hankyoreh

　キム・某(22)氏は高校を中退した。 明確な職場はまだない。 母親は家を出たし、父親は失業者だ。 キム氏は社会に不満が多い。 頭は頭皮が見えるほど短く刈り、暗い顔色で表情もなかった。 彼は 「優秀な女、金持ち、勇気のある果敢な人、勉強のできる人、権力を持って他人を無視する人 が嫌いだ」と話した。

　昨年末、キム氏は‘日刊ベスト保存所’(イルベ)ホームページに出入りし始めた。 彼は 「イルベで‘キムチX’(女性卑下的表現)とののしる文を書けば気が晴れる」とぶっきらぼうに話した。 イルベの友人が 「悪口を言っておかしな文を書きながら楽しく遊ぶ所」と言って紹介した。

　そのように遊んで政治家誹謗文等にも出会うようになった。 明確な政治指向はなかったキム氏は別に意に介さなかった。 「民主化が何だかはよく分かりません。 イルベで初めて聞いたし、全斗煥・朴正熙もイルベで初めて知りました。」最近問題になった5・18光州(クァンジュ)民主化運動について尋ねると、彼は 「光州暴動ですか?」と問い直した。 「全斗煥がタンクで押しつぶしたとイルベで見ました。」

「皆‘互いにどれほどバカなのか' をくっちゃべって遊びます」

「上位1%の人々とも平等にコメント」

「イルベ批判報道が出てくれば気分が良い」

飾り気のない非難・侮辱が気に入って

しばしば出入りしているうちに政治指向が変わり

逸脱的文化を楽しんでカタルシス

　また別のイルベ会員 チョ・某(２３・女)氏は、キム氏とは多少違う。 自らを‘左ジョム’(左派を卑下する言葉)だったと紹介した。 2008年米国産牛肉輸入反対ろうそく集会にも出て行ったという。 2011年8月ユーモア文を探していて偶然にイルベを知った。 「飾り気なく互いを非難しののしって遊ぶことが気に入った」と話した。

　しばしば出入りするうちに政治的指向は徐々に変わった。 「半額授業料をやらないと李明博大統領をののしっていたが、分かってみれば金大中大統領の時に授業料が一番上がったんですよ。 米国産牛肉を食べ続けても狂牛病にかからないし」

　イルベに3年前から出入りしてきたキム・某(31)氏はイルベに掲示される脱北者の証言と総合編成放送の内容に強い関心を持った。 「光州(クァンジュ)に北韓軍が浸透したということです。 北韓から来た人々が言っている話だから、まさか嘘ではないでしょう。 私たちが知っていた光州事態の真実が間違っているかもと思うようになりました。」

　政治イシューに関心を傾けるけれども、それよりは逸脱的サブカルチャーを楽しむことにはまっているように見受けられた。 「ここでは皆が‘病身ドリブ(自らが劣っていることを証明する遊び)’をしながら遊びます。 互いにどれほどバカなのかを話しますね。 それがおもしろいのです。」キム氏が語った。

　インターネットの一般的属性という‘平等’をイルベで経験できることも魅力的だという。 キム氏は「医師・判事・教授・記者たちも一緒にきて遊ぶ。 上位1%の人々が私たちとこうやって遊べるのはここしかない」と自慢した。

　キム・ドングン(24)氏は‘イルベチュン’(イルベ利用者を卑下して言う言葉)人形を販売する事業をするほど、イルベにどっぷりと浸かっている。 彼はイルベの社会逸脱的騒乱の根源として‘レベルシステム’を挙げた。 レベルを上げるために、より一層過激な文と写真を上げるようになるということだ。 イルベにはレベルが25まであって、数十万ヶの推薦を受けてこそレベルが最高等級まで行ける。 注目度を高めるためにホームページ ハッキング、前職大統領パロディ、光州出身芸能人卑下行為などをした後に証明文を載せるケースが多い。 「イルベ利用者の10%程度は‘日刊ベスト文’に上がることにこだわって文を書いています。 人生の目標でしょう。」

　これらの人々は自分たちに非難が集ることを知ってはいたが、特にくやしがりもしなかった。 「私をイルベチュンと言っても構いません。 どうせ私は‘大馬鹿’ですからね、 構いません。」言論にイルベを批判する報道が出てくれば、イルベ会員たちは「放送にイルベが出た」と言ってうれしがる文を載せる。

　ウェプ データ分析機関であるランキ ドットコムの資料によれば、イルベは今年1～4月の純粋訪問者数(PC利用者基準)が月平均198万人に達した。 インターネット利用者100人に5人の割合で月に一回以上イルベを訪問したわけだ。

文・写真 ホ・ジェヒョン記者 catalunia＠hani.co.kr