チョン・ポクスク(59)氏は自分が好きだと話した。 ソウル陽川区(ヤンチョング)のホームプラス木洞店で農産物コーナーの売場管理を担当するチョン氏は、商品を展示してお客さんの相手を18年近く続けてきた。 彼女は 「この仕事をしている理由は、第一には生計のためだが、第二は(自分に)合っているからだ。 陳列して人を迎えるのがおもしろくて」と言う。 ファン・ミョンヒ(48)氏もやはりホームプラス木洞店の農産物コーナーで同じ仕事をしている。 2001年からこの仕事をしてきた彼女も「他のコーナーに移るよう提案も受けたが、この仕事が好きで残った。 農産品は季節によって商品が変わり、精肉のような他のコーナーでは感じられない面白みがある」と話した。
同じ仕事をしていても二人の身分は違う。 チョン氏は無期契約職、ファン氏は正規職だ。 ホームプラスは最近正規職に対する賃金体系を改編した。 経歴7年以上の正規職には主任職責を付与して賃金を現実化した。 それまで100万ウォン水準に過ぎなかったファン氏の基本給は先月約130万ウォンに上がった。 だが、チョン氏の基本給は先月も依然として80万ウォン台水準だった。 更に基本給を基準として計算される各種手当の差まで加えれば格差はさらに広がる。
正規職と無期契約職は雇用期間に制限がないという点では全く同じだ。 どちらも6ヶ月や1年で契約が終わる都度、毎度新たな雇用契約を結ぶ期間制勤労者の雇用不安はない。 だが、無期契約職は元々制限がなかった正規職とは違い、期間制が単位ごとに契約を結ばなければならないくびきを免れたに過ぎない身分だ。 したがって、賃金体系や福祉などは会社により千差万別だ。 正規職のファン氏は働いた経歴により一定水準の年俸を保障される方式で今回賃金が上がったが、無期契約職のチョン氏は依然として働いた時間により賃金が計算されるので該当事項はなかった。
‘1年勤務すれば正規職に自動転換’
この規定は2003年になくなった
2001年に入社したファン氏は正規職
2003年に入社したチョン氏は現在 無期契約職の身分だ
先月29日、木洞店の1階食堂街で一緒に会った2人は「このように一緒に座って話を交わしたのは一ヶ月ぶり」と話した。 賃金体系が変わり正規職と無期契約職の間には目には見えない壁が立った。 チョン氏は「必ずしもお金の問題だけでなく、自尊心がとても傷つきました」と話した。 ファン氏は 「(無期契約職である)姉さんにどう話をすれば良いか、分かりませんでした。 それで避けるようになりました」と語った。
2人が交錯した理由は10年前に遡る。 2003年は1997年外国為替危機以後に急増した非正規職問題に対する社会的議論が活発だった時期だった。 当時2人が身を置いていた会社は今のホームプラスの前身であるフランス系世界的流通企業‘カルフール’だった。 カルフールは契約職として雇用した後、1年を超えて勤めれば無条件に正規職に切り替えていた既存の雇用方式をその年の6月に変更し、試験を受けて少数だけに正規職への搭乗切符を分け与えた。 2001年6月に入社したファン氏はすでに正規職列車に乗った後だったが、人材業者派遣形式で働き、2003年10月にカルフールに入社したチョン氏はその汽車を逃した。
二人は最近のように賃金格差が目立つ前、長期に渡り労働組合闘争を一緒にしてきた‘同志’だった。 2006年カルフールからイーランドグループの手に渡った彼女らの店舗には‘ホームエバー’という新しい看板がかけられた。 2007年非正規職保護法施行を控えてホームエバーはレジ業務を外注化するため非正規職労働者を大量解雇した。 新法の規定を避けるための姑息な手であった。 イーランド一般労働組合(当時委員長 キム・ギョンウク)はストライキに突入した。
ストライキは何と500日を超えて続いた。 当時、労組の木洞店分会長を務めていたファン氏は「あまりに荷が重かった。 特に子供と家庭をなおざりにしたことで胸が痛い」と話した。 チョン氏は「1年6ヶ月まで(ストライキに)一緒に加わったが、最後までは共にできなかった」として、まだその時の事を申し訳なく思っているという。 長期ストライキは新たに会社を買収した三星(サムスン)テスコ(現 ホームプラス)が労組と2008年11月に労使合意を形成し終わった。
当時のストライキは社内外注化を阻止し、非正規職の処遇改善を実現し一歩進展された合意を引き出したという評価を受けた。 だが、チョン氏は「差別に対して一緒に戦ったが、ますます格差だけが広がっているこの頃は、その時に戻れない川を渡ったのではないかという気がする」と話した。
構造調整の時‘同志’であった二人は
今、‘気まずい同僚’となった
