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全斗煥被告に有罪、裁判所「軍人が国民を殺傷」… 新軍部の「自衛権論理」崩れる

登録:2020-12-01 03:02 修正:2020-12-01 09:21
光州地裁、5・18ヘリコプター射撃認める…40年間の論争が終結
1980年5・18民主化運動当時、光州上空を飛行する戒厳軍のUH-1Hヘリ=5・18記念財団提供//ハンギョレ新聞社

 5・18光州(クァンジュ)民主化運動から40年を経て、戒厳軍のヘリコプターによる射撃が実際にあったことを裁判所が認めた。これで、新軍部が光州虐殺を正当化するために40年間にわたって掲げてきた「自衛権論理」も崩れることになった。

 30日、光州地裁刑事8単独のキム・ジョンフン判事は判決で、故チョ・ビオ神父を非難した疑い(死者名誉毀損)で起訴されていた全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領(89)に懲役8カ月、執行猶予2年を宣告し、「1980年5月21日と27日にヘリによる射撃があったと考えるのが妥当」と述べた。

 キム判事は「死者名誉毀損罪は、虚偽事実の摘示が証明されなければ成立しない。この裁判の争点である5・18ヘリ射撃を調べると、チョ神父が見たという5月21日には500MD武装ヘリが出動しており、多数の目撃者が存在する。全被告側は、目撃したのは一部の市民のみということを根拠に、チョ神父の証言は虚偽だと主張した。当時、光州市街地にいたすべての人の証言が得られているわけではなく、検察も証言が重複する証人は申請しなかったと述べているため、この事件の結論に大きな影響は及ぼさない」と説明した。

 湖南(全羅道)地域戒厳司令部の役割を果たした戦闘兵科教育司令部が1980年に作成した「光州騒擾事態分析(教訓集)」に記載された「油類および弾薬の高い消耗率」については、「航空教範を参考にしたようにも見えるものの、実際の状況についての分析を記載したものと考えた方が妥当だ。教訓集はヘリ射撃の有力な証拠」と述べた。

 またキム判事は「チョ神父が直接目撃したわけではないが、5月27日の尚武忠正作戦の際の全日ビルに向けたヘリ射撃部分についても、ビル10階の床に分布する弾痕はヘリからの射撃でなければ説明できない。全日ビル内部では交戦がなかったという戒厳軍の陳述もあり、全日ビルが最も高い建物だった状況を考慮すれば、地上軍による外部からの射撃は排除できる」と根拠を挙げた。

 キム判事は、全被告が回顧録で、ヘリによる射撃を見たと証言した故チョ・ビオ神父について、「聖職者という名に恥ずべき破廉恥なうそつき」と非難したことは意図的だと判断した。キム判事は「軍は5・18当時、射撃に正当性を付与するために自衛権発動を主張したが、ヘリ射撃は自衛権にふさわしくなく、国民を守るべき軍人がむしろ国民を殺傷しようとしたという証拠」だとし「被告人は未必の故意で、ヘリ射撃がなかったという自らの主張が虚偽だと認識しつつこの事件の回顧録の争点部分を執筆したと認められる」と指摘した。

 全被告は、大統領退任30周年を迎えた2017年4月に出版した回顧録で「5・18は北朝鮮軍が介入した反乱であり暴動」「5・18当時のヘリ射撃の目撃談は虚構」「5・18鎮圧は崔圭夏(チェ・ギュハ)大統領の指示」など、自分は5・18とは無関係で、戒厳軍による光州鎮圧は正当だったと述べている。全被告はまた、自らを「死者を清める儀式の供え物」と犠牲者であるかのように表現し、光州市民の怒りを買った。特にヘリ射撃を証言したチョ神父やアーノルド・ピーターソン牧師については「仮面をかぶったサタン」「破廉恥なうそつき」といった暴言も躊躇せず書いた。

 これに対し5・18団体とチョ神父の遺族は、回顧録の出版直後に全被告を死者名誉毀損の疑いで告訴し、同年6月には回顧録出版および配布の禁止を求める仮処分を申し立てるとともに、損害賠償を請求した。2018年、光州地裁民事裁判部は5・18団体を支持し、全被告に総額7000万ウォン(約659万円)の賠償を命じた。また、問題となる回顧録は、問題となる内容69カ所を削除しなければ出版、印刷、発行、配布できないとした。結局、それらの内容の記された回顧録は、現在販売されていない。

 検察は、全被告がヘリ射撃を知っていたにもかかわらず、チョ神父を故意に非難したとして、告訴状の提出から約1年後の2018年5月、死者名誉毀損の疑いで全被告を起訴した。しかし全被告は、翌年1月7日まで5回にわたり公判に出席せず、裁判所が強制召喚に向けて拘引状を発行したことで、ようやく昨年3月に裁判所を訪れた。今年4月27日の担当判事の変更により公判手続きが更新されたことで、再び光州地裁に出席している。

 今回の司法判断により、新軍部が光州虐殺を正当化するために40年間にわたって主張してきた、いわゆる自衛権論理は崩れたことになる。5・18民主化抗争を扱った作品『死を越えて、時代の闇を越えて』の著者イ・ジェウィさんは、「今回の裁判は、全氏が虐殺現場の光州で有罪判決を受けたという歴史的象徴性がある。ヘリ射撃は事前に弾を装填するなどの準備が必要であり、市民に対する一方的虐殺行為であるため、自衛権論理とは合わない」とし「1997年に最高裁は、市民18人が死亡した5月27日の全羅南道庁鎮圧作戦のみを内乱目的殺人罪と判断したが、今回の判決で5・18期間のすべての死者が殺人罪の犠牲者となったことになる」と述べた。

キム・ヨンヒ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/area/honam/972170.html韓国語原文入力:2020-11-30 17:28
訳D.K

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