気候学者がほとんどを占める「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の著者の多くが、今世紀末までに地球の平均気温がパリ協定の目標である1.5~2度よりも高い3度上がると悲観していることが明らかになった 1.5度に制限できると楽観している割合は4%に過ぎなかった。IPCCは、今世紀内の地球の平均気温の上昇幅を、18世紀半ばから後半の気温に比べて1.5度以内に制限できなければ、破局的な気候災害に見舞われると警告してきた。
科学ジャーナル「ネイチャー」は1日(現地時間)、8月に発表されたIPCC第6次気候科学報告書(第1作業部会)に参加した233人の著者に対してアンケート調査を行った結果、回答した92人のうち60%が「2100年までに全地球の平均気温は産業革命以前に比べ3度上昇する」と答えたことを明らかにした。2.0度に制限できると答えたのは20%で、1.5度に制限できると答えたのは4%に過ぎなかった。
回答者は、2015年のパリ協定の一環として世界の指導者たちが政治的約束をしたにもかかわらず、各国政府が地球温暖化を大きく遅らせられるだろうということについては強い疑問を示した。
回答者の大半(88%)は地球温暖化を「危機」だと考えており、自分が生きている間に災厄的な気候変動の影響を受けるだろうと答えた。また、半数近くが居住地や出産など、人生において重要な決定を下すうえで、地球温暖化が重要な考慮対象となっていると答えた。気候変動が心配で怒りや悲しみ、ストレスを抱えていると答えた人も60%を超えた。
調査に応じた気候学者のパオラ・アリアスさん(コロンビア・アンティオキア大学の研究員)はネイチャーとのインタビューで「世界の指導者が地球温暖化を遅らせる、あるいは不平等に伴う大量移住や市民の騒乱といった予測可能な未来にコロンビア政府が対処できる、という確信が持てず、出産するか悩んだ」と語った。
ネイチャーは「一部のIPCCの著者が示した悲観論は、今週英国のグラスゴーで始まる国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)に対する希望と絶望との大きな隔たりを克明に表している」と解釈する。そして、今回の会議に先立って、米国や欧州連合(EU)、中国など、世界の国々が温室効果ガス削減の新たな目標を発表しているが、これまでの科学的分析によると、新たな目標はパリ協定の目標達成には大いに不十分だと述べている。
IPCCの著者であるモハンマド・バンバ・シラーさん(ルワンダのキガリにあるアフリカ数理科学研究所の気候学者)は「各国の政府は『緑の約束』を打ち出しているが、まだ温室効果ガス排出を抑制するための措置を見たことはない」と断言した。そして「私の母国セネガルも温暖化への対応と適応に向けた計画を発表したが、実際に変化したことは一つもない」と述べた。
実際のところ、期待とは裏腹に、COP26は早くも「赤信号」が点灯する雰囲気だ。会議に先立ちイタリアのローマで行われた主要20カ国(G20)首脳会議(サミット)でも、温室効果ガス削減の時限と方法についての具体的な合意は得られなかったうえ、何よりも中国、インドなどの炭素大量排出国の「独自路線」が明らかだからだ。