最近、正規職だけ月給が上がり
ファン氏は "申し訳なくて避けるようになった"
チョン氏は "胸が痛むばかり"
申し訳ないとい思いが先に立つけれど、正規職労働者だって言うべきことがないわけではない。 ファン氏は「2008年ストライキ終了後の2年間は、合意により賃金引き上げ率を会社に任せました。 2%水準でした。 今回は労組と会社が協議をして上げたことなので労組の立場としては(正規職の賃金引き上げを)受け入れないことは困難だったでしょう」と話した。 ホームプラスの店舗は、所属が二つの会社に分かれているが、ホームエバーが前身である店舗の場合には無期契約職の比率が3分の1水準だ。 だが、旧三星テスコ系列店舗の場合、無期契約職の比率がはるかに高く、全体的には半分水準と推定される。
チョン氏とファン氏、2人の願いは同じだ。 チョン氏は「妹に何の罪がありますか。 互いに避け合う姿を見れば胸が痛いだけでしょう。 会社と話をしなくちゃ」と話した。 1995年、夫の事業が困難に直面し、友人の町内マートで仕事を始めて今までこの仕事で娘と息子を育ててきたチョン氏は 「からだが続く限り続けるつもり」と話した。 ファン氏は「私たちのことは誰が正規職で、誰が非正規職なのか見分けることはできません。 区分を減らして(人材)運営を単純にしなければならないはずなのに、会社がますます格差を大きくしているようです」と話した。 彼女はさらに社会構造的な問題にも言及した。 「みんな、生活してゆくのが厳しいので、安定した職場ばかり探して、子供にも同じ仕事をするように願います。 そのような固定された考えに閉じ込められている限り、差別の構造は変わらない気がします。」クォン・オソン記者 sage5th@hani.co.kr
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雇用労働部が「正規職に切り替える」という4万余名
実際は‘中規職’になる境遇
チョン・ポクスク(59)氏とファン・ミョンヒ(48)氏の事例のように、正規職と無期契約職との格差はますます深刻化されている。 ‘期間制および短時間勤労者保護などに関する法律’(期間制法)施行から6年の時間が流れた今、専門家たちは無期契約職を正規職の一種ではなく、変形された非正規職と見て、新しい枠組みの労働政策への転換が必要だと口をそろえている。 期間制法が施行された2007年7月を前後して無期契約職は大きく膨らんだ。
ホームプラスの前身であるイーランドグループ‘ホームエバー’の解雇労働者出身でもあるイ・ナムシン韓国非正規労働センター所長は 「多くの非正規職労働者が次の契約に対する不安に震えなければならなかった2007年には無期契約職の導入には意味があった。 今は身分にともなう差別是正に焦点を合わせた本物の正規職化が必要だ」と話した。 無期契約職は雇用期間の制限がないという点では正規職と同じだが、期間制限を取り払っただけで賃金と福祉では事業場と雇用形態により千差万別だ。 ホームプラスの場合のように二つの職群間の差異は一層目立っている。
無期契約職を初めて導入したのは政府だ。 ユン・エリム韓国放送通信大教授(法学)は「2006年に非正規職問題が深刻化されるや政府は2年以上にわたり常時的な業務を遂行してきた公共部門の非正規職を無期契約職化すると発表した。 そしてこれに対して正規職化と包装した」と話した。 以後、ウリ銀行、ホームプラスなど金融や流通などの民間企業が隊列に参加した。 労働界ではこれに対して(正規職と非正規職の中間である) ‘中規職’階級を量産する‘半分だけの正規職化’政策だと批判している。
朴槿恵(パク・クネ)政府でもこれはそのまま続いている。 雇用労働部は去る4月、2015年までに4万1000人以上を正規職に切り替えると明らかにした。 全て無期契約職への転換だ。 ユン教授は「無期契約職は実績などを理由にいつでも切られる危険があるので、安定性が保障されるとも言い難いが、期間制限がないので期間制法の対象でもなく、保護の死角地帯に置かれている」と指摘した。 彼女は「導入した政府が立ち上がり、公共機関から本当に正規職転換への取り組みを始める時」と語った。
民間では大企業が先頭に立たなければならないという指摘が出ている。 イ・ナムシン所長は「財閥企業らはこの間、非正規職を通じて巨万の富を積みあげてきた。 払える金もない中小企業に、直ちに正規職転換を注文することは難しくとも、大企業は社会的責任などの観点から本当の正規職化に踏み出す必要がある。 労働生産性向上の側面からも、企業にとっても利益になりうる」と話した。
クォン・オソン記者