石炭発電の閉鎖など気候変動に対する人間の対応が遅々として進まない中、動物の素早い地球温暖化への適応現象が相次いで観察されている。
イスラエルのテルアビブ大学の研究チームは14日、「魚や甲殻類、イカのような軟体動物など236種の海洋生物の生息地を分析した結果、地中海一帯の生物が平均55メートルの水深の深い場所に移動した」と発表した。研究チームの論文は12日付で学術誌「地球生態学と生物地理学」(Global Ecology and Biogeography)に掲載された。(DOI : 10.1111/geb.13414)
温暖化避けて冷たい海の中に生息地を移す
地球の平均気温は産業革命以前に比べて1.09度上昇したが、地中海の温暖化は特に激しく、30年ごとに1度上昇している。研究チームは様々な研究で、1990年以後、トロール漁業(海底に沿って網を引いて多様な種を捕獲する方式)を通じて収集した236の生物種に対する捕獲水深資料と水温観測資料を相互比較し分析した。研究チームは、深い場所に移動する傾向がすべての海洋生物に同じく現れているわけではないと明らかにした。冷水種(冷たい水においてのみ現れる種)は、温水種に比べてより深い場所に移動したことが分かった。また、狭く浅い場所に住む種よりも広く深い場所に住む生物種の方が深い場所に移動した。同様に、狭い温度帯だけで住む種よりも広い温度帯で活動する生物種の方が深い場所に移動した。
論文の共同著者であるジョナサン・ベルメーカー教授は「地中海はもともと暑い所で、すでに多くの生物種が限界に達したことを認識しなければならない」と述べた。ベルメーカー教授の下で博士研究員(ポストドクター)として働いている同論文第1著者、シャハル・チェイキン博士は「政策立案者たちは生物種が深い海に移動していることに注目しなければならない。例えば、未来の海洋生態系保護区は、より深い場所に移動した生物種に避難所を提供できるように再定義されなければならない。また、将来の漁業はより深い場所で魚類を捕獲する事業になり、これはより遠い場所に移動してより多くの燃料を消費しなければならないことを意味する」と述べた。
ベルメーカー教授は「生物種が温かい水を避けて深い場所に移動し、素早く適応をしているが、海底という限界がある。すでにタラのような深海魚はこれ以上下がるところがなく、個体数が減少している」と話した。
赤道に近づくほど小さくなるというベルクマンの法則が作動
また他の研究チームは、地球温暖化のためアマゾンの鳥の体が小さくなり、翼は長くなっているという論文を12日付で「サイエンス・アドバンシス」(Science Advances)に掲載した。(DOI : 10.1126/sciadv.abk1743)
以前の研究の中で、鳥の体がますます小さくなっているという報告があったが、ほとんどが渡り鳥を対象にした研究であるうえ、原因として狩猟や殺虫剤、生息地の破壊などが挙げられてきた。しかし、今回の研究は、原始のままであるアマゾン熱帯雨林に生息する定住性の鳥に関するものであり、研究チームは温暖化する気候を唯一の変数とみている。
研究は1970年代以来、森林伐木や開発が生態系に及ぼす影響について研究してきたブラジルのアマゾン生物多様性センターで行われた。同センターでは研究の一環として鳥を網で捕まえて大きさを計り、翼幅を測定した。研究員たちは40年かけて、約1万5千羽の鳥の翼幅と体重の割合を集計した。その結果、研究対象鳥類77種すべてで平均体重減少が現れ、36種は1980年以降10年ごとに体重の2%が減少した。また、同期間、翼幅が平均的に増加した種は61種にのぼった。
研究チームは、このような形態学的変化の背景に地球温暖化があるとみている。1970年代以降、同地域は乾季は1.65度、雨季は1.0度気温が高くなった。雨季はより湿気が多くなり、乾季はより乾燥するようになった.
論文の第1著者である米国カリフォルニア統合生態研究所のビテック・ジリネック研究員は「気温と湿度の変動がこうした変化の原因に違いない」と述べた。研究チームは論文で、同種や近い種を比較した場合、寒い場所ほど体が大きくなり、赤道に近づくほど体が小さくなるという「ベルクマンの法則」に言及した。ベルクマンの法則は、19世紀ドイツの動物学者クリスティアン・ベルクマンが立てた仮説で、寒い地方で暮らすためには熱が発散する量を減らさなければならないが、体が大きければ外に露出する体表面積の割合が減るためだという理論だ。
しかし、翼幅が長くなった原因は疑問として残っている。研究チームは遠くへ飛ぶ必要があって翼幅が伸びたと推定したが、このような変化が進化的圧力のためか、鳥が変化した環境に適応するために成長と共に翼幅が長くなったのかについて結論を下すことができなかった。