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「顔は唯一無二の個人情報」…市民社会、韓国政府に「AI識別追跡」の中止を要求

登録:2021-11-10 06:22 修正:2021-11-10 07:22
9日午前、ソウル市鍾路区通仁洞の参与連帯事務所のヌティナムホールで、参与連帯公益法センター、民弁デジタル情報委員会、情報人権研究所などが「AI識別システム構築」の中止を求める記者会見を開いた。取材カメラに出席者が顔認識され映っている=キム・テヒョン記者//ハンギョレ新聞社

 韓国の法務部と科学技術情報通信部(科技部)が韓国人および外国人の顔写真を活用して進めている「人工知能(AI)識別追跡システム」の構築事業に対し、市民社会が「類を見ない情報人権侵害だ」と糾弾した。参与連帯や「民主社会のための弁護士会」(民弁)などはこの事業の「即刻中止」を求め、法務部長官との面会を要求している。

 市民団体である参与連帯の公益法センター、民弁のデジタル情報委員会、情報人権研究所など6つの市民団体は9日、ソウル市鍾路区(チョンノグ)の参与連帯事務所で記者会見を開き、「個人情報保護法と国際人権規範に違反したAI識別追跡システム構築事業を直ちに中止すべきだ」と発表した。AI識別追跡システム事業は、法務部と科技部が空港出入国管理にAI顔認識システムを導入するという名目で2019年から進められてきたプロジェクトだ。この過程で政府が韓国人および外国人の顔写真1億7000万件以上をAI学習用として民間企業に提供した事実が、先月21日の本紙報道で明らかになり、プライバシー権の侵害などをめぐる議論が巻き起こった。

 市民団体らは同事業を「衝撃的な人権惨事」と規定した。これらの団体は同日、記者会見で「顔など生体情報は簡単に変わらない唯一無二の情報であるため、(流出すれば)致命的なプライバシーの侵害を引き起こす」とし、「今回の事案は顔認識技術を管理・統制すべき国家機関が公的目的で収集した生体情報を、民間企業の技術開発のために提供した前代未聞の事件」だと批判した。

9日午前、ソウル市鍾路区通仁洞の参与連帯事務所のヌティナムホールで、参与連帯公益法センター、民弁デジタル情報委員会、情報人権研究所などが「AI識別システム構築」の中止を求める記者会見を行っている=キム・テヒョン記者//ハンギョレ新聞社

 事業の「違法性」に関する指摘も相次いだ。法務部と科学技術部は、この事業に使われた顔写真などが「入国者身元確認」目的で収集されたものであるため、「出入国手続き改善」のためにも問題はないと主張している。これに対し、市民団体らは「出入国管理法などは入国時の本人確認手続きに顔情報を提供することを認めているだけで、民間企業のAI開発用として処理を認めているわけではない」とし、「同事業が個人情報の目的以外の処理を禁止した個人情報保護法に違反しており、(個人情報の中でも)デリケートな情報に当たる生体認識情報の処理に求められる法的要件も全く順守していない」と主張した。

 これらの団体は、パク・ポムゲ法務部長官が事業中止の方針を明らかにすべきだとして、長官との面会を要請する文書を法務部に送った。これに先立ち、先月の法務部国政監査で、パク長官は「個人情報が濫用されないよう最小限の範囲内で事業を進める」としながらも、事業撤回の意思を明らかにしなかった。これに対し市民団体らは「最近米国や欧州連合などは顔認識AIを危険な技術とみて、生体情報を活用した遠隔監視システムに対する規制案を設けている、市民社会は法務部のAI識別追跡システム事業の中止と対策作りなど、責任ある回答を聞きたい」として、面会を求める理由を明らかにした。

チョン・ホソン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/economy/it/1018552.html韓国語原文入力:2021-11-09 14:54
訳H.J

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