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[独自]「オミクロン株、重症度10分の1でも感染力10倍なら同じ」

登録:2021-12-15 10:44 修正:2021-12-15 14:35
「最初のオミクロン感染の牧師夫婦を診療」キム・ジニョン仁川医療院感染内科長 
「大部屋で患者がデルタとオミクロンをうつし合うのではないかと懸念」 
「接種が答え…ワクチン未接種で重症化すれば治療は容易ではない」
仁川医療院感染内科のキム・ジニョン科長が昨年2月23日午後、ソウル麻浦区孔徳洞のハンギョレ新聞社で開かれたコロナウィルスの拡散を防ぐための座談会で発言している=キム・ミョンジン記者//ハンギョレ新聞社

 今月1日に韓国国内で初めて新型コロナウイルスのオミクロン株への感染が確認されてから、2週間ほどが経った。その間、オミクロン株の累計感染者数は119人(14日午前0時現在)にまで増えた。現在、首都圏だけでなく全羅道地域でも保育園を中心としてオミクロン株の「n次感染」が起きており、国内でもオミクロン株が優勢になるという観測すら出ている。

 本紙は、韓国初のオミクロン株感染者となった仁川(インチョン)の牧師夫婦を治療して退院させた仁川医療院感染内科のキム・ジニョン科長に13日、電話でインタビューを行った。同氏は「オミクロン株は重症度が低いため、クリスマスプレゼントになる可能性がある」という一部の主張を「話にならない」と一蹴した。オミクロン株は重症度が低くても感染力が強いため、広がればそれだけ感染者があふれざるを得ないからだと説明する同氏は「大部屋で隔離された状況でデルタ感染者とオミクロン感染者がウイルスをうつし合う可能性も検討しなければならない」とし「(現在のところ)ワクチン接種が答え」と強調した。以下はキム科長との一問一答。

-韓国初のオミクロン株感染者だったナイジェリアを訪問した牧師夫婦を治療された。デルタ株とは異なるオミクロン感染者だけに見られる特別な症状はあるのか。

 「熱が出たり喉が痛くなったり咳をしたり、という症状は似ている。ウイルスが私たちの体の中で増殖し、それに合わせて体の中で抗体が作られる過程を「臨床経過」と言うが、これがデルタ株とは異なるようだ。デルタ株は初期の肺炎への進行速度が速いが、オミクロン株はそれよりも遅いようだ。もちろん、まだデータが不十分なので、今の時点で意味などをはっきり語るのは難しい。データを整理して関連内容を発表しようと思っている」

-治療法が知りたい。これまでのデルタ株感染者の治療法はオミクロン株感染者にも効果があるのか。

 「コロナの初期患者の中でも準重症患者にはレグキロナという抗体治療薬を使う。オミクロン株感染者にも、2人は肺炎進行が懸念されたため、レグキロナを投与したところ、幸い重症にはならなかった。もちろん、今後もこの抗体治療薬がオミクロンに効くかどうかは慎重に見ていかなければならない。スパイクタンパク質で変異が多く発生しているため、ウイルス自体を抑制する抗体治療薬に効果があるかどうかは分からない。レムデシビルというウイルスを抑える薬があるが、この効果も見守らなければならない」

-オミクロン株は重症度が低いという見方が広がっているようだが、一方では国内のオミクロン株感染者は母集団の数が非常に少ないため、正確な分析が発表されるまでにはもっと時間が必要だという話もある。どちらが正しいのか。

 「データは韓国より先にオミクロン株感染者が出た南アフリカや米国を参考にしなければならない。韓国でもオミクロン株がさらに広がり、感染者も増えるだろう。しかし、問題は重症度だけではない。例えば、デルタ株の重症度が10%で、オミクロンが1%だと仮定すると、オミクロン株の感染者がデルタ株の10倍生じれば、結局は同じ数の重症患者が発生する。防疫においては、ウイルスの重症度だけが重要なのではないということだ。重症度が低いからといって重症患者が現れないわけではない。しかもデルタ株にはワクチンが効くが、オミクロン株に対してはワクチンの効果が落ちると予測されている。(重症度の低いオミクロン株が)クリスマスプレゼントなどと楽観するのは危険な考え方だ」

-医療現場の雰囲気はどうか。オミクロン株の登場前と後で異なる点はあるか。

 「どうなっていくのかは、まだ分からない。デルタ株も予測が全くできない状態から、国内でわずか2カ月で優勢となった。オミクロン株も次第に国内で自らの領域を5%、10%、20%と広げていく可能性もあるし、静かに消える可能性もある。だが感染力が優れているわけで、コロナ感染者全体にオミクロン株が一定程度占める可能性も明らかにある。問題はデルタとオミクロンが共に流行っているという状況だ。そうなれば頭が痛い。オミクロン株は現在、PCR検査では診断できない。病院でオミクロン株なのかデルタ株なのか分からずに治療しなければならないという状況になりうる。そうなれば、オミクロン株の重症患者にはきちんとした治療ができない可能性もある。そしてデルタ株にかかった人がオミクロン株にもかかる、ということも外国で報告されている。そうなれば阿鼻叫喚だ。デルタ株とオミクロン株に同時に感染したという報告はまだ聞いていない。しかし、呼吸器の感染症は個室隔離が原則なのに、いつの間にかその原則から外れて大部屋で隔離している。デルタ株感染者とオミクロン株感染者がウイルスをうつし合う可能性も検討しなければならない。かといって大部屋をなくせば、今より病床が大幅に減らざるを得ない」

-オミクロン株は突破感染(ブレイクスルー感染)が多いということで、ワクチン無用論が再び登場している。

 「そんなことを言うのは本当に悪い人たちだ。ワクチンを打ったかどうかによって、現場では患者の状態が正確に分かれる。患者が入ってきた時に聞くのは、年齢とワクチン接種の有無だ。ワクチン接種を受ければ、重症になっても回復する可能性が高まる。だがワクチンを打たずに重症化すれば、治療薬をいくら投与しても症状は容易に改善しない」

-状況はさらに厳しくなりそうだが。

 「これまで述べたことを理解するだけでも「オミクロン株は重症度が低いからプレゼントだ」などという話は出なくなるだろう。今は防疫水準を適切に保っていかなければならない状況だ。感染学会からも声明が出ている。今はある程度患者数を調節すべき時だ。(病床の空きを待っている)患者が息絶えていっているのに、患者を受け入れるスペースがないので助ける方法がない。臨界点に到達していると思う」

イ・スンウク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/area/capital/1023261.html韓国語原文入力:2021-12-14 15:18
訳D.K

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