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中東事態で韓国経済にちらつくスタグフレーションの影【コラム】

登録:2026-03-20 03:10 修正:2026-03-20 10:38
ノ・ヒョヌン|経済産業部長
17日のソウル市内のガソリンスタンドの様子/聯合ニュース

 人工知能(AI)企業の天文学的な投資需要と内乱事態の克服以降の民間消費の回復により、正常な成長の道に戻ると期待されていた韓国経済が、またも激動している。米国とイスラエルによるイラン空爆が引き起こしたホルムズ海峡の緊張が国際原油価格を一気に1バレル当たり100ドル以上に押し上げたことで、前年に比べて40%以上の原油高の環境がかなりの期間続く可能性が高まっている。

 今回の突発的な悪材料により、韓国経済はかなりの苦痛を強いられる可能性が高い。韓国は産業的に原油や天然ガスなどのエネルギーの過剰消費に頼った経済成長戦略を採用している。現代経済研究院の分析によると、2024年時点で韓国の経済規模は世界12位だが、原油消費量は7位に達し、国内総生産(GDP)に対する原油消費量も経済協力開発機構(OECD)加盟国中1位。さらに、そのエネルギーの全量を輸入に依存している。原油価格の急騰とサプライチェーンのまひによる衝撃が経済成長率、体感物価、経常収支などに直結し、相互に衝撃を倍増させるという構造的なぜい弱性を抱えているのだ。

 原油高騰とサプライチェーンの不確実性により為替市場でドル需要が高まる中、安全資産志向が強まり、ウォン安までもが韓国経済を襲っている。先日1ドル=1500ウォンを超え、2008年のグローバル金融危機以来17年ぶりのドル高を記録している。当局のウォン防衛により、当面は1500ウォン台付近で攻防が繰り広げられる可能性が高いが、これまでに比べて一段階上のドル高は輸入物価などに転嫁され、物価を上昇させる要因となるだろう。

 この危機に、スタグフレーションの恐怖が影のようにちらついている。原油高騰の長期化による製造業の生産コスト増大、グローバルな物流の減少、サプライチェーンの受けるショックなどによる景気の減速が物価上昇と同時に起こるという、最悪のシナリオだ。問題は、スタグフレーションに襲われると、政府が解決すべき懸案の難易度が急激に上がることだ。外生変数によって物価が上昇する中では、通貨当局が政策金利の引き上げという保守的な姿勢を取る可能性が高まるが、物価高騰を抑えるために引き締め政策を打ち出すと、経済のエンジンが冷えてしまう可能性がある。逆に財政などを投入する景気浮揚策は、物価上昇をさらに刺激してしまうというジレンマに陥る。

 さらに、今回の経済危機の最大の難点は、韓国政府による制御が難しい純粋な外生変数によるものであるということだ。米国のドナルド・トランプ大統領は当惑するほど一貫性を欠く態度で、事実上中東全域を戦争の危機に陥れている。そのせいで起きた世界経済への衝撃と莫大なコストには無関心で、「自分のエネルギーは自分たちが供給に責任を持つべきだ」として、韓国を含む主要7カ国に軍事支援まで要求している。事実上搾取に近い米国中心の一極主義で、厳しい対外環境に直面しているのだ。

 中東事態発生から約3週間にわたり、韓国政府が取りうる政策手段を順次迅速に用い、市場の安定化に成功しているのは幸いだ。米国・イスラエルとイランとの戦争初期に市場安定ファンドなどの100兆ウォン(約10.5兆円)規模の市場安定化資金を即時投入すると繰り返し語ることで、金融市場の発作的な不安を和らげた。その後、事実上死文化していた石油類最高価格制を29年ぶりに復活させ、国民の体感物価を直ちに安定させた。また、最大20兆ウォン(約2.1兆円)規模の追加予算の編成を急がせることで、ぜい弱階層に対する財政支援に乗り出したほか、需要管理には1991年の湾岸戦争以来35年ぶりの車両5部制の実施を公式化している。「金融市場の安定→物価不安の遮断→弱者支援と景気防衛→需要管理と財政支出の最小化」とつながる政策パッケージが、論理的な一貫性を保ちながら提示されているかたちだ。

 ただし前述のように、今回の原油高騰危機は、終わりが予測できないという難しさがある。米・イラン戦争勃発から3週で提示された政策プロトコルだけで安心するのは早い。企業や家計、政府などの経済主体はみな、シートベルトをしっかり締めて危機的状況に対処しなければならないだろう。官は治めるために存在するという。官僚たちは今こそ実力を立証すべきだ。政策当局はいつにも増してハンドルをしっかりと握らなければならない。

//ハンギョレ新聞社

ノ・ヒョヌン|経済産業部長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1249987.html韓国語原文入力:2026-03-18 18:47
訳D.K

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