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強制労働訴訟で被害者らが「戦犯企業の代理人」務める韓国の法律事務所を非難

登録:2021-06-01 09:41 修正:2021-06-01 10:15
被害者「弁護士は祖先もいないのか」
日帝に強制徴用された労働者たちが、日本企業16社を韓国の裁判所に提訴した損害賠償訴訟の初の口頭弁論が開かれた28日午前、瑞草区のソウル中央地裁で訴訟を起こした当事者たちが裁判終了後、取材陣のインタビューに応じている/聯合ニュース

 日帝強制占領期(日本の植民地時代)の強制労働被害者と遺族などが日本企業を相手取って起こした損害賠償請求訴訟で、韓国の大手法律事務所がこれら戦犯企業の代理人を務めた。

 ソウル中央地裁民事34部(キム・ヤンホ裁判長)は先月28日、強制労働被害者のSさんら85人が日本製鉄(旧新日鉄住金)や三菱重工業などの日本企業16社を相手取って起こした86億ウォン(約8億5000万円)の損害賠償請求訴訟の最初の口頭弁論を開いた。この訴訟は2015年5月に提訴されたが、日本企業が裁判所の書類を受け取らないなど、訴訟に応じなかったため遅延していた。これに対し、裁判所は今年3月に公示送達(書類が相手に渡されたとみなすこと)の手続きを踏み、日本企業は4月末に弁護士を選任して訴訟に応じ、提訴から6年目にして初の裁判が開かれることになった。

 この日、日本企業16社のうち15社の法律代理は、韓国の売上基準で「トップ3」に挙げられる法律事務所の金・張(Kim & Chang)、太平洋(Bae Kim & Lee)、広場(Lee & Ko)が受任し、注目を集めた。金・張は日本製鉄や三菱重工などの日本企業10社の代理人を務め、太平洋は山口合同ガス1社、広場は住石ホールディングスなど4社の法律代理人を務めた。三菱興業は法務法人ドゥレを選任した。

金・張法律事務所=ハンギョレ資料写真//ハンギョレ新聞社

 金・張法律事務所は、以前の強制労働訴訟でも日本製鉄の代理人としてヤン・スンテ最高裁長官(当時)と癒着していたという疑惑を受けている。「司法壟断」疑惑で裁判にかけられたヤン前長官は、2015~2016年に金・張のハン・サンホ弁護士と少なくとも3回面会し、強制労働事件について論議するなど「裁判取引」を行った疑いが持たれている。ハン弁護士の法廷での証言内容によると、当時2人は強制労働事件を最高裁(大法院)の全員合議体に付託することなどを論議したという。検察は、ヤン前長官が強制労働事件を全員合議体にかけ、「被害者に対する戦犯企業の賠償責任を認める」とした最高裁の判決を覆そうとしたとみている。金・張はこの事件のほかにも、「三菱勤労挺身隊事件」をはじめとする多くの日帝戦犯企業関連事件で日本企業の代理人を務めている。

 日本企業側の弁護士はこの日、裁判所が「すでに2回にわたり最高裁の判断を受けた事件であり、法理はすべてまとめられている」とし、来月10日に判決を下すと明らかにすると、弁論期日の追加指定を要求した。しかし、裁判所はこれを受け入れなかった。法廷に現れた被害者はこれらの弁護士に対し「恥を知れ」「弁護士は祖先もいないのか」と叫んだ。

 裁判を終えた後、日帝強制労働被害者正義具現全国連合会のチャン・ドクファン会長は「裁判が6年間引き延ばされ、原告のうち10人余りが亡くなった」とし「これまで何の反応も示さなかった被告側が急に判決を延期してほしいと言うのは正しくない」と述べた。

 最高裁は2018年10月、日帝強占期に日本製鉄で強制労働させられたイ・チュンシクさんら被害者4人が日本製鉄を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の再上告審で、被害者への1億ウォンの賠償を命じる判決を下し、原審を確定させている。全員合議体は「被害者の損害賠償請求権は、日本政府の朝鮮半島に対する不法な植民地支配および侵略戦争の遂行と直結した、反人道的不法行為を前提とした日本企業への慰謝料請求権」だとし「被害者の損害賠償請求権は、1965年の韓日請求権協定の適用対象に含まれるとみなすことはできない」と判断した。全員合議体の判決を受け、本事件の担当判事も被害者に軍配を上げるものとみられる。

シン・ミンジョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/997107.html韓国語原文入力:2021-05-28 17:35
訳C.M

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