近のユン候補の『積弊を捜査する』といった発言の影響に注目している」とし、「これまで文在寅大統領の国政運営を支持したがイ候補には心を開くことができなかった有権者が、このようなきっかけで投票の意思を変える可能性があると思う」と述べた。
(3)20~30代、40~50代…投票所に来るか
世代間の結集の流れがはっきりしている今回の大統領選で、与野党はどの候補の支持層が投票所に結集するかが最終的に勝敗を左右するとみている。国民の力は「キャスティングボート」として浮上した20~30代の支持の流れを投票所につなげるため、総力戦を繰り広げる予定だ。最近、20~30代の「青年遊説団」を別に設けたのもこのためだ。国民の力は昨年4月7日のソウル・釜山市長の補欠・再選挙で反応が良かった参加型遊説車(オープンマイク)などを動員し、若者たちの投票参加を呼びかけている。民主党も、主要な支持層である「40~50代」の投票率を引き上げるための戦略づくりに乗り出した。民主党選対委関係者は「35歳から60代初めまでの経済活動人口が民主党に有利だとみている。選挙過程では彼らが投票の意志を持てるようにしなければならない」と述べた。民主党も20~30代に向けた求愛を続けている。別の民主党選対委関係者は「若者層には今日イ候補が公開したテレビ広告のように短く率直な気持ちを込めた映像が投票を促すのに役立つ」とし「全く準備ができておらず、どこに飛ぶか分からないユン候補ではだめだというマーケティングも同時に駆使しなければならない」と述べた。
(4)終盤まで吹き荒れるネガティブ攻勢
激しくなっている両者のネガティブ攻勢は、終盤の流れを左右する重要な変数に挙げられる。民主党はこの日、公式選挙運動の開始とともに「ユン・ソクヨル4大不可論」を打ち出し、大々的な攻勢を予告した。この日公開された民主党内部の文書には、民主党が浮き彫りにすべきユン候補の問題点として、無能・無知▽呪術▽本人・妻・義母疑惑▽報復政治公言などが提示された。特に具体的な遊説文句として「ユン・ソクヨルは生涯検事といって国民を見下した人」「爆弾酒中毒患者に国政運営を任せることはできない」「ユン候補の夫人キム・ゴンヒ氏は『捏造の女王』です」などを挙げた。民主党のキム・ウィギョム議員は、ユン候補夫婦の側近と目されたコンジン法師が、生きた牛の皮をむいて祈祷をするある巫俗行事に、ユン候補と配偶者のキム・ゴンヒ氏の名前が書かれた提灯がかかっていたとし、この行事とユン候補との関連疑惑を提起した。
国民の力は公式選挙運動が始まったこの日も、イ候補が城南(ソンナム)市長、京畿道知事在職当時の法人カード流用疑惑、夫人キム・ヘギョン氏の「皇帝儀典(私用を公務員にさせたなどの不適切な待遇)」疑惑、大庄洞事件と城南FCの後援金収賄疑惑に対する論評を相次いで出し、攻勢を続けた。同時に国民の力の法律支援団はこの日、ユ候補に向けた与党の「新天地イエス教攻勢」に関して、イ候補とソン・ヨンギル民主党代表、チュ・ミエ前法務部長官らを虚偽事実公表、名誉毀損、誣告告訴罪の疑いで検察に告発した。
依然として残っている両陣営の「配偶者リスク」も、有権者の感情を刺激するという点で、爆発力を保っている。龍仁大学のチェ・チャンリョル教授は「今後も相手の配偶者のリスクをいっそう浮上させようという戦略を取るものとみられる」とし「現在の選挙がお互いの時代精神や大きな社会的議論の違いを盛り込んだ政策が見えないため」と述べた。