セウォル号特別法の制定を巡る与野党合意、続く再合意が遺族たちの反対に直面し、長期間に渡り漂流する中で、特別法の制定を国会に押しつけ“手を後ろに組んで”いるだけの大統領府の無責任に対する批判が高まっている。
遺族たちと野党が大統領との面談を要求し続けていることに対し、ミン・ギョンウク大統領府報道官は20日「セウォル号特別法は与野党が合意して処理する問題であって、大統領が出て行くことではないと考える」と明らかにした。特別法と関連した論議について、大統領府が答えないという意思を明確にしたわけだ。わずか2か月前に「真相究明において、遺族に心残りを抱かせない」と遺族たちの前で固く約束した朴槿恵(パク・クネ)大統領の言葉が色あせている。
朴大統領はセウォル号事故後の5月16日、大統領府で遺族たちと面談した席で「特別法は作らねばならず、特検も実施しなければならない。何よりも、真相究明において遺族の皆さんに心残りを抱かせないようにすること、そこから深い傷の治癒が始まるのではないかと思う」と語っていた。
当時、朴大統領は「各界の意見を幅広く聴取したが、(事故の現場を)長い間見守ってきた遺族の皆さんの意見が何よりも重要だと思った」とも述べた。遺族との面談から3日後の5月19日に行われた対国民談話では、「与野党と民間が参加する真相調査委員会を含めた特別法を作ることを提案する」と公式発表した。
しかし、朴大統領は6月以降、セウォル号特別法に一切言及していない。特に「7・30再補欠選挙」以後はセウォル号事故に対する言及が1~2回に減り、それすらも遺族の要求とは関係のない内容だった。大統領府は「特別法の制定は与野党が協議すること」だからだと理由を挙げるが、これも対応に困る事案には近寄らないという無責任な態度だ。朴大統領が今月に入り、光復節祝辞など公の場で「政界が民意を受け入れて、経済活性化の先頭に立つ政治をしなければならない」と、国会に経済関連法案の早急な可決を重ねて圧迫しているのとは対照的だ。
朴大統領の沈黙と大統領府の無視は、セウォル号特別法を巡る与野党の交渉と遺族の反発が最高潮に達している状況でも微動だにしない。セウォル号特別法の制定を要求して38日間断食中の檀園高校の犠牲者キム・ユミンさんの父親キム・ヨンオ氏はこの日の午後、大統領府の国民請願窓口である「年豊門(ヨンプンムン)」を訪れて、朴大統領に面談を申請した(訳注:警察は大統領府前の道路を観光客には開放しながら、衰弱しきっているキム・ヨンオ氏には固く閉ざし、小競り合いも辞さず、面談申請自体も繰り返し警察に阻まれた)。
これに先立ち、キム氏は18日に記者会見を開き、「この100日間に朴大統領に会った回数より、この5日間に教皇に会った回数の方が多い。5月16日には遺族たちに対して“いつでもまた会いましょう”と言ったけれども、二度と会えていない」と話した。彼は「朴大統領は教皇にセウォル号の遺族たちを慰めて下さって感謝しますと言ったが、朴大統領が直接私たちを慰めてほしい。私たちが癒される唯一の道は、まともな特別法が制定されることだ」と強調した。
ソク・チンファン記者 soulfat@hani.co.kr