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製造網が弱いモデルナ、20億回分のワクチン原液追加生産に向け韓国は手を組むか

登録:2021-05-25 10:49 修正:2021-05-25 12:43
サムスンバイオにワクチン「瓶詰め」のみ委託したモデルナ 
「単純工程」に残念さにじむ中、新たなチャンスに注目 
 
来年、原液10億回分→30億回分に目標を上乗せ 
原液委託会社のロンザの生産目標は年間10億回分 
モデルナ、主要技術めぐり韓国政府の支援を暗に要求
mRNAワクチン開発に成功した米国系バイオテクノロジー企業「モデルナ」のロゴの前に試験管が並んでいる/ロイター・聯合ニュース

 「追加投資で製造施設を増やし、2022年には新型コロナワクチンを最大30億回分まで供給できると予想している」

 米国系グローバルバイオテクノロジー会社のモデルナが、4月29日に発表した内容だ。2010年に創立されたモデルナは、これまで独自の製造施設というものがない研究開発中心の企業だった。172年前に設立され、世界のいたるところに量産体系と流通網が構築されているファイザーとは、歴史や規模では比べようがない。そのモデルナが昨年、mRNAコロナワクチンの開発に成功し、急速に事業規模を拡大している。モデルナは今年の目標生産量を5億回分から10億回分に、来年は10億回分から14億回分に増やすと今年2月に発表した。それから程なくして、来年の生産量目標をまた30億回分に引き上げたのだ。

 先日のサムスンバイオロジックスとモデルナ間での「ボトリング」(Fill-Finish、充填・仕上げ)生産契約はこうした流れの中で成立した。今月22日(現地時間)、米ワシントンで両社が委託生産契約を確定し発表したことについては、一部からは惜しむ声も上がっていた。世界1位のバイオ医薬品受託生産会社であるサムスンバイオが、“単純な下請け作業”にすぎない工程のみを引き受けることになったという評価だ。バイオ業界のある関係者は24日、本紙に「医薬品のボトリングは紙箱に品物を入れて包装するような単純なものではないが、“規模の経済”が力を発揮する領域だ。世界1位の生産力を持つサムスンバイオなら交渉力を発揮して原液生産に一部でも関与する事業を獲得できるのではないかと期待していた」と話した。

 しかし、モデルナがいま最も急務だったのはほかでもない「瓶詰め」であることが分かった。モデルナは臨床第1相を行っていた昨年5月、スイスのロンザといち早く原液生産の委託契約を交わした。当時の発表によると、ロンザはコロナワクチンを年間10億回分生産するだけの力量を備え、モデルナは今後10年間、mRNA技術に基づく医薬品とワクチン原液生産をロンザに任せることを決めた。長期的な観点から戦略的提携を結んだわけだ。昨年5月といえば、国内ではコロナワクチンへの関心が高くなかった時期だ。

 その後、モデルナは昨年6月に米国のキャタレント、7月にスペインのロヴィ、12月にフランスのレシファーム、今年3月に米国のバクスターなどの、世界的な受託生産企業と相次いで「ボトリング」契約を結んだ。原液生産は順調だったものの、瓶詰めの段階で「ボトルネック」現象が起きたからだ。このため今年2月には米国への供給分が一部遅れる事態まで発生した。モデルナのステファン・バンセル最高経営責任者(CEO)は2月の報道資料で、「最近のボトリング工程で生じた問題点の発生を最小化するため、バイアル(瓶)当たりの注入容量を増やすことを検討している」と言及している。

 今回のサムスンバイオのボトリング生産参加はこれに加え、モデルナが欧米以外の地域で新たに量産体系を整えなければならないという必要性もあいまって実現したものとみられる。特に韓国政府が「ワクチンハブ」構想を提示したため、双方の利害が一致した部分もあり得る。

 さらに、モデルナが最近提示した「来年30億回分を生産」という目標の中には、原液生産施設を追加で構築する構想もあるとの観測が出ている。先に発表されていたように、ロンザが年間10億回分の規模を生産するとしても、残り20億回分の物量をめぐっては新たな参加の機会が生じる可能性があるのだ。バンセル氏は最近、国内の放送局とのインタビューで、「モデルナはサムスンに技術を移転する」としながらも、具体的な技術内容については言及しなかった。さらに「韓国政府はこのような過程を円滑に進める上で大きな役割を果たすだろう。文在寅(ムン・ジェイン)大統領と担当部署がそのような働きかけをするものと確信している」という付け加えた。これは、モデルナが韓国に主要技術を移転する条件で、韓国政府の全面的な支援をそれとなく要求するシグナルとも読み取れる。

 これについてバイオ業界の別の関係者は「ロンザと初めて原液生産契約を交わした当時は、自社に製造施設がなかったモデルナが非常に焦っていたようだ」とし「状況が変わったモデルナが直接投資を秤にかけてかなりの要求をする可能性がある」と述べた。保健福祉部のソン・ヨンネ報道官はこの日、モデルナが韓国にワクチン生産施設関連の直接投資を行う場合、「敷地の確保と医薬品管理体系の中での審査・許可などについて、国内の法律が認める範囲内で最大限の便宜を図る」と述べた。

チェ・ハヤン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/health/996502.html韓国語原文入力:2021-05-25 07:55
訳C.M

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