基本所得党の報道担当シン・ミンジュさん
ソルリの影響で「脱ブラ運動」公言後、
数万件の悪質コメント…「殺すぞ」脅迫も
大学院生のWさん
堕胎罪の憲法不合致決定のときなど
女性イシューに声をあげたソルリが「ありがたかった」
会社員のLさん
芸能記事に刺激的な反応は変わらず…
1年間、韓国社会は少しも変わらない
「みんなのフェミニズム」キム・イェウン代表
連帯が重要だということを知り
ソルリのように生きる女性を見たら必ず応援する
歌手であり俳優のソルリ(本名チェ・ジンリ)が亡くなって1年が過ぎた。韓国社会で「ソルリ」の存在は他の20代の女性アイドルとは少し違った。彼女は「揉め事だらけ」のように思われた。時には「舞台で最善を尽くさなかった」と言って話題にのぼったり、恋愛の事実を明らかにしたり、テレビで悪い言葉を使った。ある人々には「亀裂」と受け取られたかもしれない。ただ、窮屈な「ブラジャー」をしなかったという理由だけで。
「人生はソルリのように」。ソルリが生きていた頃、20代前後の女性たちの間で流行のように広まったスローガンだ。1年前に彼女が突然この世を去った時、若い女性たちが絶望と怒りを感じた理由だ。ソルリを応援していた女性たちは今、彼女が残した亀裂と向き合っている。1周忌を迎えた13日、ハンギョレのインタビューに応じた20代の女性たちは「『私』を超え『私たち』を考えるようになった」と口をそろえて言った。
基本所得党の報道担当のシン・ミンジュさん(26)は、ソルリの影響でブラジャーをつけない「脱ブラ運動」を始めた。ソルリのようにブラジャーを「アクセサリー」として語る女性芸能人を見たのは初めてだった。「脱ブラ運動」に関してシンさんがあるメディアのインタビューに応えた後、シンさんを攻撃する数万件の悪質なコメントが上がりはじめた。容姿を指摘し体つきを品定めするのをはじめ、具体的な方法を書いて「殺すぞ」と脅迫するコメントもあった。「私の体、私の人生は私が主体的に決める」という当然の宣言に、このような苦痛がついてくるとは思わなかった。「『ソルリ ノーブラ』が48時間リアルタイム検索ワード1位となる国に、私だけが暮らしているのではなくソルリも暮らしていた。そのことに考えが至っていなかったと思い申し訳ない気持ちになりました」
昨年4月に憲法裁判所が堕胎罪を憲法不合致と決定したとき、ソルリは「栄光の日」と言って支持した。大学院生のWさん(25)は、そのような女性イシューに公に声をあげたソルリがいつもありがたい存在だった。芸能人である以前に、女性を取り巻く抑圧と差別に敏感に反応するという点で、同じ世代だという同質感も感じた。
「若い女性は『2等市民』だ」。Wさんはソルリを通じてそれに気付いた。「俳優イ・ソンミンをソルリが『ソンミンさん』と呼んだことで、ソルリはネットユーザーらに叩かれました。礼儀がなってないと言って…。放送でも他の人たちがソルリの行動を問題視するのが目に見えました。とても孤独だったと思います」。マスコミでソルリが「問題のある存在」として描写されるときは「問題はソルリではなく、この社会だ」と反発したかったが、それができなかった。Wさんはソルリが亡くなった後、自分が「傍観者」のように感じると語った。Wさんはこう語った。「露骨に『フェミニストとして闘う』と言わなくても、ソルリだけの平和な方法で世の中を変えようとしたことが、今になって広く取り上げられていますよね。今はそんな人たちと連帯しなければ、と誓います」
会社員のLさん(30)は「この1年間、韓国社会は少しも変わっていない」とため息をついた。ソルリが亡くなった後、ポータルサイトの芸能記事からはコメント欄が消えた。しかし今年8月、ある女性アイドルは「フェミニスト」と書かれたTシャツを着ていたことで話題に上げられた。「コメントが消えた後、刺激的な反応をいちいち確認しないようにはなったけれど、非難する雰囲気まで消えたわけではない。社会はうんざりするほど変わっていないという気がしました」
「みんなのフェミニズム」代表のキム・イェウンさん(24)は「ソルリを規定しようとした私たちの欲望を振り返らなければならない」と話した。キムさんは、ソルリが立体的な“ひと”だったからこそ良かったと話した。「意図していても意図せずとも、ただ自分の人生を平然と生きていく姿がとても力になりました」。ソルリは亡くなる2カ月前、インスタグラムに直筆の手紙を載せ「人生は私一人で生きていくのではないという気がします」と語った。それから1年が経ち、キムさんも似たようなことを考えている。「連帯が本当に重要だということを知りました。これからはソルリと同じような道を歩む女性を見たら、大きな力にはなれないとしても、必ず応援を送らなければと誓います。 私たちは一人で歩いているのではないのだから」