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結婚移住女性に対する家庭内暴力を助長する夫の「身元保証」要求

登録:2019-07-08 08:29 修正:2019-07-09 09:17
無差別に暴行する映像で社会の怒り呼び、夫に緊急逮捕令状 
人権委、2017年の調査で移住女性10人のうち4人が家庭暴力被害 
家父長的な認識のうえに「国籍取得の過程で身元保証」が足かせ
K氏(36)が全羅南道霊岩郡の自宅でベトナム出身の妻のAさんを暴行している映像の一場面=SNS映像よりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 結婚移住女性が夫から無差別な暴行を受けた映像がソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に広がり、社会の怒りが広がっている。家父長的な認識だけでなく、国籍取得の過程で依然として夫の「身元保証」を要求する現実が結婚移住女性たちの人権侵害を助長、放置しているという指摘が出ている。

 全羅南道霊岩(ヨンアム)警察署は今月6日、特殊傷害と児童福祉法違反などの容疑でK氏(36)を緊急逮捕した。K氏は4日の夜9時から3時間にわたり、霊岩郡の自宅でベトナム出身の妻のAさん(30)を拳や足、焼酎びんで殴り、肋骨を折るなど全治4週間以上の傷を負わせた疑い。K氏は2歳の息子を抱いているAさんを殴り、児童虐待容疑も適用された。警察はAさんと息子を保護センターに移し、加害者と分離した。

 Aさんは常日頃の夫の暴行に耐え切れず、居間のテーブルの上のおむつかばんに自分の携帯電話を乗せておき、映像を撮影した。Aさんは5日、夫の暴行場面を映した動画を知人に送り、これを伝えられた知人らが警察に申告した後、SNSに動画を上げた。警察は6日午後5時、動画を確認して3時間後に夫を呼んで調査した後、緊急逮捕した。警察は7日「事案が重大で報復が懸念される」とし、K氏に対して拘束令状を申請した。

 Aさんのような結婚移住女性の家庭内暴力被害は一般的だ。昨年6月、国家人権委員会(人権委)が発表した「結婚移住女性の滞在の実態」資料によると、結婚移住女性920人のうち42.1%にのぼる387人が家庭内暴力を経験したと答えた。家庭内暴力被害の類型(複数回答)を見ると、被害者のうち81.1%(314人)が家庭でひどい暴言を吐かれるなどの心理・言語的な虐待に苦しみ、67.9%(263人)は性行為を強要されたり性的な虐待を受けた。「凶器で脅された」という回答も19.9%(77人)にものぼった。

 2007年に韓国人男性と結婚したカンボジア出身のソッカさん(仮名)も、結婚3年目から夫の暴力に苦しんだ。夫は結婚当初「畑で一緒に働くために俺が金を払ってお前を連れてきた」など暴言を浴びせ、髪の毛をつかんで壁に押しつけたり、物を投げつけるなどの暴力が日常になり始めた。小学校入学を控えた子どもが泣きながら止めると、夫はテレビの音を大きくしてソッカさんを殴った。村人たちに助けを求めても、「お前が我慢しなきゃ」という言葉ばかり返ってきた。ソッカさんは韓国に来て10年になった頃、夫を説得して国籍申請をした。しかし、夫はその後ソッカさんが保護センターに逃げ込むと国籍申請を取り消してしまった。

 専門家たちは、結婚移住女性に対する暴力の原因として、まず韓国社会の家父長的な文化を挙げた。韓国移住女性人権センターのカン・ヘスク共同代表は「夫婦間の権力が平等でない韓国社会の性差別問題に加え、国際結婚カップルの場合、平均10歳以上の歳の差による上下関係が生じているため、韓国人の夫が外国から来た若い妻を家族構成員として認めなかったり、『うちに入れてやったのだから自分の思い通りにしてもいい』というふうに考える場合が多い」と指摘した。

 結婚移住女性が国籍を取得する際、韓国人配偶者が全面的な権力を行使するようにした法条項などによって移住女性たちが配偶者に従属され、このような従属関係が家庭内暴力被害をさらに増大させるという批判も出ている。

 人権委は2011年、結婚移住女性が韓国内で滞在延長許可を受ける際に韓国人配偶者が「偽装結婚防止」の趣旨により身元保証書を義務的に提出することを明示した出入国管理法の施行規則を削除することが望ましいという意見を法務部に表明した。その後、身元保証書提出の規定は廃止されたが、結婚移住女性が国籍を取得する前に韓国に滞在するためビザの延長や永住権の申請などをする時、婚姻関係の事実などに対する韓国人夫の「身元保証」は依然として必要だ。韓国人配偶者が一方的に身元保証を撤回すれば、移住女性は滞在が難しくなる。大邱移住女性保護センターのコ・ミョンスク所長は、「結婚移住女性である妻が国籍を取得したら逃げるだろうという考えのために、韓国人の夫が故意に国籍取得をサポートしないことが少なくない」とし、「少なくとも子どもが小学校就学年齢になったら婚姻の真正性を認め、移住女性が単独で国籍を取得できるよう制度を改善しなければならない」と述べた。

ソン・ダムン記者、霊岩/アン・グァンオク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/women/900828.html韓国語原文入力:2019-07-07 20:51
訳M.C

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