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「チョ・グク事態、“民主化世代”の限界を露呈」進歩派の知識人組織、新たな“宣言”

登録:2021-02-09 10:15 修正:2021-02-09 11:54
[創立33年目に「民教協2.0」宣言] 
チョ・グク事態で民教協の亀裂が表面化 
言葉と行動の不一致に怒りと失望 
これを克服し、民主平等社会を実現 
 
世代とジェンダー、不平等の問題に 
敏感な視覚なしでは、説得力がない 
 
大学内の身分が安定した知識人は少数 
大半が非正社員…各自が「生き残り」汲々 
いまや新しい運動主体を立てる時
民教協が1月1日、国会前で年頭記者会見を開いている=民教協提供//ハンギョレ新聞社

 民主化抗争の熱気が高かった1987年、大学教授たちも「大学と社会の民主化」を目標に「民主化のための全国教授協議会」(民教協)という組織を作った。「民教協」はその後長い間、韓国社会で「進歩的な知識人」とその社会運動を代表する看板だった。しかし「87年体制」に相次いで亀裂が入り、民教協も他の社会運動組織と同じく危機に陥って久しい。2019年に名称を「民主平等社会のための全国教授研究者協議会」に変更したが、変化はあまり感じられなかった。

 そんな民教協が2021年を迎え、「民教協2.0宣言」を公式発表し、革新作業に着手する。不平等が深刻化し、社会危機が深まる中、新たな民主平等社会を築くための教授・研究者たちの実践が求められており、崩れゆく大学と研究共同体を早急に再建するという趣旨の宣言だ。ハンギョレは民教協のカン・ミョンスク(培材大学)、キム・ジンソク(ソウル女子大学)の両常任共同議長とチョン・ジョンファン(成均館大学)学術教育委員長に対面・書面インタビューを行い、宣言の背景と今後の計画について聞いた。

左から民教協のカン・ミョンスク、キム・ジンソク常任共同議長とチョン・ジョンファン学術教育委員長//ハンギョレ新聞社

 彼らは2019年のチョ・グク法務部長官任命過程で起こった「チョ・グク事態」を、民教協内部の亀裂が表面化した事件として挙げる。民教協の会員のうち「チョ・グク世代」に属する教授たちは検察改革の正当性を掲げて「チョ・グク支持」を主張し、集団行動も行った。しかし、その後の世代では「チョ教授が特に違法なことを犯していないとしても、その家族があらわにした問題は韓国の教育と社会不平等の核心に関わることであり、これを直視しなければならない」(チョン・ジョンファン)という問題意識が大きかったという。

 これは、これまで「民主化」という言葉である程度一つに束ねられていた進歩的な教授・研究者が、さまざまに分化していることを示している。キム・ジンソク教授は「チョ・グク問題は民教協内部に存在する異質性をあらわにする一方で、『87世代』が持つ価値と哲学の限界を表した事件として作用した。教授・知識人は非常に大きな特権であるにもかかわらず、それが問題になることを感じることができないほど鈍くなっていた」と指摘した。アイデンティティに対する認識の変化は、目指す地点の変化につながる。「民主化」というこれまでの目標に「平等」を加えようとする動きが加わったのだ。宣言は「民主平等社会の実現」を目指すべきものの一つとして提示し、「世代とジェンダー、不平等の問題に対する敏感な見方なしには、説得力のある市民運動も新しい民主主義もないということを深く認識し、市民社会運動の主体を形成するために共に努力してく」と述べた。

 彼らは「87年体制の大学と知識人像はすでに現実世界にはない」という点も強調した。かつては知識人としての苦悩と省察を追求するうえで、安定した身分や社会的名望などが裏付けられていたことは見過ごすことはできないということだ。最近の大学では、身分の安定した知識人はごく少数だ。大半は非正規の教授・研究者としての地位と賃金の差別構造の中で、それぞれが生き残る方法を探る境遇へと追い込まれている。宣言は「首都圏と国立大学の一部の正規職教授は安穏と権勢を享受しているが、これは非正規教授や地域および女性研究者に対する差別と搾取を対価にしたもの」だと指摘した。従来の「男性・首都圏・正規職教授」から脱し、「若手・地域・女性研究者・独立研究者」などの新たな主体を形成することを重要な課題として挙げた。

 宣言に続く具体的な活動として、民教協は今月末ごろに「時局大討論会」を開く一方、「韓国社会と知識人」をテーマにした連続討論会も計画している。研究者・非正規職・女性分会をそれぞれ作るなど、組織強化に集中し、文在寅(ムン・ジェイン)政権の改革課題に対する評価、大統領選挙に向けた社会改革の議題提案なども準備する。カン・ミョンスク教授は「韓国社会では、言葉で社会に貢献しようとした人々が行動でこれに一致する姿を示せなかったことに対する怒りと失望が大きい。これを克服し、研究者の力量が十分に発揮されるよう努力していく」と述べた。

チェ・ウォンヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/schooling/982406.html韓国語原文入力:2021-02-09 07:26
訳C.M

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