夏のような陽気とは裏腹に、朴槿恵(パク・クネ)大統領帰国後の政局は凍てつく可能性が高い。それには二つの根拠がある。
第一に、ミン・ギョンウク大統領府報道官のチリ発言だ。23日、チリで記者たちがソンワンジョン・リスト事件を政権次元の不法政治資金事件と規定した文在寅(ムン・ジェイン)代表の発言に対して尋ねると、ミン報道官はこう答えた。
「野党代表がそんな話をされたとすれば、捜査に影響力を及ぼそうとしているのではないかという疑いを抱かれはしないか憂慮される。大統領はすでに出国前に聖域なき捜査をするよう強調した。 特検もまた真実糾明の役に立つなら拒む理由はないと明確におっしゃった」。 記者たちが発言をもう一度読んで欲しいと要請した。ミン報道官は助詞一つ違えることなく同じ言葉を繰り返した。 ミン報道官の発言は韓国時間で夜12時を過ぎて国内に伝えられたためにメディアに大きく報道されはしなかった。 しかし、朴槿恵大統領の事前決裁を経たと見なければならない。文在寅代表の攻撃を逆に捜査ガイドラインだとして反撃することは誰にでもできることではない。
第二に、ソンワンジョン・リスト事件を暴いている検察の捜査方向だ。 朴槿恵大統領が指示した聖域なき捜査を大統領側近が大部分である“8人”と解釈するか、“与野党を問わない人々”と解釈するかは検察の選択だ。検察が秘密資金帳簿を熱心に探していることから推し量れば後者を選択したもようだ。
このような状況で与野党の対話と妥協は不可能だ。 与野党が5月2日までと期間を定めた公務員年金改革交渉は完全に中断された状態だ。
セヌリ党の首都圏議員に朴槿恵大統領“帰国以後”を尋ねた。 彼はこのような展望を出した。「謝罪はするだろう。 しかし検察の捜査はリストにある8人にはとどまらないだろう。おそらく枠を大きくしていくだろう」。 そんなことをすれば再びブーメランになるのではないかと尋ねた。「そうなる危険もある。 どのみち司正は両刃の剣だ。 側近の不正が追加で明らかになるかもしれない。 しかし、国民が今枠を大きくしろと要求しているではないか。朴槿恵大統領がここでまごまごすれば、ソンワンジョン・リストによる傷だけがそっくり残る。 他に選択の余地はない。 そうしなければ政局主導権を掴めなくなる。虎の背中に乗ったわけだ」
歴代の大統領は揃って腐敗清算を前面に掲げ司正を試みた。 しかし成功した事例は殆どない。 捜査の網にひっかかった当事者は、いつも“野党弾圧”とか“政治報復”を叫び抵抗したし、実際に同情を得た。司正と政治を両手にそれぞれ持って、政局を導いていくにはほとんど神の境地に上がらなければならない。朴槿恵大統領にはそのような力があるだろうか?
与党の要人と政治アナリストに尋ねた。 朴槿恵大統領の目の前には三つの峠があると口をそろえた。
第一に、謝罪の時期と強度だ。大統領の最側近が金を受け取ったという疑惑を。今のように“幽体離脱”話法で押し通すことは不可能だ。 金武星(キム・ムソン)代表が予想した通り、謝罪はするが時期と強度が重要だ。 あまり遅くなれば効果がなく、誠意が足りなければ民意は背を向けかねない。
第二に、4・29補欠選直後の態度だ。 選挙の結果、与党が勝利する場合、不正疑惑に包まれた人々が免罪符を受けたかのように錯覚しかねない。 朴槿恵大統領とセヌリ党が頭をもたげて民意の逆風をむかえる可能性がある。
第三に、首相の後任人選だ。 朴槿恵大統領としてはチェ・ギョンファン、ファン・ウヨ副首相を首相候補者に指名する“手帳人事”や“付け焼き刃人事”の誘惑を受けるだろう。 それが一番楽だからだ。 しかし、実際そのような状況になれば“民意”はもちろん“党内世論”まで失いかねない。相次ぐ峠で誤った選択が続くならば、朴槿恵大統領の3年目は早期レイムダックという深い泥沼に嵌まる危険があるということだ。