4日午前(現地時間)、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が行われている英国グラスゴーのスコットランド・イベント・キャンパス(SEC)の中央に、一番広い部屋(room)がある。現場の警備が最も厳しいその部屋が、首脳と高官が参加する発表が行われる場所だ。その日、そこでは、化石燃料からクリーンエネルギーへの切り替えに賛同する世界各国の発表が続く予定だった。入場が遅れ、日本のある新聞社の記者と話をすることになった。彼は「会社からインタビューを受けないよう言われている」としながらも、対話に積極的だった。
日本の岸田文雄新首相が「気候変動より安定的な燃料供給が重要だ」と述べ、化石燃料が必要だという内容の発言をした後だったからだろうか。世界の気候環境団体が連帯した組織であるCAN(Climate Action Network-International)が、2050年になっても石炭火力発電を維持することを明らかにした日本に対する批判と嘲弄の意味を込め、COP期間中に授与する「本日の化石賞(Fossil of the Day)」を与えられた日本について、日本の記者の評価は極めて厳しいものだった。
彼は「日本は石炭依存度が極めて高い」と首を振りながら言った。日本は、2030年まで石炭火力発電の割合を19%に維持しようとしている。2030年における「国が決定する温室効果ガスの削減目標」(NDC)について、石炭エネルギー比率を21%に設定した韓国と似た状況だ。「韓国と日本の状況は似ている」という話に、彼は、4月に日本がNDCを46%に設定した根拠について「おぼろげながら浮かんできた」と明らかにし、議論となった日本の前環境相の小泉進次郎氏に対して、「(彼は)現実味に欠ける詩人や芸術家(artist)みたいだ」と言った。同時に彼は「再生可能エネルギーを用いるには、日本の環境は現実的な制約が多い。海が深く山が多いのが事実」だと打ちあけた。化石燃料から再生可能エネルギーへの移行が、話ほどは容易ではないということが分かっているので、現在の状況は心苦しいという趣旨の対話はしばらく続いた。
現場では、英国のボリス・ジョンソン首相を始め、米国のジョー・バイデン大統領、ドイツのアンゲラ・メルケル首相、フランスのエマニュエル・マクロン大統領など世界の首脳が映像メッセージを通じてエネルギー移行を強調した。続いて、壇上に座った発展途上国の長官らを中心に移行計画の発表が続いた。モロッコ、スリランカ、グレナダ(カリブ海の小さな英連邦国家)、モルディブの環境・エネルギー関連の長官らによるエネルギー移行の意志が込められた発表が終わった後、米国エネルギー省のジェニファー・グランホルム長官の激励の発言が続いた。国際労働組合総連合のシャラン・バロウ書記長が、気候に親和的な雇用の重要性を強調したりした。
続いてこの日、国連側は「世界的に石炭からクリーンエネルギーに移行する声明書」(GLOBAL COAL TO CLEAN POWER TRANSITION STATEMENT)を公開して報道資料を出し、「世界20大石炭発電使用国のうちの5カ国を含む少なくとも23カ国が、石炭発電を段階的に中断することを新たに約束した」と紹介した。声明書に署名した国家は合わせて約40カ国で、代表に挙げられた5カ国には韓国が含まれていた。韓国が海外石炭事業に進出しているインドネシア、ベトナムを含め、ポーランド、エジプト、スペイン、ネパール、シンガポール、チリ、ウクライナ政府などが名を挙げられた。韓国代表としては、ムン・スンウク産業部長官が署名した。地域としては、米国のハワイ州とオレゴン州などとともに、韓国の済州道がク・マンソブ道知事の権限代行名義で署名した。しかし、中国、インド、日本、オーストラリアなどの主要な“親石炭”諸国は、この署名に参加しなかった。主要な経済国としては、ポーランドや韓国、スペインぐらいしかなかった。
声明の主な内容は、「パリ協定を受け、私たちの共通の目標を達成するために必須となるであろう、石炭火力発電を取りやめ移行を加速化すること」に参加するというものだ。これに関連して「主要経済国(major economies)は2030年代、そして残りの全世界(globally)は2040年代に、石炭火力発電を廃止しパリ協定に適合する移行を達成するために、10年以内に技術と政策をすみやかに拡大するためのリーダーシップを発揮する(第2項)」という内容が入れられた。ハンガリーやボツワナ、フィリピンなどは、いくつかの条項だけを承認(endorsing)し、インドネシアの場合は第3項を除くとしている。しかし韓国からは、これについての詳しい説明はない。
主要経済国に分類される韓国が、この声明のとおりであるならば、2030年代のうちに石炭火力発電の中止を完了するという意味を読みとることができる。そのため、この日の午前、世界の気候環境団体の活動家の間からは「韓国の脱石炭の期限は2039年」だという見方が広がった。その場合、1日に文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、COP26の基調演説を通じて「2050年までに」石炭火力発電を中止すると発表したが、この事実が正しいのであれば、わずか3日で政府の立場が変わったとみなせることになる「ビッグニュース」だった。
しかし、韓国政府は、脱石炭の期限を明示した声明には同意したことはないという立場だ。この日、本紙が外交部・環境部・産業通商資源部を取材した結果、「クリーン電源への移行の加速化を支持するものであり、脱石炭の期限に同意したものではない。(石炭削減に)努力するという意味」(産業部)、「(2039年までの脱石炭関連の)声明は聞いたことはない」(環境部)、「産業部がこれを支持するはずがない」(外交部)と答えた。
これに先立ち、国際社会には、韓国が、先進国は2030年までに石炭火力発電を廃止する「脱石炭同盟」(PPCA、Powering Past Coal Aliance)の声明に参加するという知らせが伝えられたが、産業部がこれを最終的に拒否したと明らかにしたことがある。今回も産業部は、努力するという大きな前提にのみ同意するだけであり、脱石炭の期限は約束しないと強調した。これについて外交部のある担当者は「(議長国である)英国が成果を出そうと取りまとめていたなか、誤解があったのかもしれない」と説明したが、現場から交渉の過程を伝え聞いた気候環境団体の活動家からは、「政府が何の意味なのかも分からず声明に参加したのではないか」という話も出てきた。