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[世相を読む] 5・18,‘記憶遮断’から‘記憶歪曲’へ / キム・ドンチュン

登録:2013-05-21 11:50 修正:2013-09-23 22:48
金東椿(キム・ドンチュン)聖公会(ソンゴンフェ)大社会科学部教授

行き過ぎとは言え、あまりにも遠くへ行き過ぎた。 常識的な水準で容認して忍耐できる程度をはるかに超えた。 5・18抗争当時、銃を取った人々が北韓から派遣されたゲリラだと、公然と朝鮮・東亜の総合編成放送が言及した。 彼らを民主化有功者だと呼びたくない心情までは理解する。 しかし北韓が組織的に介入したとまで言うか? これは生存している現場市民軍を侮辱することで、犠牲になった人々を二回殺すことではないのか? 事件当時、虐殺を行った新軍部は拘束者を拷問し、スパイに追い立てようとした。 いくら拷問してもスパイという証拠が出てこないから、後には彼らを‘金大中追従勢力’と自ら言い直した。 世の中に工作金を受け取って命を捧げる人間がどこにいるのか? もし北韓ゲリラが光州(クァンジュ)まで進入したとすれば、休戦ラインか、船に乗って長い道を南下して‘暴動’を準備する間に数多い軍警の警備要員は何をしていたというのか?

 酒場のくだらない対話にでも出てくるような話が総合編成チャンネルに乗って公然と流布され、イルベサイト(訳注:日刊ベストという右翼志向のネットサイト)を通じて正しい歴史教育を受けなければならない青少年にろ過することなく伝えられている。 ついには抗争を行い銃に撃たれて死んだ亡骸までを馬鹿にする内容までが流布される状況に達した。 この間、光州5・18を蔑みたいと考えるいかなる勢力も、義に徹して命を捧げた人々の亡骸までを馬鹿にすることはなかった。 それは文明社会に暮らして居る私たちが守らなければならない最後の一線だったためだ。 ところで振り返ってみれば、第5共和国勢力と保守言論は1987年以前には暴力的に‘記憶の喪失’を要求し、加害者処罰を最後まで拒否し、民主運動をただ‘光州の暴動’だけに縮小するためにあらゆる術を全て動員してきた。 今や記憶がかすんできて、彼らに有利な政治環境が造成されたと見るや‘記憶の歪曲’まで試みている。

 自分の心情に合致しないすべての人に‘従北’‘アカ’のレッテルを貼り付けることを容認したり或いはそそのかしてきたこれまでの政治状況がなかったとすれば、こうしたことが果たして起きただろうか? ムスリムに対する‘憎悪犯罪’はいつもイスラム文明を卑下してきた米国の西欧中心主義政治文化の産物であり、ナチの600万ユダヤ人虐殺は "地球上にユダヤ人がいなかったら十分にユダヤ人創造ですらしてのける" 反ユダヤ主義が広まっていたために発生したのだ。 光州5・18を北韓と連係させようとするのは、北韓と共産主義を罵りさえすれば、いかなる非人間的な犯罪も容認してきた韓国反共主義の帰結だ。

 世界史を見れば、いかなる残酷犯罪を犯した加害者らも素直に誤りを認め反省したケースは珍しい。 彼らは犯罪を正当化しようとする政治・心理的欲求のために力のある限り被害者の自白と政治的転向を要求する。 被害者に対する社会的共感が起きることを遮断して、更には事実を忘れさせることが一次目標だが、さらに自信ができれば次には、自身がしたことは‘社会の害虫’を除去した正当なことであったとか、国家のためにそうしたのだと強弁するものだ。 5・18加害者にとっても、自身の行動が正当化されるためには抗争勢力が韓国の‘公共の敵’である北韓と関連していなければならないということだ。 そうしてこそ自分たちの最大の弱点が解消され、ついには現実権力を越えて歴史認識の高地まで占領できるようになる。

 ヨーロッパ国家がナチの虐殺行為否認を処罰する法を制定したのも、虐殺の否認が民主主義を後退させるだけでなく、野蛮的行為を擁護する犯罪だと見たためだ。 記憶の歪曲まで狙う韓国と日本の極右にとっては、今や真実も無意味となる状況まで来ている。 反人道的国家犯罪を否認する段階を越えて、今や言語テロまで動員しているというのに、私たちは黙って見過ごして許されるだろうか?

キム・ドンチュン聖公会大社会科学部教授

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/588199.html 韓国語原文入力:2013/05/20 19:16
訳J.S(1798字)

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