小規模独立部隊で暴力が頻発
殴打・苛酷行為は引き継がれていく
幹部が少ない本部砲隊は管理の死角地帯
殴られた者も権力をにぎる時期になれば
被害者だったことを忘れ、悪い本性が露わに
幹部らの放置にも問題
キム氏は5月に陸軍○○師団○○大隊を除隊した。 一等兵だった昨年1月、部隊と離れた弾薬補給所(ASP)で2ヶ月間の支援勤務に出ていた。 警戒所の警戒勤務を終えて風呂でシャワーを浴びているキム氏にB兵長が近寄ってきた。B兵長はキム氏の大腿部に突然小便を浴びせた。 先任兵の苛酷行為をこらえて、水で小便を洗い流していると、S兵長がやって来て再び小便を浴びせた。 水で洗っているキム氏に向かってO上等兵が再び小便を浴びせた。 先任兵たちは仲間同士で笑って喜んでいたという。 侮蔑感を耐えていたキム氏に向かって「表情の管理もできないのか」と言いがかりをつけ、先任兵らは無理矢理キム氏の顔全体に歯磨きを塗りたくった。 キム氏には先任兵から‘サンドバッグ’の役割が与えられたという。
■幹部らはすでに知っていた
陸軍28師団のユン一等兵死亡事故の波紋が急速に広がると、国防部は事故発生から4ケ月後の4日、遅ればせながら事故原因の分析を出した。 国防部は△本部砲隊長(中尉)が義務班など9班を統制する指揮体系△本部砲隊と離れた義務班管理の不良△幹部の形式的部隊巡回査察などを原因に挙げた。
だが、除隊者や現役軍人たちはこのような問題点を最初から把握していた。 陸軍砲兵部隊で最近除隊したある砲兵将校は4日、「ユン一等兵の死亡事故が起こった本部砲隊の場合、兵士管理を中尉級の一人で任されているため、まともな管理をするのは容易でなかっただろう」と話した。 大尉級に任せる一般砲隊より2倍程度多い100~120人の兵士が本部砲隊に配置されるが、中尉の管理能力は足りなくなるということだ。彼は「本部砲隊長を補佐する軍医官などは事実上兵士の管理をしない。一人で管理する結果、管理の死角地帯が生まれる」と話した。
義務班や弾薬補給所などは小規模の独立部隊で運営される。 ‘小便苛酷行為’を加えられたキム氏と同期たちは、元の所属部隊では‘同期生活館’で生活を共にしていた。 キム氏の同僚であったイ氏(22)は「弾薬補給所の支援に出て行った後は、小隊別に生活館を使うことになり、先任兵の苛酷行為が発生した」と話す。 先任兵は殴打だけでなく、新兵から頻繁に2万~3万ウォンを借り、返そうともしなかった。金を奪っていたのだ。 給料やテレホンカードなどに使われる‘愛国カード’を‘借りて’使う先任兵もいた。 ある兵長は、除隊プレゼントの名目に新兵から50万ウォンを巻き上げていた。
輸送中隊も同様に管理の死角地帯に属す。 今年1月、国軍○○病院輸送中隊を除隊したキム氏(28)も、やはりシャワー中に先任兵の小便洗礼を受けた。 先任兵はさらに、内務班でキム氏のパンツを無理やり脱がせ、肛門に水を注いだという。 キム氏は「この病院の兵士管理は100人余りの医務兵を中心に行われており、輸送中隊は後まわしだった」と語る。 軍法務官を務めたノ・スチョル弁護士は「大きな事故のほとんどが低い階級の兵士が指揮する独立中隊で発生するケースが多い。 小さな単位部隊の場合、統制人材の不足により兵士間に暴力的な軍隊文化が根づくことになる」と話した。
■保身主義と一貫性のない処罰が暴力文化を育てる
殴打と苛酷行為は‘問題のある先任兵’だけの問題で終わらず、その後も引き継がれる。殴られて悔しい思いをした者も、先任兵になった時には自分が被害者だった事実を忘れてしまう。 パンツを脱がされたキム氏は「最古参になれば悪い本性が出てくることもある。おとなしかった先任兵も階級が上がるほど傍若無人になった」と話した。
暴力が引き継がれる背景には‘あいつは殴られても構わない’という誤った認識がある。 殴打と苛酷行為に直接加担しなかった部隊員も、被害兵士に対し「先任に嫌われることをする」「返事が遅い」「声が小さい」「熱心でない」という否定的評価をしている。別の方法で扱わねばならない事案を、軍規を正す’との理由で暴力という安易な手段をとり、暴力的な風土を助長しているというのだ。
軍組織を熟知している人々は、指揮官の‘保身主義’と‘一貫性なき処罰’が殴打と苛酷行為の根絶を難しくしていると指摘する。 軍法務官出身で軍隊内暴力事件などを扱うある弁護士は「こうした事件が起こるたび、指揮官は問題を大きくさせないため刑事立件ではなく懲戒で処理しようとする傾向が強い」と話した。 進級に影響が及ぶことを恐れ、隠蔽しがちになるというのだ。
今回のユン一等兵死亡事件のように世論の注目を浴びた事件だけを強く処罰したからと言って、過酷行為が根絶されるわけではないという。 この弁護士は「正確で一貫性のある処罰が重要だ。 運が悪く捕まって営倉に行ったというのではなく、こうした過ちを犯せば無条件に懲戒・刑事処罰を受けるという認識が生まれなければならない」と指摘した。
基本的な兵営管理さえしなかった幹部の責任もある。 昨年、陸軍首都軍団を除隊したキム氏(21)氏は、二等兵より一等兵が集中的にターゲットになると話した。 “二等兵は幹部たちと定期的に相談をしているため手出しできない。 反面、一等兵は幹部との相談がほとんどない」と指摘した。 ‘二等兵のラベル’がなくなると、幹部らの関心が急激に減ってしまうのだ。
「心の手紙」などの制度も軍隊の垣根の中では本来の役割を果たせないケースが発生する。 部隊員20人余りの小規模部隊で服務した経験がある除隊兵は、「部隊の規模が小さいと幹部に‘心の手紙’を書いても、すぐ突き止められ逆にいじめにあうことになる。 先任兵から堂々と‘何も書くな’と言われていた」と話す。 ある除隊兵士は「加害兵士が営倉送りになった後も同じ場所で軍生活をするが、幹部はそこまで考えられないようだ」と話した。
パク・キヨン、キム・キュナム、チェ・ウリ記者 xeno@hani.co.kr