尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領が、21日に開かれた12・3内乱事件の刑事裁判で「戒厳令は刃物と同じだ。刃物があればこそ料理したり、病気の患者を手術したり、殺人のような罪も犯すことができる」と述べ、戒厳を刃物に例えた。非常戒厳当時に「誰もけがをしたり流血事態が起こったりもしていなかったので、内乱ではなかった」と主張し、このようなたとえを用いたのだ。奇怪で想像を絶する妄言と詭弁がますます多くなっている。
尹前大統領は先日の第2回公判で、「刃物を使ったからといって即殺人ではない」として、戒厳と内乱は違うと主張した。前大統領の品位がまったく感じられない詭弁だ。尹前大統領の弁護人は、証人として出廷した首都防衛司令部のチョ・ソンヒョン第1警備団長(大佐)の陳述を揺さぶろうとしたが、逆に恥をさらした。「国会議員を引きずり出せという指示は、そもそも不可能な作戦ではないのか」と問うと、チョ団長が「(尹前大統領は)よくご存じのはずなのに、そのような指示をなぜ出したのか分からない」と対面での反論を受けた。尹前大統領が下したわけでもない命令を指揮官が間違って解釈したことにしようとして繰り広げられたことだ。内乱の責任を部下に無理に押し付けようとしたが、逆に軍の統帥権者の資格がないことを自ら立証する結果となった。
チョ団長は「イ・ジヌ前首都防衛司令官から国会議員を引きずり出せという指示を受けた」と一貫して陳述してきた。これが、憲法裁判官がチョ団長を唯一証人として職権申請した理由だ。それでも弁護団は、チョ団長の検察の調査、憲法裁判所での弁論、前回の公判期日での証言がそれぞれ食い違っていると主張した。よほどのことでなければ、尹前大統領の拘束取消決定を出して釈放させたチ・グィヨン裁判官が、「同じ質問が繰り返されている」と注意することはなかっただろう。「命令は重要だが、正当かつ合法でなければならない」と語ったチョ団長と、「上官の命令に部下が服従するのは『国家と国民を守る任務』に限定される」と述べた特殊戦司令部のキム・ヒョンギ第1特戦大隊長の陳述こそ、軍の統帥権者が言うべき言葉ではないのか。
裁判所と検察の保護のもと、在宅状態で裁判を受けている尹前大統領は、憲法裁判所の罷免決定にもかかわらず、政治活動を続けている。一部で進められている「尹錫悦新党」の創党作業を支援し、これみよがしにキム・ゲリ弁護士らと食事をして撮影した写真を公開するなど、少しも内乱罪の被告人にふさわしくない態度だ。軍人権センターはこの日、10万人ほどの市民が署名した尹前大統領の再拘束を求める嘆願書を裁判所に提出した。チ・グィヨン裁判部には、結者解之(問題や困難を引き起こした人にその問題を解決する責任があるという意味)の次元で尹前大統領の再拘束を真剣に検討するよう求める。