ミン・ジュンギ特別検察官(特検)が29日、キム・ゴンヒ氏を拘束起訴した。夫の尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領が内乱首謀の容疑で拘束起訴されてから41日後のことだ。大統領夫妻がともに刑事罰のための裁判にかけられるのは、憲政史上初めての出来事だ。国家的な恥であり、国民の信頼を裏切った行為だ。
特検がキム氏に適用した容疑は大きく分けて三つある。どれ一つとして重くないものはない。キム氏は尹前大統領と2022年の大統領選期間中に、政治ブローカーのミョン・テギュン氏から58回にわたり世論調査結果の無償提供を受け、その年の国会議員補欠選挙で当時の与党「国民の力」のキム・ヨンソン前議員が公認されるよう影響力を行使した疑い(政治資金法違反)をかけられている。また、2009年~2012年に発生した「ドイツモーターズ株価操作」事件に共犯として関与した疑い(資本市場法違反)、2022年4月~8月に「コンジン法師」ことチョン・ソンベ氏を通じて、教団の懸案に関する請託とともに、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)側から高額なネックレスなどの供与を受けた疑い(特定犯罪加重処罰法上の斡旋収賄)がある。
すべての容疑は、まるでキム氏自身が大統領のように振る舞ったために起きたことだ。過去にも大統領が職を退いた後に捜査を受けたり起訴されたりしたことはあったが、尹錫悦・キム・ゴンヒ夫妻のように、在任中に大統領の権力を利用したという不正疑惑で起訴されたことはない。特にキム氏は、公職供与の見返りとして高価なブランド品を受け取るという旧時代的な不正にかかわっていた。世界10位圏の経済大国であり、民主主義の先進国と認められる国で、このような大統領夫婦を擁していたという事実に国民は恥を感じて怒っている。
にもかかわらず、キム氏は特検による起訴について、「最も暗い夜に月の光が明るく輝くように、真実と心を見つめながらこの時間に耐える」「私に与えられた道を無視せず、黙々と裁判に臨む」という荒唐無稽な言葉を口にした。痛切な反省とともに許しを請うても足りないくらいの状況で、国民の怒りをあおるばかりだ。いまだに熱烈な支持者を刺激することで政治的危機から逃れられるという錯覚に陥っているようだ。
尹前大統領夫妻の没落は検察の責任も大きい。検察が事前に適切に捜査していれば、キム氏の大統領のような振る舞いによって政権が崩壊する状況まで追い込まれることはなかっただろう。「尹錫悦師団」と呼ばれる政治検察官たちは、検察総長出身の大統領の権力維持のために検察権を悪用した。法治主義を守るよう国民が検察に与えた権力を乱用し、検察政権の没落を自ら招いた。検察は尹前大統領が罷免された後、あわてて捜査の手綱を締めたが、時すでに遅しだ。尹前大統領夫妻に対する司法的断罪とあわせ、検察も解体レベルの改革を断行しなければならない。