ユン・ジョンウォン(54)氏とユ・ビョンジェ(56)氏は‘教授’だ。 慶北(キョンブク)慶山市(キョンサンシ)にある私立大学である大邱(テグ)大学校の学生たちは二人をこのように呼ぶ。 二人は大邱大で講義をして学生たちと相談して試験問題を出して学生たちに単位を与える。 ユン氏は大邱大で12年間講義をしてきた。 ユ氏はこの大学で30年間講義している。
だが、大学で二人の境遇はあまりにも違う。 専攻と講義時間などが異なるため単純に比較することは難しいが、ユン氏は年俸が500万ウォン程でユ氏は7000万ウォン程になる。 ユン氏は大邱大地域社会開発・福祉学科の時間講師で、ユ氏はこの大学の生命科学科専任教授だ。
ユン氏は月給の話が出てくればネズミの穴にも隠れたい心情と話した。 時間当り6万ウォン余りを受け取る。 一週間に3時間講義するので18万ウォン、一ヶ月で70万ウォンを少し越える。 時間講師は夏・冬休みには収入がないので4ヶ月を除くとユン氏の年俸は概略500万ウォン(訳注:約45万円)程度になる。 本代、資料複写費など講義準備、講義、試験問題出題と採点、課題物評価、交通費、食事代などユン氏が1年間の講義に関連して注ぐ労働に対する代価だ。 ユン氏の同僚は普通1週間に6~10時間の授業をする。 彼らの収入は1年に1000~1200万ウォン水準だ。
「時間講師手当てを受け取り交通費を払えば何も残りません。 他の同僚の事情も同じようなものです。 ほとんどの時間講師は夫人が生計を賄っています。」 ユン氏夫人も美容室を営んでいる。 彼は 「妻にはいつも申し訳ない心情」と打ち明けた。
年俸だけでなく雇用安定性も天と地の差だ。 ユ氏は学期ごとに該当科で講義を務めるなど教授身分を保証されるが、ユン氏は休みが始まる7月上旬と1月上旬に学科事務室から‘次の学期にも講義をしてほしい’という電話が来なければ自動的に失業者となる。
ユン教授 手当て‘時間当り6万ウォン’
生計は夫人の役割
次の学期も講義を受け持てるだろうか?
夏・冬休みには失職の心配
正規職への夢はとっくに放棄した
ユ教授は正規職だが
講師に対する不当待遇には腹が立つ
"政府・大学が解決しようとしない
それで誰が講師をしますか
後輩学者なしでは教育も発展しません"
ユ氏は時間講師等に会うたびに申し訳ない思いがすると話した。 博士学位を受けても10年以上にわたり時間講師をするこの頃とは違い、自身は比較的順調に教授になったためだ。 彼は1981年ソウル大大学院動物学科修士課程を卒業して、83年に大邱大専任講師になった。 80年代は今より教授任用競争が少なく、専攻が専門性のある理科側なので有利だった。 教授になった後、87年にソウル大で博士学位を受けた。
多くの正規職教授が一定期間 時間講師生活を経る。 彼らは時間講師の哀歓と苦痛を誰よりもよく知っているが、正規職教授として任用された瞬間、あらゆる事をそっとしておこうとする。 ユ氏は 「カエルはオタマジャクシだった時を忘れる(=富みては驕る)ということわざが思い出される」 と話した。 教授らは‘時間講師は如何ともしがたい大学経営の問題ではないか’として避けて通る。 大邱大だけでなく全国の大学で事情が似ている。 「政府と大学、専任教授は時間講師問題に関心がありません。 時間講師が時々処遇改善を掲げてストライキをするが、その時だけです。 時間が過ぎれば誰も記憶さえしていません。 それで時間講師の問題がなかなか解決される展望さえ見えません。」ユ氏の話だ。
時間講師はそれでもいつかは正規職教授になれるという希望でもあるなら耐え抜けると言う。 だが、ユン氏はこういう夢をはるか以前にあきらめた。 「初めは教授になるという夢を抱いて始めました。 しかし10年を越える歳月が流れ、あきらめました。」彼は東国(トングク)大慶州(キョンジュ)キャンパスを卒業して、大邱大と崇実(スンシル)大で修・博士課程を経た後、2001年から時間講師生活を始めた。
「この頃、正規職教授任用競争率は10対1を上回ります。 自然科学や工学などを専攻した時間講師はそれでも企業や研究所側に行く道が開いているが、社会科学や人文学を専攻した時間講師はそれすら期待できません。」
