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韓国、ワクチン1次接種者は7月から屋外でマスクなし…専門家「変異懸念」慎重論も

登録:2021-05-27 02:59 修正:2021-05-27 08:44
政府の3段階のインセンティブ対策…専門家の評価は分かれる 
「保健学的にインセンティブは妥当」VS「まだ早い」 
防疫緩和誘引策ではなく金銭的インセンティブ活用の提案も
26日午後、光州の北区保健所の接種室で。職員たちがワクチン接種を実施する管内の医療機関に送る最小残余型(LDS)注射器を確認している/聯合ニュース

 韓国政府は、新型コロナウイルスワクチンの1次接種を終えた人に対し、7月から屋外でのマスクの着用を免除するなど、防疫守則を緩和することを内容とする「接種インセンティブ」対策を打ち出した。今回の対策が接種率を高めるかどうかを巡っては、専門家たちの間で意見が分かれている。一部の専門家は、金銭的補償も考慮すべきだと提案している。

 中央災害安全対策本部は26日、予防接種の進捗状況に合わせて防疫措置の内容を変更する、3段階からなる「予防接種完了者の日常回復支援方策」を発表した。同方策によると、来月1日から始まる第1段階の措置として、1次接種者(1次接種から14日経過した人)は、現在8人まで可能な直系家族との会合の制限人数から除外する。1次接種者と接種終了者が老人福祉館と敬老堂で参加できるプログラムの運用を督励するとともに、国立公園などの主要公共施設の入場料や利用料などを割引または免除するか、優先利用権を提供する予定だ。

 上半期の1300万人の1次接種が完了した後の7月から実施される第2段階の防疫措置では、2次接種まで終えた接種完了者は5人以上などの私的な会合の人数制限に含めない。食堂やカフェなどを利用する場合も、1次接種者は屋外利用人数制限から、接種完了者は屋内外の人数制限から除外される。また、1次接種者と接種完了者は、屋外でのマスク着用義務も解除される。公園や登山道などの屋外空間では、2メートルの間隔を空けなくてもマスクなしで散歩や運動が自由にできるようにする。ただし、大勢が集まる屋外集会や行事でのマスク着用義務は維持される。

 全国民の70%以上が1次接種を完了する9月末以降には、第3段階の措置としてコロナ禍以前の日常を回復する方向で社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンシング)を内容とする防疫規則についての再論議に入る。12月以降は、屋内でのマスク着用義務の緩和も検討する。

 専門家たちの反応は分かれた。まず、接種にインセンティブを与えるのは保健学的に当然だとの反応が出ている。高麗大学安山病院のチェ・ウォンソク教授(感染内科)は「黄熱病危険国が入国者に予防接種を要求するように、保健学的にワクチンの接種者と未接種者に対する対応は異ならざるを得ない」と述べた。

 しかし今後は変異ウイルスが韓国国内の流行を主導することが予想されることから、防疫緩和は依然として危険だとの懸念もある。高麗大学九老病院のキム・ウジュ教授(感染内科)は「上半期中に英国変異株が半分以上を占めると予測される」とし「英国も変異対策として、本来は11~12週のアストラゼネカのワクチン接種の間隔を短縮するよう勧告している中で、1次接種だけで屋外でのマスク着用を免除するのは逆行」と述べた。翰林大学江南聖心病院のイ・ジェガプ教授(感染内科)も「現在のところ、1次接種後の防疫守則緩和基準は1次接種の2週間後と定めているが、抗体形成期間を考慮して4週間程度に延ばす必要があると思う」と述べた。これに対し、中央防疫対策本部のパク・ヘギョン防疫支援団長は「英国変異株は現在接種中のワクチンの遮断効果が非常に高い。南ア、ブラジル、インド変異株に対する懸念が残っているものの、まだ大流行と判断するのは早い」と説明した。

 今回の発表が接種率の向上に役立つかどうかについても、評価が分かれた。イ・ジェガプ教授は、「高齢層の接種者に対して敬老堂利用の可能性を広げ、宗教集会参加の道を開くことで、これまで政治的に政府と距離を取っていた一部の宗教界も接種に同調するなど、接種率の向上に役立つと思う」と語った。一方、ソウル大学医学部のキム・ユン教授(医療管理学)は「今回の方策で接種率に大きな変化があるかは分からない」とし「接種が忌避される根本理由である重症の異常反応についての不安が和らぐよう、異常反応の管理と支援を強化することの方が重要だ」と語った。

 まかり間違えば流行を拡大させかねない防疫守則の緩和ではなく、金銭的補償を行うべきだとの提案もなされている。嘉泉大学医学部のチョン・ジェフン教授(予防医学)は「今のように規模は小さいながら流行が拡散しており、接種率が低い局面においては、防疫緩和には慎重に取り組まなければならない」とし「接種と災害支援金の関係づけや、地域貨幣の提供、宝くじの発行などの前向きな経済的インセンティブの提示は、防疫に影響を与えずに接種率を高めうる方法」と述べた。イ・ジェガプ教授も、「少額でも交通費という名目で現金や地域商品券などによる経済的補償を行うことを、今後も検討すべきだ」と語った。これに対しチェ・ウォンソク教授は、「少額では接種率に大きな影響を及ぼしにくいし、ややもすればワクチンの信頼度を落とす可能性があるため、慎重に行うべき」と語った。

キム・ジフン、ソ・ヘミ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/health/996825.html韓国語原文入力:2021-05-26 19:20
訳D.K

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