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強制徴用判決「韓米、韓日関係を損なう」…法理よりも安保を優先

登録:2021-06-08 05:57 修正:2021-06-15 15:28
強制労働の損害賠償訴訟却下、最高裁の判例と食い違う判決 
 
「日本企業が敗訴し、賠償が強制執行されれば 
国際的な逆効果をもたらしかねない」との主張も 

民弁など「非本質的・非法理的判断」 
被害者「実に嘆かわしい」
日本による植民地時代に日本に連れて行かれて強制労働を強いられた被害者と遺族が、日本企業16社を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の一審で敗訴した7日午後、ソウル瑞草区のソウル中央地方裁判所で、原告側が判決後、感想を述べている=キム・ミョンジン記者//ハンギョレ新聞社

 7日、ソウル中央地裁が強制労働被害者たちの損害賠償訴訟を却下したことは、日帝の不法行為に責任を問うことができないという内容だけでなく、最高裁の全員合議体の判決に逆らったという点でも注目される。特に、日本企業に対する強制執行が行われれば、日本はもちろん米国との関係も損なわれかねないとして、極めて異例の“司法外的”判断まで示し、法曹界からは非常識的だという批判の声もあがっている。

 他の類似した訴訟のように、今回も1965年の韓日請求権協定で戦犯企業の責任が解消されたかどうかが争点になった。同地裁は「請求権問題は完全かつ最終的に解決された」という協定の文言を根拠に、個人請求権も消滅したという判断を下した。2018年の最高裁(大法院)全員合議体が裁判官7対6の意見で「個人請求権は消滅していない」とした判決と相反するものだ。当時、最高裁は新日鉄住金(現・日本製鉄)に対し、韓国人被害者4人にそれぞれ1億ウォンの支払いを命じる判決を確定した。

 ところが同地裁は「(この事件の判断は)全員合議体の判決の少数意見と結論的に同じだ」とし、当時の個人請求権も消滅したと判断した最高裁のクォン・スニル判事とチョ・ジェヨン判事の少数意見に従った。さらに、全員合議体の結論(多数意見)について「韓国の最高裁の判決であるが、植民支配の不法性とこれに基づく徴用の不法性を前提としており、このような判決は単に国内法的解釈にすぎない」とし、「日本を含め、どの国も自らの植民支配の不法性を認めたという資料は存在せず、国際法的にもその不法性を認めた資料がない」とまで述べた。最高裁の判断を批判するような表現だ。

 別の強制動員事件で被害者側の弁護を担当したイム・ジェソン弁護士は「全員合議体の判決と異なる下級審の判決が出ることもあるが、(最高裁の判決からあまり時間が経っていない)時期であることを考えると、非常に異例の判断だ」とし、「(今回の判断は)全員合議体の少数意見と同じであり、法理に乏しい」と述べた。

 さらに同地裁は、原告側が勝訴して強制執行が実行されると、対米関係が悪化して安保が不安になるという、事件の争点と無関係な主張まで判決文に含めた。地裁は「請求を認容する本案の判決が言い渡されて確定し、強制執行まで完了した場合、国際的にもたらされかねない逆効果」があるとし、「強制執行は国家の安全保障と秩序の維持という憲法上の大原則を侵害する」という判断を示した。判決文は「分断国の現実と、世界4大国の間に位置する大韓民国としては、自由民主主義という憲法的価値を共有する西側勢力の代表国家の一つである日本との関係が悪化し、これは結局、韓米同盟によって韓国の安全保障と直結した米国との関係にも影響を及ぼす可能性がある」と主張した。権利侵害を救済してもらえるどうかを問う司法手続きで争点と関係のない韓米同盟と米日同盟まで判断の背景として提示したのだ。

 同地裁はまた、「請求権協定で支給された3億ドルは過少であるため、被害者の賠償請求権が含まれたとみなすことはできない」という原告側の主張に対し、「当時立ち遅れた後進国の地位にあった大韓民国と、すでに経済大国となっていた日本国の間で成立した過去の請求権協定を現在の物差しで判断するのは誤っている」と反論した。さらに「当時、大韓民国が請求権協定で得た外貨は、いわゆる『漢江(ハンガン)の奇跡』と評価される世界経済史に記録される目覚ましい経済成長に大きく貢献した」とし、日本の“貢献”を強調した。

 民主社会のための弁護士会など15団体は声明を出し「(裁判部が)非本質的・非法理的根拠を挙げて判決を下した」とし、「裁判官としての独立と良心に反する判断をした。民事訴訟で原告の権利を認めると『大韓民国の国家安保、秩序の維持及び公共の福利』が危うくなるという聞いたこともない法理を示し、個人より国家が優先だという論理を何の恥じらいもなく判決文に明示した」と批判した。

 原告らは控訴の意思を表明した。「日帝強制労働被害者正義具現全国連合会」のチャン・ドクファン会長は「裁判結果に怒りを禁じ得ない」とし「本当に嘆かわしい」と語った。

 一方、地裁が判決期日を突然変更したことも、原告らの非難を買った。判決は当初10日に予定されていたが、7日午前、地裁が突然同日午後に変更し、混乱が生じた。そのため、地方に住む被害者の多くは、裁判に出席できなかったという。地裁は「法廷の平穏と安定を考慮して期日を変更した」と説明した。ソウル中央地裁関係者は「新型コロナの状況で高齢の原告が多数集まることを防止するための措置だった」と釈明した。

シン・ミンジョン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/998393.html韓国語原文入力:2021-06-08 02:09
訳H.J

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