韓国人と結婚し京畿道に住んでいるリベリア出身のTさんは昨年11月、バスで不快な経験をした。隣に座った60代の男性のK氏がTさんにセクハラをし、乗客が止めるとTさんを指差して、「こいつらがここにいるのは不法だ」と言った。Tさんは未登録外国人ではなく結婚ビザ(F6)の発給を受けて韓国に住んでいるが、K氏の目に外国人は全て「未登録の移住労働者」に見えたのだ。
T氏はこの経験を、同月30日に京畿道外国人人権支援センターが開催した「人種差別の実態と差別解消に向けた政策案」シンポジウムの質疑応答の時間に話した。この日のシンポジウムに討論者として参加したウォンゴク法律事務所のチェ・ジョンギュ弁護士が、Tさんのエピソードに耳を傾けた。チェ弁護士はTさんの被害者代理に名乗り出、K氏を侮辱罪で告訴した。簡単ではなかった。K氏は警察調査で全ての疑いを否定し、警察は性的暴力犯罪の処罰などに関する特例法の公衆密集地におけるわいせつ行為の疑いは認めたが、侮辱容疑は不起訴意見で検察に送致した。しかし検察は4月、わいせつ行為だけでなく侮辱容疑も適用してK氏を裁判にかけた。
水原(スウォン)地裁安山(アンサン)支部刑事8単独のキム・ドヒョン判事は5月、わいせつ行為・侮辱容疑を認め、K氏に罰金200万ウォン(約20万円)を言い渡した。キム判事は「被告人は2016年11月にバスに搭乗し、自分の隣に座っていた被害者に声をかけわいせつ行為を行った」とし、「乗客から制止を受けると『あいつらがここにいるのは不法』だと言い、下車した後も雑言を浴びせ被害者を侮辱した」と判断した。
裁判所はK氏に刑事責任だけでなく損害賠償責任まで求めた。水原地裁安山支部民事11単独のチョン・イニョン判事は、TさんがK氏を相手に起こした損害賠償請求訴訟で「この事件の経緯、強制わいせつ行為や侮辱の内容及び程度などを酌量した」とし、慰謝料として200万ウォンとその利子を支給するよう、先月28日に判決を下した。K氏とTさんが控訴せず、刑事と損害賠償の判決は全て確定した。京畿中央地裁弁護士会の法律救助決定で、Tさんは損害賠償訴訟費用も支援を受けることができた。
チェ弁護士は「韓国の人々がよく口にする『不法滞在者』という言葉に、韓国に住む外国人が多く傷ついている。今回の判決で、外国人に何気なく投げた一言が彼らには非常に侮辱的であり、そのような人種差別発言は処罰されうると広く知られることを願う」と話した。Tさんも「今回の判決は人種差別・セクハラと闘う全ての人たちの勝利」とし、「私のように韓国で被害を被った外国人たちが勇気を持って問題を提起してほしい」と明らかにした。
裁判所は2009年に初めて外国人に向けた人種差別的発言を侮辱罪として認めたことがある。仁川地裁刑事2単独のチョ・チャニョン判事は、2009年11月、当時聖公会大学研究教授のボノジット・フセイン氏に「アラブ人は汚い」、「臭い」と言い、侮辱の容疑で起訴されたP氏に罰金100万ウォン(約10万円)の略式命令を下したことがある。