「日帝強制占領期にも祖父が兵役を拒否して監獄に行きました。それから80年近く過ぎた今、その時より人権が良く守られるようになったというのに、相変らず良心的兵役拒否者は監獄に行かなければなりません。祖父の事件のためにも最後まで無罪を主張します」
オク・キュビン氏(22・写真)の祖父である故オク・チジュン氏夫婦と大伯父の故オク・レジュン氏夫婦は1939年、徴集など軍国主義日本の戦争に反対して投獄された。「隣人と敵を愛せよ」という聖書の一節に従って生きようとする「エホバの証人」たちにとって、いかなる方式であっても参加してはならないことが戦争だった。彼らのように戦争反対で逮捕された朝鮮人エホバの証人は38人いた。歴史には、抗日闘争の一つ「灯台社事件」として記録された。
解放と民主化を経て、国連(UN)人権理事会議長国を務めるほどに韓国の人権状況は改善されたが、オク氏の境遇は祖父の時と変わらなかった。入隊日だった昨年8月8日に入営を拒否したオク氏は、現在釜山地方裁判所で裁判を受けている。オク氏が反したとされる法は「正当な理由なく入営せず、または招集に応じなければ3年以下の懲役に処する」という兵役法第88条第1項だ。オク氏は9日、ハンギョレに「単に楽をしたくて兵役を拒否したのではありません。祖父も私も、いかなる国、民族、体制、政治状況、社会の雰囲気の下でも、良心を守るために同じことをしてきました」と話した。兵役法の条項が規定した「正当な理由」が自身には「明確にある」という断固たる語調だった。
オク氏の祖父が監獄に行った時期、同じく軍国主義に包まれたドイツのエホバの証人も良心的兵役拒否で苦難に遭った。しかし、終戦争にドイツは、募兵制が導入されるまで代替服務制を施行した。だが、韓国は依然として兵役忌避者として懲役刑に服さなければならない。国連人権理事会報告書によれば、2013年に良心的兵役拒否により収監された723人のうち、669人(92.5%)が韓国人であると調査された。オク氏は「良心的兵役拒否者に1年6カ月の懲役刑を宣告するのが慣行になり、警察の調査や裁判も形式的に行われてきました。だが最近、下級審で無罪判決が増えているので、憲法裁判所や最高裁(大法院)にも期待しています」と話した。
最高裁は下級審の相次ぐ無罪判決にもかかわらず今年6月15日、良心的兵役拒否者に懲役1年6カ月を宣告した原審を確定するなど、一貫して有罪を宣告している。だが、こうした最高裁判決の後にも、6月22日には清州(チョンジュ)地方裁判所、6月27日にはソウル南部地方裁判所で無罪判決が下され、下級審での無罪宣告の流れは着実に続いている。
最高裁の有罪判決と下級審の無罪判決が判断を異にする部分は、良心的兵役拒否が「正当な理由」に該当するか▽韓国が加入した「市民的および政治的権利に関する国際規約」(自由権規約)第18条が良心的兵役拒否を認めているかだ。
良心的兵役拒否に無罪を宣告したある判事は「かつては判事が憲法裁判所の違憲決定を待ったが、最近は良心的兵役拒否が『正当な理由』に該当するという共感が高まり、法令解釈は裁判官の権限だとして積極的な雰囲気が生まれた。下級審での無罪判決が増えれば、最高裁の判例も変わって来る」と見通した。「祖父がそうだったように、エホバの証人は長期にわたって行動で良心を証明してきました。韓国の憲法は良心の自由を保障しているし、私も憲法に基づいて無罪を確信しています」。今年3月に弁論が終結したオク氏の裁判は、4カ月経った今も宣告日が決まっていない。