元日の昼、京畿道坡州市(パジュシ)のムンサン自由市場。「DMZ観光、豚コレラで暫定中止」という案内文が貼られていた。観光客の足が途絶えた商店街は半分ほどがシャッターを閉め、寒風ばかりが漂っていた。洋服店や食堂の前には「洋服を買うとトンネル観光無料」「DMZトンネル観光特別メニュー」などの広告が貼られていたが、客はほとんど見られなかった。たまにDMZ観光中止の事実を知らずに訪ねてきた外地人が見受けられたが、すぐにがっかりして引き返した。
政府がアフリカ豚コレラ(ASF)の拡散を防ぐために昨年10月から坡州市の非武装地帯(DMZ)一帯の観光を全面中止し、DMZ観光に頼って生活する民統線(民間人出入統制線)の村やムンサン伝統市場が大きな打撃を受けている。
零細商人108人で構成されたムンサン自由市場は、2015年4月から坡州市が「文化観光型市場育成事業」として、1万ウォン以上の商品を購入すると第3トンネルと都羅山(トラサン)駅、都羅展望台、統一村を見学できる観光バスを1日3回ずつ無料で運行し、大きな人気を博した。市場を訪れた観光客は、昨年には2万人など、この4年間で5万人を超えた。このように内国人・外国人観光客が1日100人以上常にに訪れると、坡州市は昨年、観光バスの運行を2回から3回に増やした。それに伴い商店街の売上げも20~30%ほどアップした。
しかし昨年9月、坡州地域にアフリカ豚コレラが発病し、試練が始まった。政府は昨年10月2日からDMZ観光を中止し、坡州、漣川(ヨンチョン)、金浦(キンポ)など接境地域の養豚を全て殺処分した。そのため、観光中止の措置はすぐに解除されると思われた。しかし、DMZ周辺の野生のイノシシから豚コレラウイルスが検出されると、この処置は期限なしに長引いている。
ムンサン自由市場のファン・ギュスク(57)事務長は「景気が悪いうえ、近くの坡州LGディスプレイの削減の影響などが加わり、昨年同期に比べると、商店街の平均売上高は40%ぐらい減少した。賃貸料を払えない商人も増えている」と語った。ここで24年間食堂を経営してきたソン・マンボンさん(90)は「観光シーズンには1日50万ウォン(約4万6千円)分以上売ったが、今は10万ウォン分も売れない時が多い」と話した。
住民たちは政府の観光禁止措置を理解できないと訴える。同市場の商人会長のキム・ヨンハさん(75)は「軍人と農民数千人は民統線を自由に出入りするのに、コンクリートの上だけを通る観光客だけを禁止する理由がわからない。市や国会議員、環境部、農林畜産食品部、国防部、統一部など残らず訪ねていったが、とにかく待てという。庶民は死にかけているのに、誰も責任を負おうとしない」と不満を吐露した。
統一村の食堂や旅行会社、中小企業など、DMZ観光関連の従業者も生存の危機は同じだ。
長湍(チャンダン)豆チョコレートや観光おみやげを作って統一村などに納品してきた社会的企業兼女性企業人の「DMZドリームフード」のコン・ジエ代表(46)は、「最盛期の10~11月に工場稼動も止め、賃貸料も払えずにいる。融資を受けてやっと職員の給料を払っているが、8人のうち2人が退職した。豚農家はそれでも補償を受けられるが、私たちは倒産を待つばかりの状況だ」と話した。
統一村里長団・青年会や長湍豆村食堂、ムンサン自由市場商人会、臨津閣(イムジンガク)商人会、都羅山駅記念品ショップ、DMZ観光旅行会社などで構成された「アフリカ豚コレラ被害状況対策委員会」は先月31日、臨津閣で対策会議を開き、政府に早急な観光再開と被害補償を求めた。彼らは今月8日から毎週水曜日に統一大橋の前で集会を開くことにした。
坡州市のアン・スンミョン観光課長は、「中央省庁に観光再開を建議し続けているが、政府は柵を張ってイノシシを全部捕まえた後に再開放を検討すると言っており、いつ観光が再開されるか分からない状況だ」と話した。