ユン氏は5年前から非正規教授労組活動を始めた。 政府や大学が時間講師問題を解決する意志もなく関心もないという事実を悟ったためだ。 労組活動をしながら多くの人々に会ったが、しばしば薄情でさびしい思いをしたと語った。 「進歩的な主張をする団体や教授、政治家たちに数えきれない程会いました。 しかし、彼らですら時間講師問題にはそっぽを向きました。」2010年、韓国非正規教授労組委員長を務めて東奔西走したユン氏はユ氏に会った。 ユ氏は当時、全国教授労組副委員長だった。 「初めは労組のことで会いました。 時間が経つにつれ時間講師の立場を理解してくれようとしました。 とてもうれしかった。」今は非正規教授労組の‘時間講師法特別委員会’委員長であるユン氏と、教授労組委員長を務めたユ氏は3年を超えて出会いを続けている。
ユ氏は「知性の殿堂と呼ばれる大学で‘甲乙関係’と正規職と非正規職の差別が時間講師問題に克明に現れている」と話した。 「時間講師は徹底して乙の境遇です。 彼らはいつ講義がなくなるやもしれないので、大学当局と専任教授の顔色を見なければならなくて、講義がなくなれば直ちに生計を心配しなければならない状況です。」 彼は 「大学が時間講師を絞り取っている」と言い切った。
ユ氏は、心配事は絶えないがこの頃はますます増えていると話した。 博士課程に進もうとする若年層を見つけるのが難しいためだ。 「博士学位を受けた後、大学の教壇に立ってみても年俸1000万ウォン余りでは誰がこの道を行こうと思いますか?」 彼は後輩の研究者がいなくなり‘学問の断絶’が迫るかも知れないという危機感を感じると話した。 実際、学科で教授が学会出席などで講義時間を空けなければならない時、代わってくれる時間講師が見つからなことも結構あると話した。 ユ氏は 「政府と大学当局が時間講師問題を解決できなければ、高等教育の発展もなく、希望もない」と語った。
ユ氏は近々ユン氏に会って大学内で正規職教授と時間講師が共生できる道を探してみるつもりだ。 ユン氏は8日「金がかかる時間講師手当て引き上げ問題はすぐには解決が難しいが、時間講師の呼称や休憩空間問題などについては方案がありそうだ。 小さな問題からでも一つずつ解きほぐしていきたい」と話した。
大邱/ク・テソン記者 sunnyk@hani.co.kr
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足を踏み外した‘時間講師保護法’
正規職平均年俸の10分の1
収入・講義回数 増えると言うが
それだけ首を切られる人が出てくる
4年制大学と2年制の専門大など、わが国の大学331校で勤める専任教員は7万5000人余り、時間講師は7万8000人余りだ。
8日、教育部集計を見れば、時間講師の1週間の講義時間は3~6時間(63.6%)が最も多かった。 3時間以下の時間講師は17.7%であり、7~9時間が12.5%、9時間以上の授業をするケースは6.2%であった。 時間講師が大学講義全体の42%を受け持っていて、時間講師の内 52%が専業講師として把握されると教育部関係者は伝えた。
時間講師の収入はどのくらいになるのか? 教育部が昨年パク・インスク セヌリ党議員(国会教育文化体育観光委員会)に出した資料を見れば、全国4年制大学189校の時間講師平均年俸は604万ウォンで、専任教員の平均年俸4290万ウォンの14%水準だ。 保健福祉部が定めた今年の4人世帯年間最低生計費1848万ウォン(月154万ウォン)の半分にも満たない。
教育部は時間講師の低賃金問題を解決するとして昨年1月に高等教育法を改正した。 定年が保障される専任教授でない1年契約職教員である講師に週当り9時間の講義を任せ、一定額の収入と共に身分を保障するようにしたことが骨子だ。 韓国非正規教授労組は、現在の時間講師の平均講義時間が週当り4.5時間である点を勘案する時、今後講義時間を週当り9時間以上と規定すれば講義の配分を受けられない講師が量産されるだろうと推定する。 ‘時間講師法’と呼ばれるこの法は、時間講師の反発により来年1月1日に施行が延期された。
非正規教授労組は、時間講師法が施行されれば時間講師7万8000人の内 3万人以上が‘解雇’されると見ている。 教育部も1万人余りが働き口を失うと分析したと言う。
時間講師問題を自然に解決するには、現在60%台に留まっている教授補充率を引き上げなければならないと非正規教授労組側は主張する。 ユン・ユヨン韓国非正規教授労組事務局長(釜山大時間講師)は「大学が教授補充率を100%まで引き上げるにはかなりの時間がかかるだろう。 その間、研究講義教授制を導入すれば良い」と話した。 研究講義教授は、身分が保障される契約職として、週に9時間の講義を務める時間講師に4人家族の標準生計費である年俸3000万ウォンを与え、これに必要な金は政府と地方自治体が支援する方案だ。
大邱/ク・テソン記者