韓国政府が11月1日から始まった段階的な日常回復(ウィズコロナ)を中止し、社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンシング)を強化する方針を発表した。ウィズコロナ以前の防疫対策を再び打ち出したが、専門家らは当分、現在の感染拡大を鎮静化するのは難しいと予想した。
政府が16日発表したソーシャル・ディスタンシング強化案は、全国的に私的な集まりの人数を「接種完了者(48時間以内の陰性確認者を含む)4人」に縮小することを骨子とする。食堂やカフェ、室内体育施設、遊興施設などの営業時間を9時までにし、映画館やネットカフェなどの営業時間を10時まで制限する内容も含まれた。今回の措置は18日(土曜日)0時から開始し、来年1月2日までの16日間、適用する計画だ。新型コロナウイルスの感染拡大が収まらなければ、期間は延長される見通しだ。クォン・ドクチョル中央災害安全対策本部1次長(保健福祉部長官)は「高齢者の感染と重症者が予想より高い水準で発生し、医療体制が限界に達する危険に直面した。いま防疫を強化しなければ高齢者を中心に多数の被害が発生する可能性がある」とし、「追加接種を速やかに進め、病床の確保に乗り出しているが、効果が現れるまでには時間がかかる。現在の危機を克服し、ウィズコロナを再開するため、2週間の『一時停止』に協力してほしい」と呼び掛けた。
中央防疫対策本部(防対本)は16日0時現在、新規感染者が7622人だと発表した。木曜日の発表(水曜日の集計)基準でこれまで最も多い。重症者も989人で1000人に迫り、やはり新型コロナの感染拡大以来最も多かった。死亡者は昨日(70人)より8人減って62人が発生した。累積死亡者は4518人で、累積致命率は0.83%に達した。前日午後5時基準で全国の新型コロナ専門重症患者病床の稼働率は81.4%(首都圏87%)で、病床が空くまで待機している患者も連日1千人を超えている。首都圏だけで病院の入院待機患者が771人、生活治療センター入所待機者が261人で、計1032人が自宅待機を余儀なくされている。
防疫当局は今後、状況はさらに悪化すると予想している。チョン・ウンギョン防対本部長(疾病管理庁長)は同日午前のブリーフィングで、「感染拡大が悪化した場合、今月中に約1万人、来年1月中に最大2万人まで新規感染者が発生する可能性がある」とし、「重症者も感染拡大が続いた場合は12月に約1600~1800人、さらに悪化した場合は1800~1900人発生すると予想される」と述べた。政府は今月6日から防疫パスの適用施設を拡大するなど、「特別防疫対策」を導入したが、感染拡大の勢いを抑えることはできなかったと分析した。
保健医療体制が現在の感染者と重症者に対応し切れなくなったという政府の分析は、先月、準備が整っていない状態でウィズコロナに踏み切ったことを裏付けている。保健医療団体連合のチョン・ヒョンジュン政策委員長は本紙の取材に対し「ドイツと保守党政権の英国でも国家保健医療に対する投資を増やし、病床医療体制を整えた状況でウィズコロナを始めた」とし、「ウィズコロナで最も重要なのは新規感染者が一部増えても治療できる医療対応体制を整えることだが、韓国政府がそれが十分できていなかったため、予見された失敗」だと述べた。
防疫専門家たちは、政府が非常措置発動の基準として「重患者病床の稼働率75%」を提示したにもかかわらず、自らこれを守らなかったため、対応が遅れたと指摘する。日常回復支援委員会防疫・医療分科委員のホ・タク全南大学病院教授(応急医学)は、「すでに2週間前から首都圏の重症患者病床の稼働率が80%を超えており、危険度評価で首都圏『非常に高い』、全国的に『高い』が出たときに、非常措置を取るべきだった」と述べた。今の事態は非常措置発動が遅れた結果であり、今後、ウィズコロナを再開する時期も遅れるだろうというのが大方の予想だ。嘉泉大学吉病院のオム・ジュンシク教授(感染内科)は「ウィズコロナを止める時期が遅くなり、結局再び日常回復に戻るまでかなりの時間を要するだろう」とし、「非常措置(ソーシャル・ディスタンシングの強化案)以降、新規感染者が減ったとしても3千人を上回るか、重症患者病床の稼働率が70%台を維持すれば、結局、ウィズコロナを再開するのは難しいだろう」と見通した。現在の感染拡大状況を見る限り、いつ再びウィズコロナを始められるか分からないという指摘だ。
すでに時機を逸したが、今後2週間だけでも飽和状態に達した病床と医療の対応力を再整備し、在宅治療などが円滑に行われるよう整えなければならないという声もあがっている。ソウル大学のキム・ユン教授(医療管理学)は「どのような患者を優先的に入院させ、治療するかを効率的に決めるために、現在の福祉部官僚中心の病床運用体制を地域単位・専門家中心に変えなければならない」とし、「さらに相談・移送・在宅治療キットの支援などが円滑に行われない不安な在宅治療システムも安定的に運用できるよう改善すべきだ」と述べた。