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[コラム]「チョ・グク守護」のフレームから抜けださねばならない

登録:2020-12-29 06:36 修正:2021-01-03 06:39

 私はキリスト教信者ではないが、聖書の言葉にしばしば感動させられる。23日にチョン・ギョンシム教授が懲役4年を言い渡され法廷拘束された時、この言葉が思い浮かんだ。「順境の日には楽しめ、逆境の日には考えよ。神は人に将来どういう事があるかを、知らせないために、彼とこれとを等しく造られたのである」。知恵の王ソロモンが書いたという『伝道の書』7章14節だ。この言葉はある知人のエピソードを通じて知ることになった。2017年3月31日、朴槿恵(パク・クネ)前大統領が拘束された翌日、彼は母親から1本の電話を受けた。熱心なキリスト教信者である彼の母親は、自ら用意した聖書1冊を朴前大統領が収監された拘置所に差し入れてほしいと言った。検事である息子ならその程度の“請願”は聞き入れることができると思ったのだ。彼は「拘置所で聖書は収容者が望めばいくらでも手に入れられる」と母親に伝えた。すると母親は「(朴)大統領にぜひ読んでほしい言葉を思い出したからだ。おまえが葉書にその言葉だけでも書いて送ってくれたらいい」と頼んだ。彼の母親が朴前大統領に聞かせたかった言葉が、まさに『伝道の書』7章14節だ。

 キリスト教信者ではない私の単純な見方でも、この言葉の重点は「順境の日には楽しめ」には置かれないようだ。物事がうまく進む時に楽しむのは自然なことだからだ。ソロモン王が子孫に残したかった言葉は、「逆境の日には考えよ」ではないだろうか。困難で大変な状況に置かれた時、弁解したり復讐心に燃えたりせずに自らを省みるのは、かなりの経験を積まなければ容易ではない。その苦難が、他人が意図的に自分に加えたものかのように見える時は、より一層そうだ。チョン・ギョンシム教授が法廷拘束された日、夫であるチョ・グク前法務部長官が示した反応にもよく現れている。彼は自分のツイッターに「チョン・ギョンシム教授の一審判決の結果、あまりに大きな衝撃です。私が長官に指名されてからは、このような試練は、もしかしたら避けられない運命になったのかもしれません」と書いた。残念ながら、自らを省みる態度からはかけ離れた文章だ。彼は、法務部長官に指名されなければ、妻が監獄に行くことはなかったはずだと信じているようだ。彼の話は当たっているともいえる。しかし、他の人はともかく、彼はそのようには言ってはならないようだ。まず、自身に「心の借金をした」という大統領に対する礼儀ではない。チョ前長官は、「機会は平等に、過程は公正に、結果は正義になるだろう」と宣言した文在寅(ムン・ジェイン)政権の象徴だった。しかし、チョン教授の500ページを越える判決文には、平等や公正、正義とは正反対の事実があふれている。検察の“一方的な主張”ではなく、法廷で公開された証言と証拠により確認されたものだ。チョ前長官が直接、文大統領の公言を破ったものもある。娘の内申点(スペック)のために自らが携わっていたソウル大学共益人権法センターの虚偽のインターンシップの確認書を直接発給したことは、あまりにも残念だ。彼はPE(プライベート・エクイティ)ファンドの横領容疑は無罪で幸いだと言ったが、横領に劣らない重大な違法行為も少なくない。彼が民情首席になると、チョン教授は財産登録や白紙信託を避けるために借名で株式取引を行った。「妻の財テクについてはよく知らない」という彼は、配偶者の株式投資により憲法裁判所の判事候補者が苦境に立たされたのを見て、妻のデリバティブ取引を止めさせた。妻の財テクが公職者倫理法違反の可能性があることを知っていたものとみられる。

 「チョ・グク守護」の先頭に立った与党側の政治家たちは今、「ユン・ソクヨル弾劾」を叫ぶ。彼らは相変わらずチョ・グク氏のフレームに閉じ込められている。そこから抜け出すことができなければ、社会全体が困難な状態が続くだけだということを悟る時になったというにもかかわらず。任期後半の検察総長は放っておけば力は弱まる。そのような“自然法則”を無視し、ユン総長に対する復讐心だけを燃やした結果、任期末の総長を野党の有力な次期大統領候補にした。逆に文大統領はレームダックに陥った。酷い逆説だ。ソロモン王の言葉は、反省しなければ苦難の悪循環を断ち切れないという恐ろしい警告だ。私の知人は結局、朴前大統領に葉書を送らなかった。彼女は何があっても反省するようではなかったからだ。政権与党はどうだろうか。

//ハンギョレ新聞社

イ・チュンジェ|社会部長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/976249.html韓国語原文入力:2020-12-29 02:42
訳M.S

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