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トランプ大統領と金正恩委員長、面会と交渉の間【寄稿】

キム・ヨンチョル|元統一部長官・仁済大学教授
米国のトランプ大統領が24日(現地時間)、北朝鮮の金正恩国務委員長と並んで撮った写真を続けて公開し、朝米対話再開に向けたメッセージを改めて送った=トゥルース・ソーシャルより//ハンギョレ新聞社

 米国のトランプ大統領が、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長との「交渉の思い出」を持ち出した。歓迎する。泥沼にはまったイランとの交渉から関心をそらすため、あるいは、中間選挙前に外交的な成果が必要なため、さもなければ、韓国との通商交渉での新たなカードを作るため。どんな意図であっても構わない。膠着状態から悪化の構造へと変わりつつある段階において、いま必要なのは反転のきっかけだ。

 2019年2月のハノイ会談決裂から7年が経過した。北朝鮮の核能力は以前とは比較にならないほど向上し、朝中ロの3カ国関係が北東アジア地域の秩序の軸として登場し、第2次トランプ政権下の世界は予測不可能だ。長期的な膠着状態がもたらした不信の壁を前に、どこに交渉の入口を見いだすべきなのか、途方に暮れてしまう。膠着状態が長引いたため信頼はほとんどなく、ロシア・ウクライナ戦争などで交渉環境も不利であり、ほぼ消えてしまった対話の火種をよみがえらせるのは容易ではない。

 朝米対話を期待する人は少なくないが、残念ながら交渉は難しい。北朝鮮が非核化を拒否しているからではない。時間はかかるだろうが、関係が変われば交渉の目標と過程も変化していく可能性がある。交渉環境を整えるための米中協力が困難だからでもない。両国の地域秩序をめぐる戦略の違いは大きいが、安定についての共通の理解も存在する。交渉が難しい理由はそのようなことではない。

 決定的な理由は、トランプ政権の政策決定の構造だ。長期化し、不信感が強まった「解決困難な紛争」を解くためには、解決に向けた政治的意志も重要だが、長期的な交渉を調整・管理し、維持していく交渉の構造が必要だ。首脳レベルの政治的意志と実務レベルの技術的調整が何度も繰り返されてこそ、合意文を作成することができる。北朝鮮体制の特殊性から生じる実務交渉の限界を克服するためには、米国内部の交渉の構造が重要だ。

 トランプ政権内部の交渉は可能なのか。イランとの交渉やカナダとの貿易交渉をみるかぎり、米国政府内部には交渉を調整するシステムは存在しない。韓米合同演習の突然の中断のように、トランプ大統領の即興的かつ一方的で、日々変わり、頻繁に衝突し、予測できない「気分」があるだけだ。長期の交渉に必要な忍耐心がない。朝米対話を準備せよという大統領の指示で官僚たちは動くだろうが、意思疎通の構造は変わらないだろう。

 面会はどうだろうか。交渉は難しくても、面会は可能ではないだろうか。一時的とはいえ緊張緩和の効果もあり、交渉へと向かう道筋をつけることもできる。しかし、面会も双方の利害が一致してこそ可能になる。トランプ大統領は金正恩委員長との面会が選挙に役立つかどうかを考えるだろう。残念ながら、役には立たない。面会だけでは示せる成果はない。北朝鮮は魅力的な外交の対象でもない。中間選挙後の米国政治を予想できない状況のもとで、「北朝鮮カード」を切る政治的動機があるだろうか。

 北朝鮮はどうだろうか。分断国家ではなく正常な国家を目指し、中国やロシアとの関係を通じて外交的地位が高まったと判断している北朝鮮には、トランプ大統領との面会を拒む理由はない。ただし、北朝鮮も考慮すべき変数が生じた。トランプ大統領はしばしば、弱小国が武器とする崖っぷち戦術を用いる。北朝鮮は米国とイランの交渉を見て、トランプ大統領は望むものが得られなければいつでも正反対の強硬策に転じる可能性があることを目の当たりにした。北朝鮮は現在の「不安定な安定」と面会後の「予測不可能性」の間で計算するだろう。

 北朝鮮との交渉は、膠着状態が長引き、構造が変化し、不信感が強いだけに難しくなった。現実を認めてこそ、現実を克服することができる。北朝鮮の核の脅威は次第に北東アジアにおいて、変数から定数に変わりつつある。2026年下半期は、もしかしたら最後の逆転のチャンスなのかもしれない。非核化という過去の慣性にとらわれているときではない。非核化交渉の扉が閉ざされた状況のもとで、平和体制をめぐる交渉の扉を開くためには努力が必要であり、不安定な朝米対話を補完するための韓中両国の役割も変わっていかなければならない。

 植民地時代の独立運動も、分断後の統一運動も、可能だからおこなったのではない。困難であっても取り組まなければならない時代の課題がある。今は交渉が難しい。それどころか、トランプ大統領と金正恩委員長の面会でさえ容易とは思えない。韓国も対話の環境を整えるために動き、変化した状況を考慮して交渉の目標を調整し、効率的な交渉の構造を整備する努力を止めてはならない。過去の歴史を振り返れば、朝鮮半島の平和は、努力してこそある程度の現状維持が可能になった。すべての外交は国内から始まる。傍観者ではなく当事者になるためには、まず政府内部の混乱を収拾してほしい。

//ハンギョレ新聞社

キム・ヨンチョル|元統一部長官・仁済大学教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1275349.html韓国語原文入力:2026-08-30 18:34
訳M.S

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